目が合ったら考えてあげる
この人は、いつもいつだって顔色が悪い。
箸を持っただけで指が折れそうだし、一度寝たらもう一生目を覚まさない気さえする。
…まあ、そんなことはないんだけど。
なんなら、今朝目が覚めてからずっとスマホとゲームコントローラーの往復を繰り返している。その横で目が覚めてから掃除洗濯、今はお昼ご飯の準備をしている私。掃除と言ったがするところがほぼない。大体いつもスッキリしている。この人の部屋が綺麗なのは、休日はコンビニ以外でここから動かないからだそうだ。嫌味を言ったらドヤ顔でそう言われた。
もうそろそろご飯が作り終わる。キッチンからチラッと様子を伺うと、
「いやぁ、いいよね。このキャラ、守りてぇーみたいな感じが。」と、至極どうでもいい感想が聞こえた。視線はずっとゲーム。目線は交わらない。だから私も視線をそらす。そして、少し大きな声で、
「ねえー、ご飯。食べない?まだゲームやってる?」怒らないよ、怒らない。
「あぁ、うん。食べる食べる。よいしょー。」
全く呑気で驚いてしまう。前言撤回、怒らないのも考えものかもしれない。
ただ怒れないのは、大きな窓の光を浴びた髪の先が綺麗だから。そこに座ってるだけで、眩しいほど美しい。のそのそ歩いて、テーブルの上のお昼ご飯を見る。
「おぉ〜今日も美味しそうですね〜。えっ、待って!俺、この草嫌いだよ!?」
そう言って目を見開いてこっちを見る。
やっと目が合った。
「知りませーん。嫌いなら食べなくていいでーす。」今度は私が目を合わせない。口を尖らせて、目を瞑る。「えっ、嫌だ!それは話が違うと思うんだけど!えっ、えー!嫌だよ!」わがままだなあ、本当に。
でも、この目を開けた時、視線が合ったら考えてあげてもいいかな。