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何気ない日常・・・とある休日①(リライト版)

佐知子は、ベッドの中で大きく伸びをし、ベッドサイドの時計をちらりと見ると午前11時45分。カーテンの隙間から差し込む真っすぐな光が、ストーンの飾り物に反射し、天井に不思議な模様を描いている。その光景をぼんやり眺めながら、名残惜しげに身体を起こした。

まだぼんやりとした頭で、コーヒーテーブルに置かれたスマホを手に取り、LINEをチェックする。孝四郎からのメッセージが11時に届いていた。関西弁のスタンプ付きで「おはようー。お昼です。起きてますか?」と。

その可愛さに、思わずクスっと笑いながら「おはようー、ちゃんと起きてますよ」と返信する。孝四郎は実直で真面目な風貌そのままに、仕事もプライベートも自分のペースを大切にしている。それでも、彼との関係に窮屈さを感じたことは一度もない。彼の大人の余裕が、佐知子のお転婆な部分を受け入れてくれているのだ。

彼の会話には、ふいにお茶目なフレーズが挟まれることがある。
ある日、佐知子の好きなアニメキャラクターの口真似をして「佐知子ちゃん、今日も可愛いですね、ムッフン」とわざとおどけた声で言う。
不意を突かれて、お酒を噴き出した彼女は、「もう、そんな急に言ったら噴き出すじゃない!」と少し怒ったような顔をして返す。
すると、孝四郎は「ヘッヘっ」といたずら坊主のような笑みを浮かべていた。その無邪気さが佐知子には愛らしく思えるが、彼にそのことを伝えるのはためらう。彼が意識して愛すべき癖を抑えてしまうのは惜しいからだ。

一方、佐知子は、会社ではしっかり者と評価されているが、プライベートではおっちょこちょいな一面も隠し持っている。先日は、急いで家を出た際につまずいて転びそうになり、思わず大声で「わっ!」と叫んでしまった。それを見た近所のおばあさんが心配して声をかけてくれたのだが、恥ずかしさのあまりそのまま逃げ出したこともある。そんな彼女の人生の歩き方は、まるで誰かが手綱を握っていなければ、どこに飛んでいくのかわからないような不安定さを持っている。

それでも、孝四郎は、上手に「じゃじゃ馬ならし」が上手い。それは、彼女の自由な性格を受け入れつつ、自分の生き方の姿勢崩さないからだ。そんな彼を彼女は尊敬していた。そのため、孝四郎のアドバイスは素直に聞くことができる。一方、佐知子の鋭い感性は、彼にとって新鮮な刺激となっている。お互いに無いものを持っていることが、彼らの関係をより特別なものにしているのだ。

再び孝四郎からのメッセージが届く。「午後2時過ぎに用事が済むから、3時にいつものところで待ち合わせ。宜しく」とお誘いLINE。佐知子は心の中に少しの期待を抱きながら「了解」と短く返信し、ベッドから降りてシャワーに向かった。いつもの店に3時前に到着するには、まだ2時間弱の余裕がある。

「何気ない日常・・・②リライト版」へ続く(2024/11/01リリース予定)

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