【新作小説】『月は、ずっと見守っていた』Prologue~第1章
Prologue 「月夜の記憶探し」今宵は月夜、スーパームーンが冷えた光を放ち、まるでこの地上のあらゆるモノの熱を鎮めるかのように煌々と輝いている。
七海(ななみ)は、その神秘的な光を背に受けながら、時々何かを確認するように振り返り、ある場所へと向かっていた。
彼女は、50代後半。現在は離婚紛争の渦中にあり、一人暮らしの生活を送っている。
夫のDVによって心が壊れ、彼女は一過性の記憶喪失になってしまった。その時、嗜好や行動パターンも全て分からなくなった。好きな味も人との関わ