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【sake✕中華研究会 第3回】日本酒に合う中華料理を探せ! その1

久しぶりの開催。今回は今までとは方向性を変えて、中華料理の方から日本酒に近づけようというアプローチ。題して「日本酒に合う中華料理を探せ!」


中華料理の種類はたくさんある!

中華料理と一言で言っても、たくさんの種類があります。日本では「中国四大料理」として上海料理、広東料理、北京料理、四川料理が挙げられますが、中国本土では「八大菜系」と言って8つが有名です。

  • 鲁菜(山東料理)

  • 川菜(四川料理)

  • 粤菜(広東料理)

  • 江苏菜(江蘇料理)

  • 闽菜(福建料理)

  • 浙江菜(浙江料理)

  • 湘菜(湖南料理)

  • 徽菜(安徽料理)

今回のよだれ鶏。よだれ鶏は川菜(四川料理)です。


とにかく、料理の種類が多いのです。
味のバリエーションも幅広く、北の方は肉と野菜、醤油ベースの濃いめの味が多いのに対し、南の方はシーフードを使って比較的淡白な味が多い印象。四川は辛いし、広東料理は甘め。このようにたくさんの料理があるので、日本酒によく合う料理もあれば、そうでもない料理もあるわけです。

では、どの料理が日本酒によく合うか?というのを考えてみました。
いつもこの研究会でやっている、中華料理に合う日本酒は?ではなく、日本酒に合う中華は?という逆方向からのアプローチです。
しかし、料理の方からアプローチするには、やはりちゃんとしたシェフの力を借りなければなりません。ということで、

中国からシェフを呼んできた!

右が筆者の古くからの友人、シェフのヤオさん。一緒に中華街に買い出しに行きました。

西安出身の姚(ヤオ)さんです。本業は日本料理ですが、中国人ですので中華も作れます。日本人に合う中華料理を作ってもらうには最適!
ということで、彼に料理を作ってもらいました。

今回のメニュー

  • 中華漬物(中式泡菜)

  • よだれ鶏(口水鸡)

  • 酔っぱらいエビ(醉虾)

  • れんこん甘酢漬(凉拌藕片)

  • ルーロウ煮込み各種(卤味什锦)=豚バラ肉(角煮)、豚足、鶏&豚のもつ、押し豆腐、揚げ豆腐

  • 発酵白菜と豚肉のスープ煮込(酸菜汆白肉)

  • あさり酒蒸しねぎ油ソース(葱油花蛤)

  • レタスのオイスターソース炒め(蚝油生菜)

  • 豚肉甘みそ炒め湯葉包み(京酱肉丝)

  • 鶏肉のカシューナッツ炒め(腰果鸡丁) 

  • 西安風ショウロンポウ(灌汤包)

日本で料理を作るのは初めて!のヤオさん。中国とは勝手が違うので苦労してました。

今回のお酒

今回は、主に参加者の皆さんの持ち寄りのお酒です。(他にも数本ありましたが省略します)

  • 千歳鶴 雪原の舞 大吟醸

  • 千歳鶴 丹頂鶴 純米

  • 出雲富士 特別純米 佐香錦

  • 悦凱陣 手造り純米酒

  • 初孫 魔斬 生もと純米本辛口

  • 大七 不倒翁 生もと純米古酒

  • Domaine Chant des Loups「La main de Papé」2023 (赤ワイン)

今回、赤ワインが飛び入りしています。実はこれが結構よい発見につながりました!

今回試飲した日本酒とワイン。メンバーもちよりで!

研究結果

やはり日本酒が得意な料理と、そうではない料理がありました。
まずは日本酒とよく合った組み合わせからいきましょう。

1)醤油と砂糖のあまから味は日本酒によく合う!(ルーロウ系)

これは参加者のみなさん全員のご意見!ルーロウ系の味には日本酒がよく合いました。ルーロウ(卤肉)は日本でもおなじみルーロウ飯の、具の部分。
メインの豚バラ肉(角煮)以外にも、豚足、鶏レバー、豚センマイ(胃)、厚揚げ豆腐、押し豆腐(豆腐干)も煮込んでみました。

ルーロウの試作。豚バラ肉=角煮。八角の香りが効いているのが日本の角煮と違います
鶏レバーと豚センマイのルーロウ
厚揚げ豆腐のルーロウ風煮込み


純米酒にはどれもよく合いましたが、ルーロウ料理とのベストマッチは、

◯ 大七 不倒翁 生もと純米古酒(福島/大七酒造)の 燗酒!
 
でした。

ルーロウは醤油味、甘さと旨味、そして特有の八角の香り。
古酒のぬる燗も、古酒に特有の醤油の風味に、甘さとまろやかな酸味、旨味。少しかつおぶしやカカオのような香ばしさもありました。
料理とお酒に共通の、醤油、旨味、甘みが融合して、すばらしい組み合わせ。お酒の酸味がルーロウの脂っぽさを切ってくれる感じもあります。古酒はぬる燗することで甘みが強調され、ボリュームアップしたので、ルーロウのように濃い目の料理にも負けないパワーを発揮。しかも、お酒の温度がルーロウの温度に近くなり、口の中で料理とお酒がシームレスにつながっていくのが面白いように感じられました!
醤油、甘み、旨味の3点セットの同調に加えて温度の調和。これはかなり良い組み合わせでした!

ぬる燗したら古酒の実力発揮!の大七不倒翁。
10年古酒。10年にしては上品な味わいです。

ルーロウの各種に関しては、豚足が一番人気!よく煮込んだので豚足の脂が抜け落ち、コラーゲンだけ残っていて全然脂っぽくなく、肉の旨味が楽しめました。
不人気は押し豆腐でした。押し豆腐(豆腐干)は硬く固めた豆腐ですが、硬い食感があまり良くなかったようです。厚揚げ豆腐は味が染みていて美味しかったですが、押し豆腐の方は味もあまり染みていませんでした。残念。

硬いと不人気だった押し豆腐(豆腐干)


2)やはり生のシーフードは日本酒! 酔っ払いエビと純米酒

酔っぱらいエビ。赤えびを生のまま紹興酒漬けに

思った通りの結果です。
酔っぱらいエビは赤えびを加熱せずに紹興酒メインのたれに漬けたもの。赤えびは冷凍で、多くのスーパーで売られているもの。ボイルするレシピもありますが、日本酒との組み合わせを考えて、あえて生で。生だと多少の生臭さが出てきますが、日本酒がそれを消してくれます。さらに、エビのほのかな甘味を日本酒の甘みが引き立たせてくれるので、エビが更に甘く感じます!
ベストマッチは
◯ 出雲富士 特別純米 佐香錦 (島根/富士酒造)
◯ 悦凱陣 手造り純米酒 (香川/丸尾本店)

の2つでした。個人的には、特に出雲富士が良かった!

爽やかなバナナ香と、甘みと酸味がよく感じられる純米酒
佐香錦というのは島根県オリジナルの酒米。味に幅が出るとのこと。

出雲富士は濃い目の純米酒でした。バニラ、青バナナの香り、時間が経ってくるとカスタードのような甘いクリーム系の香りもします。味わいは厚め、甘みと酸が目立ちます。
この甘みと酸がエビの甘みを引き立たせてくれました。

もうひとつ、酔っぱらいエビとよく合った、悦凱陣 手造り純米酒

少量生産の悦凱陣。友人がわざわざ香川で買ってきてくれました。
ラベルに醸造データがたくさん書いてあるのが悦凱陣風。

悦凱陣はなかなか希少価値のあるお酒。一昔前に「美味しんぼ」で紹介されて話題になったそう。いまでも小規模で古式な造りを続けていると聞きます。
こちらも純米酒らしいバニラ、クリームの香り。パイ生地や蒸米のような香り、カシューナッツ、カラメルのような枯れた香りもします。
味わいは非常にまろやか、酸は控えめ、全体にはやや辛口。辛口ではありますが、料理をやさしく包み込むような、まろやかな甘みと酸味が、生のシーフードの甘みを引き立て、生臭さを消します。

あさり酒蒸しねぎ油ソース(葱油花蛤)にも、この2つの酒はよく合いました。これも醤油味+日本酒という、今回のルーロウと同じ原理。
あさり酒蒸しがかなりしょっぱかったので、甘みがやや控えめの悦凱陣の方がよく合った印象でした。

中国で、あさりではなくもっと小さな貝で作ったものを食べました。
それと日本酒が良かったので、今回あさりでチャレンジ。

(その2へつづく)


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