「日本酒と女性」というテーマと、私自身の女性観について【アンケート実施中】
2年ほど前から企画・編集に携わっている日本酒専門メディア「SAKE Street」にて、「日本酒と女性」という特集をおこないます。
現在、1本目の記事のためにアンケートを実施中です。対象は酒蔵で働いている(働いたことがある)女性。心あたりの方はぜひ回答やシェアなどをしていただけるとうれしいです。
〆切:6/20(木)中
※以下、本記事に書くことは、SAKE Streetとは関係なく、木村個人の意見です。
なぜ、日本酒と女性はネタになるのか
「日本酒と女性」というテーマはしばしばフィーチャーされます。
大きな理由は、かつて酒蔵が女人禁制だったこと。これは、戦後に次第に解消されていったとされています。
現在、日本には1500ほどの酒蔵がありますが、その中で女性が杜氏(製造責任者)を務める蔵は100軒にも満たないと考えられます(正確なデータは発表されておらず、蔵女というコミュニティが「50軒もない」と言っていた2020年よりは増えているのではないか、という概算です)。
そのため、女性杜氏をはじめ、酒造りをする女性はまだまだ珍しいと見られることが多く、マスメディアなどでもしばしば取り上げられます。
なお、注目を集めるのは酒造りの現場の女性に限りません。
日本酒に関わる女性は「日本酒女子」とカテゴライズされがちですし、お酒に強い(肝臓のキャパシティ的な意味で)男性が飲むものというイメージから、あえて「女性でも飲める日本酒」といったマーケティングがされることは少なくありません。
使い古されたネタを繰り返したいわけではない
さて、もちろん今回の特集では、そんな散々語り尽くされたことをあえて書こうとしているわけではありません。
すでにいただいたアンケートの回答にも見られたのですが、酒蔵で働く女性が珍しい存在として扱われること、女性らしい酒造りを求められること、女性は日本酒が苦手だと思われることにすでに多くの人が飽き飽きしているはずです。
だっていま、2024年ですよ。21世紀になって、もうすぐ四半世紀が経とうとしている。もはや、性別って男と女のふたつでさえない時代じゃないですか。
一方で、日本酒業界にはまだ前時代的な男女差が存在することも事実です。
今回の特集は、企画者兼執筆者である私としては、このいびつさを解消することを目指しています。
”中途半端な女性”として自分ができること
ところで、あまりおおっぴらに言うことがないのですが、私の性別は女性です。
ですが、わたしは20代前半に社会人になり独立してから、「自分の性別は別になんでもいい」と思いながら仕事をしてきました。
私は女性の中でも、女性としてのネガティブな経験をほとんどしてこなかった人間だと自覚しています。「男の子に負ける」という経験をしたことがほぼありません。自分が女であることを嫌だと思った経験は生理くらいです。
でも、それは自分がラッキーだったからなんだろうな、ということも理解しています。そして、女性であることで発生する社会的有利性に甘えないようにしよう、とも考えています。「女であることで下駄を履かせてもらわない」という意味です。
現在、日本酒やSAKE(日本酒をリスペクトして造られた世界の飲み物)を専門としたジャーナリストとして活動していますが、情報を発信するときに心がけているのは、「50代の男性が書いたとしてもおもしろいと思ってもらえる記事を書こう」ということです。
(ただ、それは私個人が気をつけようとしていることなので、ほかの方からお仕事相手として選ばれるときに、「女性だから」というフィルターがかかる可能性はないとはいえません)
逆に言えば、私は女性っぽい仕事や発信を避けてきた、ともいえます。まさに、「日本酒と女性」って嫌だなー、と思ってきた当事者なのです。
でも最近、中立的な立場にいるからこそ、そうではない女性に対してできることもあるのではないか、と考えるようになりました。
まさに今回の特集は、女性として中途半端な自分だからこそできる発信への挑戦でもあります。
しんどい人が少しでも呼吸しやすくなるように
そんなわけで、特集中では言及しそうにもなかったことを、個人的に決意表明してみました。
1回目のアンケートは製造現場についてですが、2回目以降はそれ以外の女性にもお話を聞かせていただければと思っております。
日本酒にとって女性がめずらしいものではなくなる未来のために、日本酒を好きな女性が違和感を覚えなくて済む社会を実現するために、みなさんの力を貸していただけるとうれしいです。