ポル君3
ポル君の誕生日
11月11日はポル君の誕生日だ。毎年、たくさんの友達を呼んで、ものすごく盛大に行われる。お父さんがマンションの集会場を借りて、お母さんが近所のおばさんたちといっしょに、いろんな料理を作って大パーティーをするのだ。クリスマスみたいなイルミネーションで飾って、友達といっしょにご馳走食べまくって、あそんで、本当に天国みたいな一日なのだ。
ポル君の大好きなバーベキューも、もちろん*①コジードだってある。パステル・デ・バカリャウにクロケット、えびのリソルにシャムッサ、フライドポテトだってお皿にてんこ盛りでエベレスト級だ。お菓子もケーキも食べ放題。忘れちゃならないのが焼き栗。これがなきゃはじまらない!
お母さんに
「冷めるまで待ちなさい!」
って言われてるのに、焼きたてに手を出してしまう。何度もやけどしたけど、やめられない。そのくらい大好物なのだ。なぜかって、ポル君はサン・マルティーニョの日に生まれたのだから。
サン・マルティーニョの日は、栗を食べる日だ。みんな栗を食べて、大人は*②アグア・ぺやアバファード、ジュルピーガを飲んで酔っ払う酒飲みの日なのだ。そう、お父さんが教えてくれた。ポル君はまだお酒が飲めないから、酔っ払いにはならないけれど、大好きなスモールでいっしょに盛り上がるのだ。普段はお母さんに一日一本って制限されてるけど、この日ばかりは*③スモールを飲み放題なのだ。
酔っ払いと言えば、例のカフェのおじさんたちも、お祝いに駆けつけてくれる。でもそのおじさんたちに混じって、知らないおじさんたちもやってくる。お父さんに、
「あのおじさん、だれ?」
って聞いても、
「さあ、だれかの友達だろ。」
って… お父さんも知らないおじさんたちがたくさんポル君の誕生日に参加している。ひとつはっきりしていることは
『知ってるおじさんたちはポル君にプレゼントを持ってきてくれるが、
知らないおじさんたちはくれない』
と言うことだ。ポル君は思った。
「あのおじさんたち、きっと、ただお酒飲みに来てるんだ。 僕の誕生日なのに・・・」
ちょっと変な感じがするが、ポル君はさらに思った。
「でもいっぱい人が来て、楽しいんだから、それで、いいんじゃない?」
11歳にして悟るポルくんであった。
続く・・・
*①
コジード(Cozido à portuguesa)
=ポルトガル風ポトフ、いろんな肉、腸詰がこれでもか!と言うくらい入っている。
パステル・デ・バカリャウ(Pastel de bacalhau)
=干し鱈のコロッケ。
クロケット(Croquete)
=棒状のメンチかつ。
リソル(Risol)
=クリームグラタンたコロッケのようなもの、普通えびが入っている。
シャムッサ(Xamuça)
=サモサ、三角のカレー春巻き。
*②
アグア・ぺ(Água pé)
=葡萄の搾りかすに水を加え発酵させた軽いワイン。
アバファード(Abafado)
=焼酎を加えワインの発酵を途中で止めたアルコール強化ワイン。
ジュルピーガ(Jeropiga)
=アバファード同様アルコール強化アグア・ペ。
*③
スモール(Sumol)
=ポルトガルで一番売れている清涼飲料水。Sumo(果汁)の造語。
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