#072.楽しむことファースト。
プロセスこそが人生だ。
10年前に会社を辞めた。
当時、契約社員だった私は、正社員への登用試験を受けマネージメントの道に進むか、作り手としてフリーランスになるかの岐路に立たされていた。
妻のお腹の中には3人目がいた。
「普通」なら正社員を選ぶだろう。しかし私は選べなかった。まあ、単純に登用試験に落ちただけという見方もあるが(笑)。
落ちた時はショックで、絶望して心を病んだりもしたが、今なら理由がわかる。「正社員になりたくない」が、無意識のホンネだったのだ。
登用試験を受けた理由は、経済的な安定。3人の子どもを育てなきゃいけないんだから、当然といえば当然。でも、本当は作り手として会社に属していたかったのだ。しかし、そういう気持ちは見透かされるもので、案の定試験に受かることはなかった。
誰かが掲げた目標に向かって結果を追いかける。ほとんどの会社や組織はそんなロジックで動いている。私の会社もそうだった。
その目標に自分の夢や希望をのっけられたらまだよかったのだろうけれど、自分自身じゃないことを強いているうちに、いつの間にか行先を見失ってしまった。
だから、自分の深い部分がそっちじゃないよと教えてくれたんだと思う。
会社に残る選択肢もあったが、辞めることにした。中途半端な気持ちで社員を続けるモチベーションは残っていなかった。
しかし、辞める前は本当にやって行けるのか心配でならなかった。両親に頭をさげ、同居させてもらった時期もある。
フリーランスという選択は想定していた道ではなかったし、迷いや不安もたくさんあったが、この道を進んでよかったのだと今は思う。私は「作ることが好き」だったから。
この10年、ガムシャラに頑張った。好不調の波にもまれながらも、なんとか乗り越えることができた。作り手としての自分には及第点をあげたい。
いまでも、コンセプトに辿りついた時は快感だし、インタビューで相手の深部にアクセスできた時は嬉しいし、グッとくるコピーやデザインが生まれた時は誇らしい。それは今でも変わっていないし、たぶんこれからも変わらない。
しかしながら、いつの間にか仕事の目標が「売上」や「効率」に向いてしまったところがあり、作る楽しみにフォーカスする機会が減ってしまった気がする。
それゆえに、数年前からの大きな流れがやってきて、次のステップへ一歩を踏み出すことを求められているのだと思う。もちろん、時代の流れや価値観の変化に伴うことも大きいのだけれど。
フリーランスになる決断をした時のように、自分の「好き」や「喜び」につながる道へ。今一度、自分の内側を見つめなおし、心の声に耳を澄まして進んでいきたい。
結果ばかりを追わずプロセスも楽しむ。
楽しいときはじっくりそれを味わって。
苦しい時は休んで、心の声に向き合って。
小さな願いから少しずつ叶える。
大きな夢をスモールステップで進む。
時には寄り道や小休止もいい。
自分の好きを灯に掲げれば、
導きの星はきっと頭上に輝く。
人生という旅を楽しんでいこう。
ほな、また。