早朝の山に神々を見た話。 奈良県野迫川村【雲海の旅】-その③-
その②の続き
目覚ましは朝4時。
ここは野迫川村の「雲海の里の宿」。
昨日の夜の宴の余韻を引きずりつつ、
薄暗い山道を進む。
2019年に初めて取材に訪れて以来、
ずっと見たかった景色にようやく出会える。
数台停めれるほどの広い路肩に車を停め、
数十メートルほど歩く。
木々の間、パッと開けた場所から
目の前に広がる景色に目を奪われ、
写真を撮るのも忘れて見入っていた。
鮮やかな空の赤が美しい。
雲間から朝日も見えるだろうか。
写真を撮り、動画をまわしながら
しばしこの世界に浸る。
モニターのあかりに誘われて
羽虫が寄ってきたが、
相手にせずに撮り続けた。
30分ほど粘ったが、
雲の具合で日の出の瞬間は
撮影できなさそう。
次のポイントへ向かう。
続いて訪れたのは高野辻休憩所は
高台から見下ろすスポットだ。
今日の雲海のボリュームは少なめだが、
逆にそれが水墨画のような
幽玄な景色を描き出している。
日も少しずつ高くのぼってきたので
最後に立里荒神社(たてりこうじんしゃ)の
ビュースポットへ。
雲の上に日が昇り、
雲海を金色に輝かせている。
朝の風がそっと頬をなで、
ざわざわと木の葉を揺らす。
山鳥たちの鳴き声は、
目覚めに感謝するように
歓喜の音を森に響かせている。
神社の参道という
ロケーションも相まって、
神々しいという言葉が
これほどしっくりくる風景もない。
シャッターを切るのを忘れ
景色に見入る間に、
心の中に訪れたしばしの静寂。
いにしえの人たちが山に入り、
神々に出会ったということが
ほんの少しわかった気がした。
清々しい気分で朝の山道を戻り、
宿で美味しい朝食を頂いた。
そして、旅立ちのとき。
かあこさんに再訪を約束し、
次の目的地・十津川村へと向かう。
野迫川村では、年中雲海が見られるが、
6月上旬~7月上旬、9月下旬~11月下旬が
特に雲海が発生しやすいとのこと。
山々の神聖な空気と神々しい雲海、
そしてかあこさんに元気をもらいに
また野迫川村を訪れたいと思う。
了