日本一わかりやすい日本酒入門⑤ 令和のトレンド
概要
日本酒には様々な種類がありますね。
時代背景や社会情勢によって日本酒も変化してきました。
戦中戦後の時期は日本酒の原料の米は貴重品でした。
その為、色々な混ぜ物で増量して生産していました。
当然に味は劣化して日本酒暗黒時代を迎えます。
日本酒の消費量は年々落ち、廃業する蔵が増えます。
そして各酒造は生き残りを掛けて酒質向上を図ります。
その結果様々な日本酒が生まれ細分化していきました。
時にはブームのような現象を生み浸透していきます。
日本酒トレンドの変遷
有名なのは辛口ブーム。
スッキリ辛口で飲みやすい。ここから「辛口は旨い」と言われるようになりました。
そして吟醸ブーム。
香り高くフルーティーで飲みやすい。ここから「フルーティーな日本酒が良い酒」と思われていきます。
その後「獺祭」をはじめとする純米大吟醸ブーム。
日本酒の最高級は「純米大吟醸」となっていきます。
純米大吟醸は「特定名称」という日本酒のカテゴリーでは最高ランクに位置します。
注 最高ランク=最高に旨い ではなく材料費がかかる高価な酒。
日本酒トレンドの流れとしては
本醸造、純米ブーム→吟醸、純米吟醸ブーム→大吟醸、純米大吟醸ブーム
ざっくりとですが上図の頂点まで行ってしまい、この後どうする?
という感じになりました。細かい解説はこちら
そこで各蔵で様々なチャレンジが起きます。
新酒や春酒、夏酒、ひやおろしなどの季節限定酒。
米にこだわる。山田錦、雄町などは有名ですが美山錦や彗星など地元特有の品種開発など。
製法にこだわる。無濾過生原酒、生酛、山廃、あらばしり、つるししぼり、木桶仕込み、ワイン酵母などなど。
精米歩合にこだわる。獺祭二割三分、スーパー9、あえて低精米90%
蔵同士のコラボ。アニメや著名人とのコラボ。
ラベルやネーミングの工夫。
素晴らしい創意工夫の数々またアイデアやセンスで楽しませていただいております。
半面、色々とありすぎて複雑になってしまったのも事実です。
あえて言えば細分化ブームという感じでしょうか。
頂点まで行ってしまい細分化されていった日本酒トレンド
令和のこれからはどうなるのでしょうか?
令和の日本酒トレンド
ここからは私の勝手な憶測です。違うよという方は是非ご意見賜ればありがたいです。勉強させてください。
今後の日本酒トレンドは「エイジング」です。つまり熟成酒。
結論からいえば「熟成酒の燗」です。
すでに各蔵から〇〇年物という熟成酒が発売されています。
これは究極の原点回帰なのです。
日本酒は元々は寝かせるものです。
しぼりたての新酒は完成品ではなく寝かせて熟成が入って完成品になっていました。(現在では新酒の時点で完成品になる仕込み方をする酒もある)
そして仕込み方によっては何年も寝かせることで完成する、またはその過程を楽しむ日本酒が注目され始めました。
日本酒は鮮度が大事。何日も置いたら劣化する。
という感覚の方もいると思います。
最近の日本酒はそういうタイプの日本酒が多いのも事実です。
しかし、何年も寝かせて旨くなる。開けてから何日たっても大丈夫、さらに旨くなるという日本酒があるのも事実です。
温めて真価を発揮する熟成酒
このような熟成タイプの日本酒は燗にすると真価を発揮します。
「古酒を飲んだけど美味しくなかった」
「クセのある日本酒は苦手」
というイメージの方にこそぜひ騙されたと思ってチャレンジしてほしいです。
熟成酒を燗ですすめる理由は単純です。
「美味しくなるからです!!!」
冷酒メインで燗はほとんど飲まないという方は、おそらく熟成酒を冷酒で飲まれたと思います。
これはジャガイモを生でかじって「不味い」と言っているようなもの。
ジャガイモはポテトフライや肉じゃがなど加熱すると抜群に美味しいですよね。
熟成酒もジャガイモと同じなのです。
ポテトフライや肉じゃがの美味しさを知らないなんてもったいないです。
詳しくはこちら
熟成酒を飲んでみよう
色々と面倒くさい説明をしておりますが、実際に飲んで体験してもらうのが一番わかりやすいです。
参考までにオススメの銘柄をいくつか紹介します。
鳳凰美田 生酛 燗専用
フルーティーで飲みやすいタイプが有名な蔵ですが、こちらは燗専用。
燗にすると旨味が増しまろやかな口当たりになります。冷やしても美味しいですので飲み比べると楽しいです。置いてある店はほとんどないかもしれません。
菊姫 山廃 純米
ラベルにも「じっくり熟成させて、旨みをのせています。」と書いてあります。
何年熟成とは書いてありませんが通常から熟成させて出荷している蔵です。
つまり特別に熟成酒を造ったわけではなく、熟成酒が通常品なのです。
今回の中では一番手に入りやすいと思います。コクがあり旨味たっぷり。
不動 本醸造 2001年
なんと23年物。うちにある日本酒で一番古い酒。
ウイスキーのような色をしていますが樽で寝かせたわけではなくエイジングの色です。飲んでみると23年というほど熟成は入っていません。
冷蔵で丁寧にエイジングしたのでしょう。燗にするとキレが増し心地よい。
玉川 山廃 無濾過生原酒
生酒なのにあえて常温放置して燗にするというマニアックな酒。
(個人的な感想です)
旨味コクまろやかさキレと調和のとれたすごい酒。
ぬる燗、熱燗、上燗と温度が高くなっても楽しめる。
味といい雄町ときて山廃なんて。。。さぞや頑固なこだわり爺さんが造っているのかと思いきや。。。イギリス人の杜氏ハーパーさんが造っています。
この酒大好きでハーパーさんが何で杜氏になったかの話も好きなので機会があったら紹介しますね。
まだまだ紹介したい熟成酒がたくさんあるのですがこの辺にしておきます。
上記以外にも美味しい熟成酒はたくさんあります。
なにかの機会にチャレンジしていただけたら嬉しいかぎりです。
熟成酒は無限
本稿の前段で日本酒のトレンドは頂点を極めてしまって行きついてしまった。と述べましたが熟成酒には無限の可能性があります。
様々な製法で細分化していき複雑になっていった日本酒。
そこにビンテージが掛け算となるのです。
例えば「○○純米」という銘柄があります。
そこに「○○純米吟醸」「○○純米 無濾過生原酒」「○○純米 生酛」
何種類もの製法違いがあります。
さらにそれぞれに2023年、2024年、2025年…とビンテージが加わると組み合わせは無限に広がっていきます。さらには寝かせる環境によっても違った味わいになります。
注 ワインのビンテージとは意味合いが違います。単純に何年寝かせたか。
そうして何年かするとどういう製法でどういう環境で何年寝かせるのがベストとなって行くでしょう。
考えただけでワクワクしますね。
熟成酒は時間と手間そしてコストがかかります。
酒を仕込んでから売り上げになるまでにタイムラグがあるので経営的に余裕がないと手を出しにくいです。
すでに始めている蔵も増えてきています。これから益々増えていきますが、ポピュラーになるには何年かかかるかもしれません。
まとめ
〇日本酒のトレンドは時代背景とともに変わっていった。
〇日本酒トレンドは頂点まで行きついて方向性を見失った。
〇令和のトレンドは熟成酒。
〇熟成酒は燗にするとメチャクチャ旨くなる。
〇熟成酒の可能性は無限大。
何度もいいますが、熟成酒や燗の良さは実際に体験していただかないと伝わらないです。
逆に体験していただければ納得してもらえると思います。
少しでも興味が出たなら是非チャレンジしてみてください。
皆様の日本酒ライフがより楽しくなりますように。