見出し画像

第6回 賃上げには髭だ(スウェーデン)


※画像のみの転用や、無断での二次利用は固くお断りいたします。

世界一の男女平等はどこにある? スウェーデンか? ノルウェーか? 長年抜きつ抜かれつの両国だが、今回はスウェーデンの話。

スウェーデンの現内閣は24人のうち13人、国会議員349人のうち156人が女性である。

昨年、英誌『エコノミスト』が発表した「女性経済指数」で世界一に輝いたのはスウェーデンだった。同誌は、政策・慣行、金融へのアクセス、教育訓練、法的社会的地位、実業界の環境の項目で、男女平等がどれだけ達成されているかを調査した。

しかし、この地位は、スウェーデンの女性たちの「絶え間ないたたかい」がなければ、ありえなかった。そのたたかいぶりを示す1枚が、この真っ赤なポスターである。

現政権は中道右派政権だが、このポスターが作られた当時は社会民主党政権で、制作者は同党女性部(愛称S・ウーマン)である。

1999年、S・ウーマンは「政治権力も賃金も男女平等に均等配分せよ」という目標をたてた。現実の賃金格差は「男性100に対して女性80」。この壁をぶち破ろうというのだ。

ところが、髭の主は言う。

「ごめん、君の出番はもうないんだよ」

それまで長年、女性たちは、「次は女の番」のスローガンを掲げて、男女平等の運動をしてきた。なのに、これが、私たち女性への男性の回答なのか! 

こうなったら、残された方法はひとつ。女が男になるのだ。そうだ、髭(ひげ)をつけよう!

このちょっとユーモラスで激しいたたかいは、「髭キャンペーン」と名づけられた。ポスターの一番上にある大きなスウェーデン語Nödlösningは、てっとり早い方法とか、一時しのぎの方法とかいう意味だ。その下には黒い口髭がある。小さな字は「労使交渉のとき、この髭をはぎとって口に貼りなさい」と言っている。

「男女が完全に平等になるまで、何年待てばいいの? 私たちはもう待てない。親父社会をぶっとばせ。権力と賃金を男女平等に分け合うまで決してあきらめない」

ポスターは、最後にこう会員拡大を呼びかけることを忘れない。「本当に解決していくためには、S・ウーマン(社会民主党女性部)へ」。

ポスターに記されたS・ウーマンのホームページをクリックしてみた。 

S・ウーマン(社会民主党女性部)は、1920年、120人の女性たちで創設された。スウェーデンと社会民主党を男女平等にするため、手をつなぎあってたたかうフェミニスト、と自称する。

300の地方組織を持ち、2年に1回の大会で活動方針を決める。過去、妊娠中絶の合法化、核武装廃絶、労働・家庭・税制における男女平等を勝ち取ってきた。現在は、正規労働に女性を増やすことや、男女平等賃金の実現が、運動の焦点になっている。

このポスターは色が勝負だ。だが、白黒の本紙では真っ赤な色が見えずインパクトがない。いつか本物をお見せしたい。

(三井マリ子/「i女のしんぶん」2013年5月10日号)


いいなと思ったら応援しよう!