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【ショートショート】まっしろ海にダイブ
朝目覚めてすぐ。まだ暖房器具が眠っている古家は、屋内だと言うのに底冷えする。はーっと吐いた息が薄っすら白い。毛玉だらけの毛布を肩にかけ、これまた毛玉だらけのもこもこのルームシューズを履いて、ガスヒーターを起こした。冷えが一瞬で霧散するような温風で、ただちに温まり始める室内にほっと一息。
取り急ぎ熱々のコーヒーをマグカップに作り、猫のようにヒーターの前を陣取る。安物のクッションに座ってコーヒーを喉に流し込めば、胃の奥に湯気が広がる感覚。そしてコーヒーの香ばしい香りが鼻と口いっぱいに広がった。
ちらりと庭を眺めてみれば、地面はまっさらな雪が分厚い絨毯を作っていた。冬枯れした木は二本共、降り積もった雪でデコレーション中。太陽の光りを受けてきらきらと細かく輝く様は、まるで白昼のイルミネーションだ。
そんな庭先を見ていると、毛玉だらけの防寒具で丸まっていたのが嘘のように心が疼き出す。ああ、そう言えば今年はまだだった。なんて思ってしまえばブレーキはさようなら。マグカップはヒーターの上に置き、ダウンを羽織る。そのままがらがらっと開けた窓から真っ白な絨毯目がけて飛び込んだ。
「うーっ! 冷たっ!」
よく冷えた雪は非常に冷たくも柔らかく、私の全身を受け止める。私の冬の恒例行事、雪ダイブ。もちろん非常に寒いのだが、こうして見上げる空が何より美しい。
雪に全身を預け、真っ青な空を眺める。それはどこか海に浮かんでいるような、世界と一体になったような。あらゆるものを忘れさせる瞬間。真冬の真っ白な海で真っ青な空を眺める、何よりも贅沢な時間だ。
「あー……あの雲、餃子みたいだなあー……」
ついでに今日の献立も決まる有意義な時間だ。
雪にダイブしたいお年頃。
下記に今まで書いた小説をまとめていますので、お暇な時にでも是非。
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