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【ショートショート】秋雨前線、メロンソーダを通過中

「おはよ~……」
「おはよぉ。今日はえらい遅いお目覚めやな」
「ん゛ー……」

 眠い瞼を擦りながら、キッチンに立つ彼に起床の挨拶をする。からかいの言葉は唸り声で返しつつ、洗面台へ。冷たい水で洗顔し、頭を叩き起こしてから歯ブラシをくわえる。口内もミントですっきりしたところで肌の保湿。どれかひとつで良いから省いてしまいたいものだと思いながら、キッチンに戻る。
 キッチンでは彼が自分用に淹れたコーヒーの匂いがふわりと広がっていた。すんすんと鼻を動かしコーヒーの匂いを脳に届ける。飲んでもいないのにカフェインで頭がより目覚めた気がした。
 と同時に目を覚ました頭が痛みを訴え始める。激痛ではないが、全く存在を無視出来る程でもない。一番厄介な度合の頭痛だ。痛みと鬱陶しさで自然と眉間が寄る。そんな私を見た彼は、手にしていたマグカップをテーブルに置き、「やっぱり頭痛いんやろ」と言って食器棚のグラスに手を伸ばした。

「やっぱりって何ぃー……」
「『頭痛い~』って顔しながら洗面台んとこ行っとったやんけ」
「何その顔ー」
「その顔やその顔」

 自分の顔が指さされるも、「頭痛い~」と言う顔がどんな顔か分からず口を尖らせる。そのまま彼に抗議を続けるが、「はいはいそうやな」といなされるだけで手応えはない。
 そして彼はグラスに氷を入れ、そこに冷蔵庫から取り出したメロンソーダをゆっくりと注いだ。しゅわしゅわしゅわと、透明なグラスが鮮やかな緑色で染まっていく。はいと差し出されたそれを受け取ると、炭酸の弾ける微かな音を耳が拾った。

「どうせ食欲はあんねやろ? ほなダルい時くらい好きなもんだけ食うたらええねん」
「じゃあ今日はカルボナーラ作って」
「皿用意係すんねやったら作ったるわ」
「する~!」

 コーヒーとメロンソーダで乾杯をする私達をよそに、テレビの天気予報士が秋雨前線の説明をしていた。もうすぐ季節も変わるらしい。明日は二人でハロウィンの飾り付けでも見に行こうか。


たまにごりごりの関西弁を書きたくてしょうがなくなるの、なぁぜなぁぜ?


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藤堂佑
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