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【毎週ショートショートnote】文学トリマー

お題:文学トリマー


「これトリマーさんに回しといてー」
「はーい」

 出版社の朝は忙しい。夜型人間の多い作家を相手にしているのだ、社内で済ませられるものは午前中にがモットー。会議・事務作業・リスケ。ああ、とにかくたくさん。
 毎朝の事ながら目を回しつつ、先輩から受け取った原稿データをトリミング部署に送る。近年タイパと言う言葉がすっかり浸透し、誠に遺憾ながら出版業界は「文章を削る事」を余儀なくされた。
 口を尖らせながら作られたトリミング部署では、文学トリマーの社員が日夜、作家の原稿を削り研ぎ澄ましている。これがコケてくれれば、そら見た事かと言えたのだが、残念ながらタイパど真ん中で大ウケ真っ只中。本を愛し出版業界に骨を埋める覚悟の私からすれば、どうにかしてコケてくれないかと願うばかりだ。

 そして今日もトリマーがコケる事を念じながら、各所サイトの数字チェック。やはり削った小説が伸びている。本日十回目の溜め息を吐いた。
 早くタイパが廃れてくれとも念じつつ、別原稿の確認をしようとした瞬間。トリミング部署から、昨日送った原稿の削りが完了したとの報告。
 原稿データを開いてみると、「猫」の一文字のみ。

「それはもうただの単語じゃん!」


いつかこうなるんじゃないかなあって。
薄っすら思ってしまう今日この頃。



下記に今まで書いた小説をまとめていますので、お暇な時にでも是非。


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藤堂佑
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