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きゅうしゅうをめぐる旅「計画編」

皆さんは、「青空と逃げる」は読んだことはあるだろうか。
辻村美月さんが執筆したとある一家の逃避行を描いた小説である。

その小説の中に、大分の別府温泉の話が出てくる。
ネタバレは最悪なので詳細はさけるが、この描写がとてもいい。

湯けむりに覆われた町のデティールが、これでもかというくらいに息づいて感じられる。

心は既に、別府の砂の中にまで飛んでいた。

そうときまれば、すぐに行動するのが信条である。とりあえず羽田・大分間の往復便をとる。それ以外のことは、それから決めればいいだろう。

そうこうしながら最安の便を調べているうちに、友人からLINEが来た。
「おい、福岡にいかないか」

なんと、私が計画していた大分旅行の日程の付近で福岡旅行にさそわれてしまった。これもぜひ行きたい。うまい飯が必要なのだ。

しかし落ち着け。大分から福岡まで行って、そこから帰るのでは味気なくないだろうか。いっそのこと、佐賀・長崎もめぐってしまいたい。佐賀も長崎も温泉があり、そして山がある。

友人には「途中で福岡合流する」とだけ返信をした。

かくして、大分温泉一人旅行だったはずの小計画は、九州の北部をめぐる一大旅行へと変貌を遂げたのだった。

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まずは、航空券をとる。大分に到着して、長崎から帰る。
ここまではいいだろう。
しかし、移動手段や宿泊地をきめるのはなかなか骨が折れる。なにせ、おれには金がないのだ。贅沢にレンタカーやらホテルやら取っていたらあっという間に破産である。

だからといって公共交通機関も格安というわけでもない。
いっそのことレンタカーを借りて、車中泊する方が安く済むこともある。

どうしたものか。
とりあえず、エアビーで安宿を探すことにしようか。

目的地の各地でドミトリー型の宿を検索してみた。するといくつか候補はでてくる。
「なんだこれは。2000円?安過ぎはしないか。」
そして詳細をみる。そしてがっかりする。
こういうのはたいてい「女性専用ドミトリー」なのである。男性なんかとドミトリーには泊まりたくない方々の聖域である。見なかったことにして別を当たる。

するとそれなりに安い費用で2つ候補が絞れた。

一つは別府にある宿だった。これがとても面白い形態をしている。
まず、ドミトリーではなかった。普通の旅館の顔をしている。どうしてこんなしっかりとした旅館が格安なのか、気になってクリックした。

すると、どうやら旅館の大広間の中に2~30個ほどのテントを並べて、そこに泊まれ、というスタイルなのである。

天才だ。

恐らくはコロナ禍の影響であまり宴会をやらなくなり、暇を持て余している大広間の利用価値を考えた結果なのだろう。

普通の感覚なら客は避けてしまうと考えられてしまうが、そもそも安宿を探している層はあまり普通ではないので、見栄えなど誰も気にしない。

しかも、普通に旅館ではあるので、温泉が付いており、テント泊をする我々貧乏人にも利用させていただけるのだ。何と慈悲深い。

一つ目の宿泊地が決まった。

二つ目の宿泊地は佐賀のドミトリーである。
こちらは単純に佐賀駅から近く、安く、1回にバーがあるという3種の神器的な理由で決まった。

酒を飲みながら、佐賀のおすすめをオーナーに聞けるのは最高だろう。

こうして宿泊地が2つきまった。
ここから逆算をして旅程を決めていく。

まず、福岡に立ち寄る日程はすでに決まっている。ここは友人たちと合流するので絶対にずらせない。

大分から長崎へ向けて右から左へ、という流れも変えられない。

すると、おのずとルートは決まってくる。

まずは、大分で2泊して福岡へ。
福岡で友人たちと遊んだ後に、佐賀へ向かい、佐賀で1泊、その後長崎へ向かう。

ここで、宿泊地の決まっていない日程に関しては車中泊をすればいいだろう。どのみち車が無いと移動はかなり厳しいのだ。

さて、ある程度の流れは決まった。あとは、温泉以外何かしたいことはあるか考えよう。

まずは大分の観光地を調べてみた。しかし、流石ともいうべきなのだが、温泉しかない。別府、湯布院のほかにもいくつか小さな温泉地がある。

こういう温泉地をめぐるのいがいいだろうな、とぼんやり考える。
そのぼんやりとした目線がとある山脈の名前をとらえる。
「くじゅう連山」

聞き覚えのある山だと思った。筆者は、ここ1年くらい登山をやっている。
まだ丹沢や筑波山などの低い日本百名山にしか上ったことが無い新米ハイカーだが、かなり山にはまってきていた。

そうか、この山は日本百名山だ。

興味の舵が急に傾いた。
なんならこれが目標というか、この山を登るために大分までいくんだろう。

温泉旅が登山旅兼温泉旅に進化した。どのみち、山に行けば湯がわいているのだからこんなに相性のいい組み合わせはないだろう。

他にも山が無いか調べた。
九州といえば阿蘇が有名だが、ここは以前訪れたことがある。
佐賀はそこまで高い山がない。
長崎に山のイメージはなかった。しかし、超有名な山があった。
「雲仙普賢岳」である。

これまで多くの噴火を繰り返してきた、正真正銘「活火山」であり、登山をしても楽しい山らしい。

登山レベル自体は比較的低く、簡単に登れる山であるが、なかなかこういう「地学の教科書」みたいな山に登ることもないので、ぜひにでも上っておきたい。

くじゅう連山と雲仙普賢岳、二つの山を登って温泉を探す。そんな旅になる。

出発が待ちきれない。


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