『みんなで飯行きましょう!(1)』

「糖質制限してる話、この前したっけ?」と言われたので、「え、聞いてないです!そうなんですか?」と言って聞き始めたら、全然この前聞いた話だった。
一から丁寧に糖質制限の重要性を説く先輩に「全然この前聞いた話でした…!」と言うわけにもいかず、そのままバレずにオチが来るの待った。よほどたくさんの人に言って回ってるのだろう。前聞いた時よりも無駄が削ぎ落とされ、話が仕上がっていた。




「いやぁでも準決勝行ったなんてマジ凄いですよね!」
1人の後輩が僕に言い間違えた。隣にいたその相方が、「準々決勝だろ!」と間違いを訂正しようとしたが、それは僕が準決勝に進めなかったことをあえて強調するようで逆に失礼と判断したのか、開きかけた口をつぐんでそのまま話は流れた。
僕と後輩たちとの間には、まだまだ距離があるようだ。




満員電車。こちら側のドアが開いたため、この駅で降りる人たちに通路を開けるつもりで一度電車を降りたら誰も降りなかった。さっきまで立っていた場所を詰められてしまったので別の車両に移った。




あんかけ焼きそばの具と麺の間に敷いてある透明のフィルムを摘んで引き抜いたと同時に、親指と人差し指の間からずり落ちた。
ヒラヒラと舞い落ちていくフィルムがスローに見えたが体は動かない。頭の中で叫ぶ。「2分の1…頼む!!2分の1だろ!!!神よ!!!」
祈りも虚しく、ベトベト面を下にしたまま絨毯の上に落ちていく。




大学の時に作られた『みんなで飯行きましょう!』のLINEグループが気付いたら僕1人になっていた。




ご飯をおかわりしたいが、大声で店員さんを呼ぶ勇気は出ない。タイミングを見計らっているうちにおかずが最終盤に差し掛かっている。




今日もコンビニのおでんを買えなかった。




僕が歩いても、鳩がどかなかった。




給料日だった。

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