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美容室での読書が好きだ

 私は美容室に行くのが好きだ。行きつけの美容室の決まった美容師さんと談笑しつつ、思った以上の出来栄えにしてもらえるのが嬉しい。マッサージやヘッドスパを必ずしてもらえるので、それもありがたい。
 今日は美容室で、三ヶ月ぶりにヘアカットとカラーリングをしてもらった。カットとカラーリングはいつもの美容師さんにしてもらい、久々に前髪を作ったが、かなり自分に合っていて大満足だった。マッサージと洗髪、ヘッドスパだけは他の美容師さんがしてくれたが、若いのに前よりも上達していて気持ちよかった。ただヘッドスパは力がこもりすぎてハゲるかと思ったが。

 美容師さんとの談笑はもちろん楽しいが、カラーリングのときは必ずカラーリング剤を塗ってから放置する時間があるため、いつもKindle Paperwhiteという電子書籍端末を持ち込んで読書している。その時間が至福なのである。
 涼しい店内で、ガヤガヤと楽しそうな話し声がする中で読む本はこの世での最高のものの一つだ。そういうことは喫茶店やカフェなら実現可能だが、カフェの類ではコーヒー一杯でいつまでも居座れないタイプなので、美容室でのカラーリングのタイミングこそが遠慮のいらない店での読書タイムなのである。
 この美容室で、様々な本を読んだ。退屈な本もあれば面白い本もあった。退屈な本は何故だが美容室だと読み通せるし、面白い本は美容師さんが食いついてくれたりもした。「全てのアイドルが老いない世界」(伴名練)を読んでいたら「どういうことですか?」と聞かれて楽しかった。もちろん会話を弾ませるための職業的な質問だとはわかっているが……。

 今日は、実石沙枝子『物語を継ぐ者は』を読んでいた。デビュー作を読んでいてかなりの実力者だなと思っていたのと、Xで見た冒頭の部分が惹き込まれる感じだったので買ってみたのだ。美容室の空間のよさと相まって、半分ほど読めた。これは中高生に読んでほしいなあと思える本だ。
 爽やかさと現実の苦みがリアルに感じ取れる作品だ。孤独な小学校時代を過ごした少女の伯母さんが亡くなった小説家で、その小説家が書いていた未完のシリーズ作品の続きを、周囲の人々の助けを得ながら書いていくというストーリーだ。
 これからどうなっていくのかはわからないが、ストーリーと作中作がどう絡んでいくのかが楽しみだ。果たして少女は物語の続きを書き上げられるのか、そして彼女の世界はどう変わるのか?

 美容師さんは私の読んでいるものを割と盗み見てしまうタイプなので、「何かエグいのを読んでます?」と聞かれてしまった。エグいといえばエグい。現実の苦さが書いてあるから。でも、子供を丸め込まない誠実さでもある。楽しくて明るい、だけが子供の読みたい本ではないのだ。

 面白いので、早めに最後まで読み切りたいと思う。

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