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「腹圧」という言葉がIAP、ITPを邪魔しているっぽい

トレーニングや競技において、「腹圧」という言葉は近年かなり聞き馴染みがあると思われる。

よくわからなくても「腹圧」と聞くだけで
『ああ、お腹に力入れて固めるのね』
と腹筋に力を入れた状態であると解釈するケースがある。

でも果たしてそれが正しい「腹圧」なのだろうか。

今回は意外と誤解しているこの「腹圧」について話していきたい。

お腹に力を入れている状態だけが「腹圧」じゃない

ちょっとわざとらしく話を引っ張ったが、腹圧というのは腹にチカラを入れてる状態のことではない。
世間一般で「腹圧」と呼んでいるものは
IAP(Intra-abdominal pressure)腹腔内圧のことを指している。 
これはお腹の中の空気圧のこと。

お腹の中に風船が入っているイメージで、風船内に含まれる空気が多ければ腹腔内圧は高くなり、風船内の空気が少なければ腹腔内圧は低くなる。
風船内に空気をためることで、硬く安定した体幹が獲得できる。
ただし、人の身体は風船のようにゴムでできているわけではないので腹筋や背筋によってお腹の中に空気を押し込める必要があり、当然押し込める力が強いほど、腹腔内圧も高くなる。

腹腔内圧を高めた状態

画像のような腹腔内圧の状態にするには、お腹の正面を膨らませるだけでなく、お腹の横、背中の方にまで空気を含ませる意識が必要になる。

IAPと背骨の関係

IAPは背骨と密接に関わっている。
IAPが高まることで、背骨のクッションである椎間板にかかる負担を30-50%減らすことができると言われている。
IAPを高めることで体幹を安定させるだけでなく、背骨にかかる負担を少なくし、強い姿勢を維持することができるようになる。
逆に、IAPが低い状態では椎間板への負担が増大し、椎間板ヘルニアを引き起こし易くなる可能性がある。
また、猫背や反り腰といった悪い姿勢に陥ってしまう原因にもなる。

横隔膜と体幹の関係

横隔膜は息を吸う際にお腹に向かって下がっていき、息を吐く時には胸に向かって上がってくる。
これらの動きによって、IAPをコントロールしている。
横隔膜を働かせる(お腹側に下げる)ことでIAPを高めて体幹を安定させることができ、同時に重心位置が下がるためバランス機能が向上する。
反対に、横隔膜を下げることができないとIAPが低くなり体幹が安定しない。
また、重心位置が上がるためバランス能力が低下する。
この様に横隔膜は呼吸に関わるだけでなく、体幹の安定性に関わっている。

体の風船はお腹だけじゃない。
肺も同時に膨らませる。
ストラクチュラルエクササイズではむしろ「胸圧」が大事

今まで話してきたのは、お腹の圧を高めるというもの。
しかし、体にはもう一カ所大きな風船がある。
それは「肺」である。
胸部の内圧のことを「胸腔内圧」と呼ぶ。
ITP(intra-thoracic pressure)

なぜこのITPが大事かと言うと
スクワットやデッドリフトなどの地面に足が接地し、脊柱に対して垂直方向の負荷がかかり、姿勢を保持しながら複数の関節の動作が伴うエクササイズ、
これをストラクチュラルエクササイズ(構造的エクササイズ)と呼ぶのだが、
負荷が脊柱を通るわけだから、胸椎にも安定性を求める必要がある。

要は、腹と胸の風船を膨らませなければ、ストラクチュラルな垂直方向の負荷に耐えれず、胸が落ちてしまったり、腰がまるまるエラーが起きてしまう。

スクワットでボトムから地面を蹴ってトップに戻る時に、お尻が先行して上がり、グッドモーニングのような姿勢になり、バーベルをあげきれず潰れてしまうケースを経験したことはないだろうか。
このエラーについては、胸を膨らませること(ITP)ができておらず胸が落ちてしまっている可能性が極めて高い。

ではどうすればお腹と胸の内圧を高めることができるのか。

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