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【読書感想文23】21世紀を生きるためのヒントがわかる「21 Lessons」

21 Lessonsは、世界的ベストセラーとなった、サピエンス全史とホモ・デウスの著者である、ユヴァル・ノア・ハラリ氏による、21世紀の人類のための21の思考が書かれている。

21ものテーマがあるので、私の文章力では要約するのは困難なので、私が気になった点だけをピックアップして紹介する。

1.自由主義はセットメニューの選択次第

現代国家においてほとんどの国が自由主義を標榜している。しかし「自由」とは経済、政治、個人と国家レベル、国際レベルで分類して以下の表のように多様な意味があり、それぞれの国家は自国にとって都合の良いメニューを選択している。

100%全てが自由な国はないが、ある程度不自由な国であっても限定的に自由主義を取り入れている。世界的に協力したいと考えているのは、国家間の平和な関係である一方、移民に対して寛容な国はほとんどない。

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2.仕事がない世界でどのように幸福を見つけるべきか

AIとロボットによって、将来人間の仕事はほとんど必要なくなるかもしれない。それは幸福かもしれないが不幸かもしれない。仕事は人間にとって自尊心を維持するための拠り所でもあるからだ。もし仕事がなくなったら人は何のために生きるのだろうか?

一方で失業率が低く、豊かな生活(ワーキングプアの人もいるかもしれないが)を送っているはずの日本人の幸福度は国際比較をして低い。その反対がイスラエルの超正統派の男性である。彼らは宗教的儀式に従事しており、働かずに貧乏であるが、幸福度は高い。経済を超越した物が彼らに幸福を与えているらしい。

3.世界のルールは統一され、多様性は失われている

多様性の時代といわれながら、現代ほど人類史の中で世界のルールが統一されつつある時代はない。イスラム原理主義者も経済学や物理学を学習しており、アメリカドルは金と同じように世界全土で価値が認められている。

1000年前であればそれぞれの世界で経済観や宗教観などはまったく違ったはずだ。国家という定義も怪しい。当時中国の宋は周辺国を同等の国家とは認めておらず、中華思想により宋のみが世界の国家と考えていただろう。アラビア世界でも違う宗派の存在自体を否定していただろう。

4.テロへの過剰な恐怖はテロリストの思う壺

テロリストは世界中で恐怖を撒き散らしているが、テロの被害は決して大きくない。自動車事故や生活習慣病で死ぬ人の方が遥かに大きい。テロはほんのわずかな暴力によって、国家に対応を強いて、結果として経済的な打撃を与えている。

各国政府がテロリストを無視できないのは、テロが政治的暴力だからであり、それを政府が容認すれば政府の正当性が疑われる。皮肉にも政治的暴力が格段に減少した先進国だからこそテロは恐れられる。(残念ながら)アメリカで10人がテロで死亡したら大事件だが、エチオピアで100人が死亡しても大きく報道されないのが現実である。

5.現代人は原始人に比べて賢くない

現代人は原始人を野蛮で無知だったと考えがちである。確かに原始人は経済学も物理学も学んではいなかった。しかし実際にどれほどの人間が学問を理解しているだろうか?理解できていてもその分野は非常に限られている。学問は細分化され、物理学者でも宇宙、量子、物性、プラズマなどの広い分野全てを理解している人はいない。まして物理学者は経済学や心理学はあまり知らないだろう。

現代人は生きるための知識をほとんど持っていない。マッチやライターがない状態で火を起こすことも、鋭利な石器を作ることも、食べられるきのこを見分けることもできない。原始人ならある程度みんなできただろう。現代人は分業化された世界で、ごく限られた仕事をこなす能力しか持っていない。

6.儀式は虚構を維持するために必要

形式的な儀式を多額のコストを払ってし続けることは無駄に見えるだろうし、合理的に見れば実際に無駄である。しかし人間は虚構を信じることで連帯感を保つことができる。その虚構を信じさせるために儀式は重要である。軍事パレードは経済的合理性が何もないが、国家の体面という虚構を国民に見せる格好の儀式である。

儀式の重要性を早くから見出していたのは孔子である。儒教ほど儀礼を重視した宗教(学問?)はないかもしれない。孔子は儀式が人間を団結させると2500年前からわかっていたのだから、驚くべき先見性だと言っていい。儒教の広まったアジアが比較的政治的に安定だったのは儒教の教えのためだったかもしれない。



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