お肉は控えめに
みなさん、こんにちは。坂ノ途中・研究員の小松光です。
前回から、「環境に配慮した食事」について考え始めました。食事について考え直すことは大事です。その理由の一つは、私たちの食事が、環境に大きな負荷をかけているからです。
例えば、温室効果ガスについて言えば、食料生産による排出量は、世界の総排出量の3割に上ります。最近の研究によると、食料生産による排出量を減らすことなしに、温室効果ガスの国際的削減目標を達成することは、不可能です。
では、私たちの食事のうち、何が問題なのでしょう? 第一に挙げなくてはならないのは、肉の消費量が多いことです。過去の研究では、農業の環境負荷として、温室効果ガス、富栄養化などがよく調べられてきました。いずれの点から見ても、肉の消費量が多いことは、とりわけ大きな問題です。
下図は、さまざまな食材・食品の環境負荷を示しています。過去の研究結果をもとに、私が描きました。環境負荷として、温室効果ガス以外にも、富栄養化などのデータが得られますが、温室効果ガスについての結果を示しています。いずれの環境負荷についても、大まかな傾向は同じだからです。
図の横軸には、さまざまな食材・食品が並べられています。縦軸は、環境負荷の大きさ(ここでは、温室効果ガス排出量)で、野菜を基準とした相対値を示しています。つまり、縦軸の値が3だったら、その食材・食品の環境負荷が、野菜の3倍であることを意味します。
図を一目見て気づくのは、動物性の食材・食品の環境負荷が高いことです。とくに、牛肉・羊肉・豚肉などのいわゆる「赤い肉」は、環境負荷が野菜の40倍を超えます。鶏肉や魚はそこまでいきませんが、それでも10倍は超えます。対照的に、植物性の食材・食品は環境負荷がおおむね低く、野菜と同程度です。
なぜ動物性の食材・食品の環境負荷は高いのでしょうか?
このことを理解するために、(1)トウモロコシを人間が食べる場合と、(2)トウモロコシを牛に食べさせて、牛を人間が食べる場合、を考えましょう。2では1よりもずっと多くのトウモロコシが必要となります。だいたい10倍くらい必要です。
なぜそうなのかと言えば、トウモロコシから得られる栄養のすべてを、牛が成長に使えるわけではないからです。たとえば、牛は、体温を維持するためにも栄養を使います。体温維持に使われた栄養は、牛を食べる人間には届きません。したがって、一人の人間がお腹いっぱいになるために必要なトウモロコシの量は、2において1より多くなります。その分、より広い農地が必要となり、環境負荷も大きくなります。
こういうわけなので、肉を食べることは、環境負荷が大きいのです。ですから、環境のために何かしたいと思っている方で、肉の量を減らせそうな方は、トライしてみるのもよいと思います。
あるいは、肉の量を減らすのではなく、肉の種類を換えてみるのも効果的です。たとえば、牛肉を少し減らして、鶏肉や魚をその分増やすのが、一つの方法です。図に示しましたように、牛肉よりも鶏肉や魚の方が、環境負荷が小さいからです。
とはいえ、環境に配慮した食習慣を始めようと、あまり張り切りすぎないように、ご注意ください。無理をすると続きません。前回お話ししました通り、一回一回の食事による環境への影響は小さいのです。その食事を長い間続けることによって初めて、目に見える環境負荷の低減が可能になります。
今回は、お肉の話をしました。次回は、「旬の野菜を食べること」について考えます。
それでは、また。
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