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巡り合うコルシア書店の仲間たち

ようやく秋らしく過ごしやすい
季節になってきましたね。

秋といえば、読書。
読書といえば秋。

同じことですが二度言いました。

なぜなら同じ本を何回も読んでいるから。

この『コルシア書店の仲間たち』は
私にとって不思議な本なんですよね。

初めて手に取った二十代のときは、
何度挑戦しても読了できなかった。

そのうち、売ってしまって
ふと何かのきっかけでまた買い直して
そのときは読破できたんだけど
まるでミラノの朝の白い霧に包まれたように
あれ、あの本何書いてあったっけって
記憶が薄れてしまう。

それで私が持っているのは
文春文庫版なんですが、

今日図書館に単行本と白水社の新書サイズが
あったので装丁を変えて読んでみるのも
ありかなあと思いました。

いつも読むのに時間かかってた
イメージなんですが、
今回はフィーリングがあったのか
一、二時間集中してサクッと読めました。

これ、コルシア・デイ・セルヴィ書店の本じゃないんです。

コルシア・デイ・セルヴィ書店という場を介在して出会った人たちを描いた本なんです。

だから『コルシア書店の仲間たち』なんですよね。

当たり前なんですけど、何回も読み返して
あー、スペースやコミュニティ、場の本じゃないんだ、人なんだ。
と腑に落ちる感じがしました。

あと須賀敦子の文章がうますぎて、
最近のエッセイ本や日記本とレベルが違う。

今の本が格下とかそういうのではなく、
なんていうんだろう。
とにかくこれは上質な文章だって
読んだ瞬間わかるやつ。

これは色々な人生経験を積まないと
描かれている世界に
入り込めないのではないかと。

だから二十歳過ぎそこらの私が
なんかよくわかんない、で
頁が止まってしまったのも無理はないかも。

あと、私ひたすら
ひとり『コルシア書店の仲間たち』チャレンジを
続けているだけなので、
須賀敦子の他の著作に触れたことないので、
今後機会があればぜひ読みたいと思います。

何か文庫本で解説書いてるのくらいしか、
他の文章読んだ記憶がない。
こんな綺麗な文章を書かれるのに
読まずにいるのはもったいない。

あと、あまりエッセイらしくないんですよね。

主観とか、感想みたいなものが
ないわけではないんだけど
主張が少ない。

コルシア・デイ・セルヴィ書店で
〈空気のようだった私〉みたいな感じなんです。
本当に。

あとコルシア・デイ・セルヴィ書店の活動自体も経営が厳しいとか、運営メンバーが欠けてゆくとかはわかるんですけど、なんとなく活動家やパトロンや、色々な人が出入りする拠点みたいなところなんだろうな、と。

まあ私自身、二十代の頃にそういうアートグループの中にいたのでなんとなくわかるんですが、熱量だけはあって、でもギリギリのところで持ち堪えて、少しずつ方向性が違い出すとか、そういうところ。なんだか色々表しがたいよね。

そこは須賀敦子は読者に委ねたのか、知る人ぞ知るコルシア・デイ・コルシア書店を自分なりにあえて書かなかったのかは本人のみぞ知るところです。

とにかくコルシア・デイ・セルヴィ書店について
書かれた本だと思って読めば、
あれ、なんか違うなってなるのはわかる。

その代わりというより、
この本の魅力は登場する仲間たち。

テレーサおばさまこと、ツィア・テレーサ。
名家の出身で
コルシア・デイ・コルシア書店の威厳として、
仲間たちに愛され、時に嗜め、
アイスクリームが大好きなチャーミングな
素顔を覗かせて。


エリトリア出身のミケーレ。
冬の早朝に訪ねてきて、暖かいコーヒーを
淹れてやったミケーレが
絨毯の行商をしてコーヒーをぼくに
奢らせてくださいと言ったこと。
それがまるで夢であったかのように
そのまま街からいなくなったこと。


七十近い父が結婚し、妹が生まれ、
書店の仕事をやめたガッティ。

ユダヤ系で子供を望まぬ妻と離婚して、
その傷を癒す小説を書き、
様々な人生の問題を抱え込むアシェル。

その他にも沢山の愛すべき人たちが登場します。

読んでいて、きっとこの人は
こんな仕草や口調でおどけたり、
笑ったり怒ったりしたんだろうなと
いうのがありありと目に浮かぶ。

それは須賀敦子の優しい眼差しそのもの。

また、時間がたって読み返したとき
この先何度コルシア書店の仲間たちに
巡り合うのか。

本って時間が止まっているようで
読んだ途端、動き出す。

それは本にかけられた魔法なんだなあと
改めて思います。

なので十代、二十代で
あの本おもんなかったなあって
挫折した経験のある皆さん。

騙されたと思ってもう一回
挑戦してみてください。

思いっきり面白いか、
あー、なんかわかるかも、か
全然わからんのどれかです。

でもなんかそういうのが
楽しいんですよね。

読書の秋、まだまだ積読本あるので
沢山読みます。

それでは。


#エッセイ #須賀敦子 #コルシア書店の仲間たち #読書記録

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