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【ADVゲームレビュー】JUDGE EYES:死神の遺言 Remastered / PlayStation 5(2021)

JUDGE EYES:死神の遺言 Remastered

木村拓哉が主演となったリーガルサスペンス巨編のリマスター版。



内容紹介


八神はかつて弁護士として駆け出しの頃、殺人容疑で逮捕された被告の弁護を担当する。
誰もが有罪を疑わなかったその裁判で、八神は見事に無罪を勝ち取る。
だが、その被告が再び殺人を犯したという事実を知った八神は、弁護士を続ける気力を失ってしまう。
そしてその後はしがない探偵事務所を営んでいた。
法律家の経験と神室町で鍛えた喧嘩の腕で、どんな依頼も受け付ける「何でも屋」のような存在だが、そんな彼を頼る神室町の住人は多い。
八神自身も神室町で青春時代を過ごし、そこで暮らす人々に愛着を感じており、親身になって依頼を引き受けていた。
しかしある日、神室町で起こった猟奇殺人事件に関する証拠集めの仕事を依頼されたことがきっかけで、その事件の渦中に引き込まれていく。

セガ



解説/感想(ネタバレなし)


オリジナルは2018年にPlayStation 4にて発表。
PlayStation 5をはじめ、X boxやSteamに対応したリマスター版も特別価格でのリリースとなった。
「龍が如く」シリーズのスピンオフ作品であり、"キムタクが如く"という愛称のほうが定着していると言えなくもないが、タレント色の強い企画モノと侮るなかれ、ストーリーはとても重厚。
リーガルサスペンスとして丁寧に作られていて、ボリューム感も申し分ない。
シリーズ通じて未プレイだったものの、八神の不良インテリなキャラ設定がいかにも全盛期の木村拓哉が演じていそうなものだったので、個人的にはストーリーに入り込みやすかった。

「龍が如く」をプレイし尽している層から見れば違った感想になるのかもしれないが、まず、新宿歌舞伎町をモデルにした神室町の街を実際に歩くことでの没入感が凄い。
再現度が半端なくて、地上のみならず、ドローンの操作と紐付いて立体的に再現されているのが新鮮だった。
ヤクザとすれ違うだけで喧嘩になったり、平気で通行人にぶつかったりチャリを倒したり、という治安の悪さのデフォルメ化はあるにしても、序盤は街を歩いて移動するだけ楽しい。
むしろ、極道モノの側面を持っていることが、通常のミステリーアドベンチャーでは退屈になるだけの移動の処理に、エンカウントからのバトル要素という刺激を加えていて、ウザいときはウザいがゲームバランスとしてはちょうど良かったように思う。

サイドストーリーによって、コミカルな探偵事務所の日常をうかがえるのも良し。
メインストーリーとの並行稼働により時系列がぐちゃぐちゃになってしまうのは難点で、依頼を受けて喫茶店で待たせている状態なのに、メインストーリーで2,3日進んでしまうなんてこともある。
ゲーム上はまったく問題なく進行してはくれるのだが、依頼人の状況を想像すると居たたまれなくなるのは僕だけだろうか。

歌舞伎町タワーが出来たことで、マップは徐々に"懐かしい新宿"になりつつあるのが残念ではあるが、これがアップデートしていくのであれば、続編はもとより、「龍が如く」シリーズもやってみたいと思わせるには十分。
シナリオが熱い作品があれば、是非ともご教示いただきたい。



総評(ネタバレ注意)


源田法律事務所の弁護士だった八神は、有罪確実とされていた大久保新平の刑事弁護を担当、見事に無罪判決を勝ち取るものの、大久保は、釈放直後に恋人を惨殺したとして再逮捕、現在は死刑囚となっている。
"殺人鬼を野に放った弁護士”のレッテルを張られた八神は、それ以降法廷に立つことはなく、とある事件から松金組を破門となった元ヤクザ・海藤と探偵事務所を立ち上げて……
大きな陰謀が渦巻いている事件に巻き込まれ、過去の事件と再び向き合うという事件の展開そのものは、リーガルサスペンスの王道的な流れに沿っていると言える一方で、現在は探偵事務所を営んでいると設定が実に上手い。
ヤクザ御用達の弁護士というのもないわけではないだろうが、さすがに現職ではカチコミは出来まい。
いや、探偵でもダメはダメなんだけど。

兎にも角にも、警察も官僚も腐敗が凄まじいことで。
スキャンダルにしても度を超えているので、さすがに報道規制されたかな。
とはいえ、最後に暴走して動画にまでばっちり撮られたモグラについて、名前や職業は秘匿します、では世間が許さないのでは。
続編でどういう語られ方をしているのかは気になるが、八神の信頼が回復していることから逆算すれば、ある程度は所与の事実にはなっているはず。
もっとも、弁護士・八神の手柄ということになっているのであれば法廷で決着をつけてほしかったものの、これ以上盛り上げるとなると「逆転裁判」か「ダンガンロンパ」なみのどんでん返しが必要になるし、流れが出来た時点でバトルに移行という判断も間違いではないのかな。

ミステリーとしては、新谷が殺されたあたりがピークみたいなところはあるけれど、ゲームとしては常に右肩上がり。
出来ることが増えていくことで、シリアスさに息が詰まるばかりではなく、買ったはいいものの使いこなせていなかったプレステ5を稼働させる良い機会になった。
色々と叫ばれている通り、ドローンでの調査や尾行の退屈さは確かに課題。
また、イベントは見たいが、浮気が前提となってしまうガールフレンド機能は、もうちょっと整理してほしいかな。
やっぱり、ヒロインは真冬のほうが収まりが良いというのもあるのだが、他のシリーズもこんな軽さなんだろうか。

あとは、”死神の遺言"というサブタイトルが、最後までプレイしてもピンとこなかったので、もっと考察を深めたいところ。
八神、モグラ、生野、松金組長……
死神とは誰を差して、遺言とは何を差していたのだろう。
まぁ、実質的にはピエール瀧なのよな。
社会的に仕方なかったのだろうが、羽村のカシラはモデルチェンジをしたはずなのにピエール臭が消えていないので、かえって恋しくなるパターン。
彼のモデルでリマスターしてほしかった。


#全力で推したいゲーム

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