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【ADVゲームレビュー】LOST JUDGMENT 裁かれざる記憶 / PlayStation 5(2021)
LOST JUDGMENT 裁かれざる記憶
「JUDGE EYES:死神の遺言」の続編となるリーガルサスペンスシリーズ第二弾。
内容紹介
2021年12月、東京地方裁判所。
世間を騒がせた現職警察官による痴漢事件が、静かに幕引きを迎えようとしている。
引き締まった雰囲気の法廷。
粛々と言い渡される有罪判決。
このまますべてが決着するかに見えた……。
裁判官の言葉を遮るように、被告人が思わぬ事実を言い放つまでは。
「3日前、横浜で身元不明の死体が発見されたはずです。
その主は、私の息子を自殺に追い込んだ万死に値する人間だ」
偶然にも横浜に滞在していた探偵・八神隆之は、この復讐劇の真相を追い始める。
歪んだ正義の暴走が、さらなる悲劇を生むともしらず……。
解説/感想(ネタバレなし)
前作より3年後にあたる2021年。
38歳になった八神は、弁護士には戻らず元極道の海藤とともに神室町で探偵として活動していた。
本作の舞台は、横浜をモデルにした伊勢佐木異人町。
前作では義賊として登場した杉浦と、同じくハッカーとしての技術を持つ九十九が新たに開業した探偵事務所から要請を受けて、神室町の八神、海藤が協力するという形で物語はスタート。
彼らが調査する誠稜高校でのいじめ疑惑と、源田法律事務所のさおりが弁護を担当した痴漢事件が、とある殺人事件で交わっていく。
前作同様、メインストーリーに加えて探偵事務所で受注するサイドケースによって世界観を立体的にしていくスタイル。
本作ではそれに加えて、調査の一環でミステリー研究会の顧問として学校内に潜入した八神が、闇サイトを使って生徒たちを非行に走らせる"プロフェッサー"を追うために誠稜高校の生徒たちと交流するユースドラマが新設。
充実したミニゲームをストーリーの中に取り込む工夫になっていて、ボリュームは間違いなく前作以上になっていた。
重厚なストーリーになることはシリーズ上、自明。
背景にいじめ事件があるということで、精神的にずっしりきそうだな、とはじめるまでの腰が重くなった部分は否めないものの、いざプレイしてからはとにかく先に進めたくて仕方がなくなる。
深掘れば深掘るほど、日常と隣り合わせの事件が非日常的なスケールの大きさになっていくシナリオは圧巻。
主演の木村拓哉はもとより、玉木宏が玉木宏すぎて、クライマックスは映画を見ている感覚だった。
ベストな形ではないにしても木村拓哉の事務所絡みのしがらみも緩和されたと思われるため、一度困難だと判断された経緯はあるようだが、再度続編にチャレンジしてほしいシリーズ最高傑作だ。
総評(ネタバレ注意)
単体でも十分に面白いと思うが、人間関係などは前作を踏襲している部分も多く、八神の出自もだいぶ端折られているので、前作からの継続プレイが妥当だろうか。
前作は探偵としての活動がメインで、リーガル要素が薄かったのに対し、本作では主題として法の課題を描いた形。
それにより、ストーリーに厚みが増した印象だ。
痴漢による有罪が確定するということは、殺人が不可能だったと立証されるのと同義。
黙っていれば良かったものを、あえて殺人の痕跡をひけらかす江原のスタンスに最初は疑問を持つものの、背景を知るにつれ、いじめの主犯格を罪に問えない法の無能さを嘲笑うという彼の目的に、正当性すら感じてしまう。
それは、"正義とは"というテーマに広げられていて、八神の正義、桑名の正義、相馬の正義がそれぞれ交錯。
作品の性質上悪役となっている相馬ですら、その主張も理屈としてわからなくはないものになっている。
ヒロインであると信じて疑わなかった澤先生の犠牲は、前作の新谷弁護士以上にショッキングだったが、それがなければ桑名に共感するプレーヤーも多かったと思われるし、相馬が一線を越えたと明示する必要もあったので、ストーリー展開上は仕方がなかったか。
ヒロインの座を奪われ影が薄くなった真冬も、ラストではしっかり仕事を果たして、すべてが救われたわけではないにしても読後感は悪くない。
有罪になりたい江原に控訴の同意を取り付けたり、最後の自白を呼び起こすシーンなど、やや強引さを感じてしまう部分はあれど、証拠で追い詰めるタイプのアドベンチャーゲームではないので、ここでのどんでん返しを求めすぎてもいけないのだろう。
もう少し突き詰めても良かった点としては、八神が桑名や相馬の正義を否定する根拠の部分。
澤先生に固執しているだけに見えてしまった部分もあり、事前に彼の譲れない正義を語る場があっても良かったか。
それと関連して、こんなにもシリアスで緊急度も高い事件を調査している中でユースドラマにのめり込むのも、やや勢い任せで必然性に欠ける。
特に暴走族にまで潜入して毎晩デスレースに興じていたとなると、やっていることの本質は相馬と同じになってしまうのでは。
もっとも、"では時系列がおかしくなるサイドケースはやめて、骨太なストーリーゲームにしましょう"となるのは「龍が如く」シリーズを含めての損失だとも理解しているので、ある種のパラレルワールドを楽しむゲームとして割り切るべきなのだが、"本作のキムタクは小賢しいスカしたキャラではなくて、正義感の強い人情派だよ"と序盤で明示されるシーンがあれば、より強靭になっていたのかなと。
この辺りは、「龍が如く」シリーズをあまりプレイしていない故、木村拓哉ブランドに引き摺られている可能性はあるので、いよいよ「龍が如く」本編をプレイしなければいけないな。
この世界観から抜け出したくないな、と思っていたら、DLCがあるようで。
海藤が主役のスピンオフ的な展開とのことで、これもやっておかねば。