【ADVゲームレビュー】ZERO ESCAPE 刻のジレンマ / PlayStation 4 (2016)
ZERO ESCAPE トリロジーパック / PlayStation 4
2016年にリリースされた"極限脱出"シリーズの完結編。
あらすじ
謎の人物"ゼロ"によって地下核シェルターに閉じ込められた9人。
実験施設Dcomでの共同生活がはじまってから、6日目のことであった。
脱出するには、エレベーターホールに向かう"Xドア"に6つのパスワードを入力する必要があるが、そのパスワードは、人がひとり死ぬたびにひとつ公開される仕組みだという。
強制的にデスゲームに巻き込まれた彼らが選ぶのは、協力か裏切りか。
全人類の未来を彼らの決断に委ねるというゼロの目的とは。
概要/感想(ネタバレなし)
第一弾の主人公&ヒロインであった、淳平と茜、同じく第二段のシグマとファイが導入時からメインキャラクターとして登場。
従来は、主観人物を淳平やシグマに固定したうえで、誰とチームになるかの組み合わせでシナリオを分岐させていくスタイルであったが、本作では、カルロス、Q、ダイアナという新キャラ3人がそれぞれリーダーとなり、チームメンバーを固定。
俯瞰映像により、各チームの動きを見守る形で物語が進む構造になっている。
本作より、"極限脱出"というワードがタイトルから外され、シリーズ名が"ZERO ESCAPE"に改められたのは、従来通りの脱出ゲームをこなしていくスタイルは踏襲された一方で、リーダーが生命与奪の判断を握るDicisionパートなど、それ以外の要素でバリエーションが増えたことを受けて。
CinemaパートもフルCG化しており、世界観はより重厚になっている。
個人的には、テキストを読んだら台詞の途中でもスキップして、その分先に進みたい派なので、未読分は早送りできない仕様はストレスになった部分も否めないのだけれど、著しくテンポが悪くなったわけではなく、これを改悪なんて言おうものなら罰が当たるだろう。
また、シナリオも時系列順にこなしていくのではなく、その時点で解放されている断片を自由に選ぶスタイルなのも、ゲームシステム上の大きなチャレンジ。
序盤はブツ切りでとりとめなくディシジョンゲームに挑戦させられている印象で、ストーリーへの没入感が弱かったのだが、後半になって、物語の順序が見え始めると一気にアクセルがかかるので、しっかりイメージ回復。
フラグ回収のために無駄に何度も同じシナリオを見る必要がないのは嬉しい。
パズルの難易度にムラがなくなり、脱出ゲームとして洗練されたうえ、シナリオのドラマ性が大幅に深化。
ゲームバランスが良くなったと言え、ストーリーの展開上、単体で遊ぶのには馴染まないものの、前作をプレイしていたら絶対にやっておくべきゲームだろう。
総評(ネタバレ注意)
ADVゲームにおいて、一度だけでなく二度も叙述トリックに騙されるとは。
前作までとの違いとして視点人物を持たない本作。
それは何故か、という点を深掘りしていけばタネに気が付けたのかもしれないが、カムフラージュが完璧すぎる。
3チームに分けられ、全シナリオに共通して登場する人物がいない時点で、そもそも視点人物の不在に疑問は持たなかったし、謎の少年や老犬・ガブの存在が、会話の中での違和感をプレーヤーに与えないトリックの一部になっている。
ゲームの特性を上手く使って、視点人物の存在を見事に消してしまっていたのだ。
もちろん、トリックによるインパクトだけではなく、シナリオ全体の深みやメッセージ性も圧巻。
第二段のストーリーに繋がる過去を描くカルロスチーム、逆に第二段のストーリーの先を描くダイアナチーム、全員が新キャラで構成されたことでどちらに転ぶか読めないQチーム、と設定こそ複雑であるが、多くの伏線を回収して、概ね満足の行く結論にまとめていたな、と。
強いて言うなら、強い使命を持って過去にやってきたはずのシグマとファイに、あまり戦略性が感じられず受け身に回っているのが惜しいのと、第二段のエンディングで四葉やアリスが現代に帰ってきそうな伏線があったのに言及されずに終わってしまったのが消化不良というぐらいかな。
SHIFTが出来ないはずの黒幕が、歴史ごとに異なるパスワードを設定できたということは、長い時間をかけてトランスポートをしまくったということだと思うのだけれど、そのたびに彼の数が増えているのを想像すると、なんだか面白い。
凄く雑に言うと、第二段で辿った歴史は、「STEINS;GATE」シリーズにおける「STEINS;GATE 0」の世界線。
トゥルーエンドではない歴史における未来のエピソードで、STEINS;GATE世界線に向かうために過去に干渉しようとしたのが本作の位置づけだとすると、わかりやすいかも。
奇しくも、このシリーズの第一弾がリリースされたのは、「STEINS;GATE」がリリースされたのと同じ2009年。
綿密に設計された多世界・タイムリープものの名作が、同時期に誕生していると思うと興味深いな。
なお、エンディングを迎えた後、任意のシナリオでファイルを開くと後日談のテキストを読むことができる。
これ、いくらなんでもわかりにくいので、クリア後にトップ画面におまけコンテンツとして追加されるぐらいでもよいのに。
(なんなら、これこそCGで作ってほしかったが。)
一応、シリーズはこれで完結となるようだけれど、いつか、エリック、ミラ、ショーンが過去を変えるスピンオフや、淳平や茜が狂信者を突き止める続編などもあり得そうな終わり方。
脱出ゲームとしての続編はなかったとしても、この世界観の延長線上の作品であれば、うっすら期待していてもいいものだろうか。
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