バロックの好きな3曲を敢えて今語る
コーナー化すると言っておきながら、二回目をやらないまま放置していた。
これを書いている現在、サブスクリプションサービスで聴ける音楽の中から、個人的に語りたい楽曲を抽出して、改めてそのバンドを聴くきっかけ作りにしようというコーナー。
第一回のLaputaに続く第二回は、バロックを選ぶことにしようかと。
2001年に結成し、2004年に解散。
2011年の無料ライブを契機に再始動となるも、2020年、Vo.怜の引退により無期限の活動休止となっている。
バロック、baroque、BAROQUEと表記が変わっていたことが象徴するように、体制や音楽性は大きく変遷していった彼らだが、5枚のオリジナルアルバムをはじめ、残された楽曲たちはいずれもクオリティが高く、衝撃的。
どうしても、ヴィジュアル系のタブーを踏み越えるスタンスで"お洒落系"時代を作った結成初期の勢いが真っ先に頭をよぎるが、確立した音楽性を早々と捨て、シューゲーザーやアートロック的なアプローチに取り組んでいた先見性の高さこそ、バロックの本質的な武器であったのだと思う。
キャラメルドロップス
彼らをこのコーナーでピックアップする際に躊躇したのは、サブスク上には、ベストアルバム「Complete Collection 2001-2004」の収録曲が、完全ではないこと。
CD盤には収録されている「あなくろフィルム」や「イロコイ」など、インディーズ時代の楽曲が軒並みカットされており、"バロック現象"を巻き起こした代表曲たちが対象外になってしまっている。
この辺りは、他の楽曲を聴いて気に入ったらCDを買ってみてね、としか言えないのだが、この「キャラメルドロップス」が生き残っていることには触れておきたい。
アルバム「sug life」にて再録されたヴァージョンに加え、2002年に発表された会場限定シングルでのアレンジも収録されているのがポイントで、冒頭での怜の掠れ声が、切ないバラードに添える感情表現として絶妙にハマっている。
インパクトを放っていた革命的な楽曲ばかりでなく、正当派の歌モノで評価を得られたのも、バロックが一足飛びに規模を大きく出来た要因のひとつ。
結成当初から「バラード」という仮タイトルで親しまれた名曲が、当時の形で聴けるのは、レア音源だったことを考慮せずとも嬉しいものである。
モノドラマ
再始動をしたbaroqueが、2012年に3枚同時でリリースしたシングルのうちの1枚。
後に、アルバム「ノンフィクション」にも収録されている。
この時期の彼らは、やりたことを追求しながらも、ポップセンスを高めるよう意識していて、ある種、大人になった彼らを示していたと言えるのでは。
はじめて聴いたときの耳馴染みの良さに、いよいよbaroqueがメジャーシーンで活躍するぞ、と胸が躍ったものである。
特に、この「モノドラマ」は、Gt.晃がコンポーズを担当。
ポップに弾むリズムの中に、彼が作曲したことがビシビシと伝わってくるお洒落なフレーズが詰め込まれていて、従来の音楽性からの正当進化としても受け止めることができた。
怜らしい歌詞や歌唱スタイルも相まって、懐かしさと新しさが混在。
この路線を深掘りしていく道もあったのだと思うが、晃の脱退により、結果的には、瞬間的な音楽性に留まってしまったのがもったいない。
尖った作品こそbaroqueである、というのも理解しつつ、精力的にシングルをリリースしていた2012年~2013年の作品群は、改めて評価されてもいいはずだ。
STARRY BOY
名義をBAROQUEに改めてからのアルバム三部作は、いずれもアート性が高い名盤である。
特に、純白のイメージを与える「PUER ET PUELLA」が好みなのだが、リードトラックと言える「STARRY BOY」なしでは語れない。
「PLANETARY SECRET」にて、情報量の多い立体的なサウンドを駆使して、新たな宇宙を創造しかねない境地へ辿り着いた彼らだが、ともすれば難解さを与えてしまいかねない音楽性にもなっていた。
しかし、この楽曲では、壮大なスケールを保ちながら、キャッチーさを両立することに成功。
人間が歩んできた歴史を、純粋さを軸に描く方法論として、瑞々しいバンドサウンドを取り入れたことが、共感に繋がっていたのではなかろうか。
乱暴に言えば、先行シングルでkenと組んだ影響か、L'Arc~en~Cielを源流とする白系サウンドに寄った感があり、ずっと先駆者的に突っ走ってきた彼らの行き着く先が、90年代シーンと近接するというのは、とても興味深い事実。
洒脱なサウンドに徹してきた彼らが奏でると、普遍的なアプローチでも新鮮に響いてしまうからズルいな、と。
事実上、1stアルバム「sug life」はベストアルバムである「Complete Collection 2001-2004」に包含されているので、彼らのアルバム作品は網羅的に聴くことが可能。
シーンを大きく変えるほどのカリスマ性を持つ怜の引退は惜しい限りであるが、その功績は、残した作品にしっかりと刻まれている。
子供の視点で、大人の世界を切り取っていた彼らが、大人の視点で、少年少女の純真性への憧れを描くようになるのだから、ある意味で、バロックの作品群は、怜&圭の成長記録でもあるのだろう。
インディーズ時代の楽曲が配信されていないのは、権利に関わる大人の事情というやつなのだろうが、もしかすると、"若い頃の自分は見ていられない!"なんて自意識が働いているのでは、と考えてみると少し微笑ましく思える。
毎度のことだが、必ずしも好きな楽曲ベスト3ではないので、悪しからず。
"1曲好きな曲は?"と聞かれたら、なんだかんだ、「曖昧ドラスチックナンバー」と答えてしまうもの。
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