【ADVゲームレビュー】CHAOS;CHILD / PlayStation3 (2015)
CHAOS;CHILD / PlayStation3
2014年にXbox One用のゲームソフトとして発表されて以降、PlayStation 4、PlayStation 3、PlayStation Vita等にも移植された科学アドベンチャーシリーズ第4弾。
思えばここまで長かった。
ひょんなことから、この作品が面白いと聞いてゲームをやり出したのが、だいたい1年前。
ただし、順番はちゃんと押さえておこうと「CHAOS;HEAD NOAH」からプレイスタート。
なんとなく終わらせてしまうのが惜しくて、だいぶ寄り道をしていたのだが、ようやく踏み切ったといったところである。
結論から言って、少なくとも直系のシリーズである「CHAOS;HEAD NOAH」はやっておいて良かったな。
未プレイでも面白い作品だとは思うが、"6年前"の事件が下地になっている部分が大きいため、あらすじぐらいは触れておきたいところであろう。
一方で、変えるべきところは変えてきた印象。
初代タクが引きこもりの設定で、終始陰鬱な雰囲気のホラーテイスト強めの作風だったのに対し、本作でのタクは新聞部や青葉寮に強い帰属意識があり、仲間や家族との和気あいあいとしたシーンも多い。
だからこそ、ポジティブからネガティブへの落差が激しく、裏切りや疑心暗鬼にじわじわと追い込まれていく展開が面白さに繋がっていたのかと。
ネットギークを賑わせたオカルト事象を膨らませて、陰謀論に持っていくのもシリーズのお約束。
本作において、それは"力士シール"が担った形である。
圧巻のテキスト量と、プレイ時間。
ハードルはかなり高くなっていたものの、章が進む度に驚くべき展開が待っていて、丁寧なシナリオで騙されたいミステリーファン向きのシナリオだったのでは。
更に、TRUEエンドの構成も見事であった。
主人公を宮代拓留から、尾上世莉架に切り替え、メインシナリオの先のストーリーを進行。
これまた、結末を少しいじっただけで展開が丸わかりだった「CHAOS;HEAD NOAH」におけるTRUEエンドの反省を踏まえて、ここにきて新たな種明かしがされるなどインパクトのある展開が待ち構えていて、まだ騙してくるのか、と唸らされる。
"考察"が滾るという観点では、本作のラストシーンは、シリーズ随一。
「STEINS;GATE」を越えてきたと見るファンがいるのも納得である。
【注意】ここから、ネタバレ強め。
ギガロマニアックスの能力が個性に応じて細分化したのは、いかにも続編らしいギミックであるが、それによりストーリーに深みが生まれている。
特に、パーソナリティを深掘りしていく個別ルートの充実度が物凄い。
まさか、香月華のキャラ設定が、そもそも能力への伏線だったとは。
各々の能力が、本編でも活かせていればなお良かったのだが、ゲーム全体でのボリューム感、および濃密な世界観を構築する意味では、間違った判断とは言えないはずだ。
個人的に失敗したのは、来栖乃々編。
ゲームの開始前に、アニメの公式サイトで登場人物の予習をしようと思ったのだけれど、トップ画像に来栖乃々がおらず、南沢泉理がそのポジションに。
CVも同じ、ということで、盛大にネタバレを踏んでしまった形。
公式だったらネタバレを踏むまい、と思っていたが、最終回が終わったアニメのWEBサイトは別なのだな……
後追いでのプレイは、このようなリスクがつきものであることを肝に銘じたい。
さて、ラストシーンである。
結局、世莉架は記憶を取り戻したのか。
言葉どおり、記憶は戻っていないとも受け取れるし、戻っているけれど拓留の想いを汲んで、そのような振りをしているとも受け取れる。
世莉架の存在意義が、拓留の願いを叶えるため、というところに立ち返れば、普通の女の子として生きてほしいという拓留の願いを受け入れて、嘘をついたと捉えたほうがロマンティックなのかな。
完全なハッピーエンドではなく、拓留の自己犠牲の中でのハッピーエンド。
この切なさは、従前のシリーズ作品では味わえなかった感覚で、想像力を刺激する、"妄想"をテーマにした本作にとって最高のクロージングだったのかと。
個別ルートをクリアするために、何度も同じ話をループしなければならないゲーム性については、昨今のアドベンチャーゲームと比較して不親切に感じるものの、プレイし終わったあとの喪失感を前にすれば、あの作業感すら愛おしいと言えるのかもしれないな。
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