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【ADVゲームレビュー】探偵 神宮寺三郎 PRISM OF EYES / Nintendo Switch(2018)

探偵 神宮寺三郎 PRISM OF EYES

第一作の発売から37年の歴史を誇る、ミステリーアドベンチャーシリーズの老舗における第18弾にあたる作品。


内容紹介


今、新宿を舞台に再び事件が巡る。
殺人、盗難、誘拐――…数多の事件が探偵を待ち受ける!

重厚な世界観から紡がれる奥深いストーリーはもちろん、そのハードボイルドな雰囲気の中で描かれる映像や音楽にも定評がある「探偵 神宮寺三郎」シリーズが、ついにNintendo Switchに登場!
お馴染みの「神宮寺三郎」「御苑洋子」「熊野参造」が主人公となって、それぞれの難事件を解決していく新作ストーリー3本と、本編とは一線を画したコミカルなタッチで贈るアナザーストーリー「謎の事件簿」を収録。

また、携帯アプリで配信されていた過去作10本をフルリメイク!
これまでとは違う新たな装いで、全14作品が楽しめる。

アークシステムワークス



解説/感想(ネタバレなし)


「JUDGE EYES:死神の遺言 Remastered」に続いてプレイしたのが、同じ歌舞伎町を拠点にする探偵の物語である"神宮寺三郎"シリーズ。
ともに2018年にリリースされていて、"EYES"まで重なっているのだが、まったくテイストが異なるから面白い。

本作は、前作の「GHOST OF THE DUSK」から僅か1年、新章に突入する「ダイダロス:ジ・アウェイクニング・オブ・ゴールデンジャズ」のリリースを半年後に控えるというタイミングで発表されており、深く作り込んだというより、区切りとなる決定版を送り込んできたといったところ。
新作3本に「謎の事件簿」1本、そして携帯アプリとして配信されていたシリーズのリメイク10本と、小説でいうところの短編集のような印象である。
1本あたり、2~3時間もあればクリアできてしまうので、個々のストーリーに喰い足りなさはあるものの、寝る前の隙間時間にプレイするにはちょうど良い塩梅だ。

ハードボイルドな世界観と、ジャズを基調としたBGMは変わらず、シリーズのファンにとっては安定の作品となる一方で、スマホありきのストーリーになる等、時代設定がアップデートされる中で硬派なスタンスが馴染まなくなってきた感は否めず、ロングセラー作品の難しさにぶち当たってきたのも事実だろう。
もっとも、警察の捜査に参画する私立探偵等、リアリティを追求してしまっては損なわれる老舗故の味わいもあり、それを否定するのもナンセンス。
短編ではあるが、シナリオの複雑性や重厚さは担保。
ある種のパラレルワールドとして楽しむのが吉か。

ゲームとしては、コマンド選択式の古式ゆかしいアドベンチャーゲーム。
推理パートはおろか、移動のタイミング等でもガイドが働く親切仕様で、基本的には立ち止まることなく進めることができる。
ゲーム体験として賛否はありそうだが、シナリオを重要視するノベル系ゲームの系譜としては、余計なストレスを発生させないという評価もできそうだ。
なお、新作とリメイク版では操作性が一部異なっていたりするので、ご留意を。



総評(ネタバレ注意)


ストーリーの感想については、新作3本について。
主人公である神宮寺三郎の視点で描くのは「虚飾ノ夜」。
旧友の朝倉との偶然の再会をきっかけに、とある組織から追われることになる神宮寺。
どんでん返しに次ぐどんでん返しで、人間関係もやや複雑になっていたことを踏まえれば、終盤の急展開はもう少し丁寧に描写しても良かっただろうか。
サスペンス色が強く、監禁場所からの脱出を図ることになる等ハードボイルド感がマシマシで、他の作品と毛色が異なっている。

御苑洋子が主役となるのは「死者に捧げる石」。
浮気調査と連続猟奇殺人事件がオーバーラップしていく不気味さが魅力的で、バラバラだった関係者がひとつの事件に集約していく。
もったいないのが共犯者かな。
ミステリー的に、実行犯は既に登場した人物の中にいてほしかったし、重い罪を肩代わりするような立場になっているのが、あまりに不遇すぎるでしょと。
ちなみに、助手とはいえ探偵がファッションモデルになってしまって、本業に支障をきたさないのだろうか、と無駄にヒヤヒヤ。
顔が売れる前に事件が終わって良かった良かった。

最後に、新宿署の警部・熊野参造が視点人物となった「魔鏡の真実」。
こちらは、発掘された呪物と、不可解な死亡事故との関係性を探るオカルト的な要素があり、ハードボイルドな神宮寺シリーズの中では、本格ミステリー寄りの設定と言えるだろう。
ただし、組織の腐敗に繋がっていく重厚な展開は、やはり神宮寺シリーズ。
探偵の捜査の付き添いに警部が駆り出されるのはさすがに無茶設定すぎると思うものの、警察の良心として、彼らのチームにはぜひ頑張ってもらいたいという気にはさせられる。

ボリュームについては、前述のとおり、とんとん拍子にいきすぎる感はあって、リメイク作と並べたときに、シナリオとして飛び抜けてはいないかな。
個々のリメイク作の感想は割愛するが、絵柄は差し替えられており、古臭さはある程度解消。
携帯アプリの移植版にありがちなシナリオの細切れ感はなく、新作と地続きでプレイできるのは、何気にありがたいポイントだ。
それだけに、新作にインパクトが欲しかったというのが本音。
新作を1本に絞って、短編3本分のボリュームを持たせていれば、ゲーム全体の印象や満足度も変わっていたかもしれないのだが。

新規ユーザーに薦めたいかと問われると難しい部分はあるものの、セールのタイミングを狙えば必ずしもコスパは悪くない。
懐かしいなと感じた世代は、新作・リメイク作の区別はあまり意識せず、気になったタイトルからプレイしてみても良いのでは。

#全力で推したいゲーム

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