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起業欲ゼロだった自分が共同創業を通じて、日本発のグローバル養殖魚ブランドを創出し水産業界に変革をもたらすことに挑む -CMO 石崎勇歩

はじめまして。
2023年7月にさかなドリームという東京海洋大学発の水産スタートアップを共同創業した、CMOの石崎 勇歩(いしざき ゆうほ)と申します。

CEO細谷に続き、まずは私たちのことを通して、さかなドリームを知っていただければ幸いです。


自己紹介・経歴

私のファーストキャリアはサントリーから始まったのですが、学生時代は漠然と、”将来は海外で活躍したい”という思いがあり、就職活動では商社やエネルギー関連の会社を中心に志望していました。
そんな中、大阪でたこ焼き屋を経営している父親から、「サントリーの営業マンは明るくて素晴らしい人が多いよ。受けてみれば?」と言われたことがきっかけで、”ちょっと受けてみようかな”と、それこそ軽い気持ちで選考を受けてみることに。
結果的には、とんとん拍子で選考は進み、自身との相性の良さを感じたことと内定というご縁をいただいたことで、サントリーに入社することを決断しました。

(父親の経営するたこ焼き屋でサントリーへの入社を決意した大学生の自分)

入社後は業務用営業(飲食店向けのビール開拓営業)や海外事業開発、ブランドマネージャーなど多岐にわたる業務を経験させていただきました。特に、アメリカで担当した日本のウイスキーを現地に広める取組みについては、新たに市場を創造することの面白さと難しさを同時に経験することができました。
サントリー退職後は、フードテック系のスタートアップ複数社でマーケティング関連の仕事に従事し、「食」×「マーケティング」という強みを様々な経験から築いてきたと考えています。

起業という選択肢が生まれたターニングポイント

まず私の場合、昔から起業を考えていたわけではなく、むしろ就職活動を通じて周囲の人から聞く「起業したい」という想いに、「なぜそんなに起業したがるのか?」と疑問に感じていました。それは、シンプルに大企業の方が社会に大きなインパクトを与えることができるし、その方が早いのでは?と考えていたからです。
しかしその後、そんな自分の考えが180度変わる経験をしました。
それは、あるプロジェクトへの参画を通じて、いくら裁量権があるといっても、イチ社員である自分が成果に繋がる行動を起こしたところで、経営陣の性質や力量によって、会社・事業は良くも悪くも変化する(前提が変わる)ことを経験しました。もちろんそのプロジェクトは失敗に終わり、コントロールできることとできないことがあることを知り、本当の意味でコントローラーになれる『起業』という選択肢が生まれました

さかなドリーム創業の経緯

『起業』という選択肢が生まれたものの、経営者(チーム)とは事業、財務、組織など様々な領域に精通している必要があります。しかし、私はマーケティングや営業などのフロント業務以外の経験はなかったため、自分一人で起業しても成功しないだろうという確信がありました(笑)。
そんな中、上述したプロジェクトを共に推進し、信頼していた同僚の細谷となら、優れた経営チームを組めるのではないかと考え、彼を起業に誘いました。

細谷は、私に欠けているスキルを非常に高いレベルで持っており、働く上での価値観も極めて近かったため、起業する際のパートナーは彼しかいませんでした。
しかし、そんな私の気持ちとは裏腹に私の誘いにあまり乗り気ではなかった細谷を、毎日のランチタイムに「チャレンジしてみようよ!」と声をかけ続けた結果、私の情熱に乗ってくれることとなり、具体的に検討することになりました。

起業するにあたって、①食の領域で起業すること、②生涯をかけて取り組みたいと思えるような事がしたいという思いを持っていました。
様々なアイデアを検討していく中で、大きなビジネスインパクトを社会に示すためには”圧倒的な技術”を核にした事業展開が必要であるとの結論に至り、細谷の前職の同僚であり、革新的な技術を持つ大学発のスタートアップを支援するBeyond Next Ventures株式会社のパートナーである有馬さんに「良い技術があれば紹介してもらえないか?」と相談しました。有馬さんからのご紹介で100以上の技術シーズを探索する中で、吉崎・森田と出会い、彼らが持つ技術や事業コンセプトに強烈に惹かれ、すぐさまアプローチをすることになりました。

初回の面談では、私たち二人が吉崎から警戒されていたこともあり、非常に緊張した雰囲気が漂っていましたが(笑)
半年かけて二人にラブコールを送り続けた結果、2023年7月にさかなドリームを共同創業するに至りました。

さかなドリームで実現したいこと

実現したいことは100個以上あるのですが、その中から今回は3つ、お話させてください。

① 世界一旨い魚を創り、届ける

まずは何といっても、世界中の人々に「感動の魚食体験」を提供していきたいと考えています。自然と口から「旨い!」が飛び出すような美味しい料理を食べると、「明日も頑張ろう!」と前向きな気持ちになれます。そんな、日々の喜びに私たちの魚が貢献することができれば、こんなにも嬉しい瞬間はありません。
実は、さかなドリームを創業する前に、創業者4名で「どんなことを達成できれば嬉しいか?」というテーマで丸一日議論したことがあります。最終的には、「三ツ星のお寿司屋さんで、誰かが我々の魚を食べて「旨い!」と感動している瞬間に出くわす。」という意見で一致しました。その方が美味しそうに魚を食べる姿を見て、4人で静かに涙を流そうと語り合いました(笑)。

②日本のプレゼンスを高める

「今よりも悪い未来で子供達が生きていかないといけない。」と考えた時に、少し申し訳ない気持ちになりました。それくらい、日本の将来に関するニュースは、最近暗いものばかりです。
そんな状況に対し、私個人が世の中の課題を解決することは(当然)不可能ですが、当社の事業を通じて、国内水産業の魅力を世界に発信し、日本のプレゼンス向上に繋げていきたいです。

私は、日本が世界に誇れるものは「Quantity」ではなく「Quality」だと考えています。日本の水産業は最近では苦境に立たされているものの、本来は「多様な魚が生息する豊かな海」「高度な養殖ノウハウ」「優れたコールドチェーン」「世界で愛される食文化」など世界屈指のQualityを多く有しています。これらの強みを最大限に活かし、当社の魚を世界中に広めることで水産業を代表するグローバルプレイヤーに成長し、次世代に少しでも明るいニュースを残していきたいと考えています。

③ ワールドカップで優勝したような熱い抱擁を交わす

少し個人的な話をすると、私は小学校2年生の時からサッカーをずっと続けていて、小学校の時は「プロサッカー選手になる。」などと言っていましたが、中学生位には(いつの間にか意識することもなく)諦めていました。けれども、ワールドカップでは毎回、世界を相手に戦う選手を見ると「かっこいいなぁ」「熱いなぁ」と感じていました。
振り返ってみると、これまでの社会人経験において非常にやりがいのある仕事を経験させていただいたことは間違いないですが、誰かと喜びの余り抱擁するようなレベルのことはありませんでした(笑)。
しかし先月、ある大型補助金の採択通知を受け取った際、「これで自分たちの研究開発をドンドン進めることが出来る!」と弊社代表の細谷と共に、思わず大声で叫びながら3回ほど抱き合いました(笑)。こんな熱い瞬間を、チームのメンバーや水産業界の方々と沢山経験していきたいと思っています。

私たちの会社は創業したばかりで、今は技術とコンセプト以外には武器がありませんが、多くの企業様から期待を寄せていただいています。ある水産卸の役員の方からは、「さかなドリームの事業構想は10年、20年かけて花を咲かせるもの。道のりは長いが、養殖業界を前に進めるために一緒に取り組んでいこう。」とのお言葉を頂戴し、身が引き締まる思いでした。このような方の期待に応え、一緒に喜びを分かち合えるシーンを少しでも多く、一日でも早く実現していきたいと考えています。

どんな組織にしていきたいか

当社が掲げる「行動規範」を徹底することは当然として、その上で①「心理的安全性」と②「朝礼暮改」を大切にしていきたいです。

①心理的安全性

当社の事業を発展させていくには、研究開発とビジネスの両輪が上手く噛み合って価値を創出することが非常に重要です。多様なバックグラウンドを持つメンバーが、一つの目標に向かって努力することが求められますが、そのためには忌憚なき意見をフラットに言い合える環境が必要です。
「心理的安全性」の重要性が叫ばれる一方で、様々な社会背景から厳しい意見を率直に交わし合うことが難しくなっている傾向があるように感じます。しかし、本当の心理的安全性とは、「厳しい意見を述べ合っても、それは相手の人格を否定するものではなく、より良い結果を掴むための健全な議論である。」という共通認識を組織が共有できていることです。
今はまだ非常に小さい組織ですので、新しくチームに加わったばかりのメンバーから「石崎(さん)案は理解しにくいので、私が修正しても問題ないですか?」といった率直な意見が自然に出る環境がありますが、このような環境を、組織が拡大してもしっかりと維持していきたいと考えています。

②朝令暮改

当社は、ノルウェーサーモンに匹敵するような「グローバル養殖魚ブランド」を複数生み出していきたいと考えています。このような大きな目標を達成するには、非連続的な成長が不可欠であり、そのためには、自らの意見に固執するのではなく、常に新しいアイデアを取り入れることが求められます。実際、チーム内で議論する際に、誰かが良いアイデアを出すと、以前は反対していたメンバーが考えを変え、自らの提案かのように話す場面がよくあります。私自身も、誰かが提案した意見を後日、その発案者に対して熱心に語っていることもあります(笑)。
このように、自分の考えに決して固執せず、常に最良の選択ができるように心がけていける組織でありたいと考えています。

CMO石崎の役割

当社はまだまだ小さな組織ですので、魚への餌やりや水槽掃除なども私の日々のルーティンに含まれますが、CMOとしての役割は大きく二つだと考えています。

① 継続的な売上・利益の創出

私の最も重要な役割は、持続的な売上と利益を創出していくことです。当社のビジネスは突き詰めると「メーカー」であり、中長期的な収益の基盤はブランドづくりとなります。お客様との関係を大切にし、価値提供を通じて多くの人に愛されるブランドを構築する必要があります。そんな強固なブランドを築く第一歩は、顧客のニーズを深く理解し、需要のある商品を開発することですので、研究開発や生産チームと連携し、「従来の常識を覆すようなずば抜けて旨い養殖魚」を開発できるように取り組んでいきたいと考えています。

② お客様視点の浸透

当社の行動規範の一つである「お客様の視点に立脚する」を全社に浸透させることも重要な役割だと考えます。真に良い商品を開発し提供していくためには、マーケティング部門だけでなく、全社がお客様視点を持つことが不可欠です。日々の研究開発や生産活動が、自己中心的なものにならず、最終的にはお客様に価値を提供することが目的であるという考え方を、組織全体が理解し、実践できるように徹底していきたいと思います。

グローバル養殖魚ブランドの創出を目指して


さかなドリームが目指す養殖魚のグローバルブランドとは、私たちが生産する養殖魚が世界中で流通し、人々の食卓における当たり前の選択肢となる状態を指します。

現在、海外では日本の水産物は主に寿司市場を中心に販売されています。しかし、先日アメリカに約1カ月滞在した際、寿司市場は水産物市場全体のまだほんの一部に過ぎないことを強く実感しました。つまり、私たちが目指す「グローバルブランド」を築くためには、現状の限られた市場でシェアを争うだけでは不十分であり、日本の魚を広めるために新たな魚食文化を創造する高い志が求められるということです。

(アメリカ視察の際に立ち寄ったWhole Foodsの鮮魚コーナー。サーモンが全体の半数以上を占めていました。)

今でこそ人気の寿司ネタランキングで不動の1位を誇るサーモンは、新たな魚食文化の創造によって生まれた代表例だといえます。30年前、「鮭を生で食べる」という発想は日本では一般的ではありませんでした。しかし、ノルウェーが国を挙げてマーケティング活動を行った結果、「サーモン=寿司の定番ネタ(=生で食べるのが一般的)」という地位を確立するに至りました。
このように新たな魚食文化を創る取り組みには、粘り強いマーケティング活動が必要ですが、それゆえに面白さがあり、成功したときのインパクトも絶大です。

さかなドリームも、新たな市場を世界中で開拓し、マーケットの規模とシェアを同時に拡大することで、「日本発のグローバルブランド」という大きな目標を実現したいと考えています。

さいごに

「大学発ディープテック系」と聞くと、多くの方が「研究者」が主役の企業だと感じると思います。実際、私も最初はそのように考えていました。
しかし、当社のビジネスに関して言えば、革新的な技術を駆使して圧倒的に優れた養殖魚を開発することは、最終目標に辿り着く上での5合目と言えます。優れた養殖魚を生み出し、その価値を広く発信し、新たな魚食文化を育むことが、当社が描く構想です。研究開発や養殖生産の領域だけでなく、マーケティング、PR、営業などの多岐にわたる領域で活躍する機会が多くありますので、興味をお持ちの方がいらっしゃいましたら、ぜひ一度お話ししましょう!

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