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【開催レポート】『チリメンモンスターをさがせ!』大人のサイエンス・ラボ in SAKANA BOOKS

2024年11月23(土)開催、『チリメンモンスターをさがせ!』大人のサイエンス・ラボ in SAKANA BOOKSのレポート記事です。

イベントについてはこちら🐟(終了しています)


謎のエイリアン?!(撮影:SAKANA BOOKS)

「うわ~、なにこれ?!」

そんな声が飛び交う、東京・新宿のとある一角。
イベント参加者たちは、熱気むんむんで手元をのぞき込みます。

なにをのぞきこんでいるのかな(写真提供:~travelling museum~ 博物倶楽部)
ちりめんじゃこ!...…以外も混じってる?(撮影:SAKANA BOOKS)

私たちが普段食べている、美味しいちりめんじゃこ。
海で獲れた時には、実は別の種類の生き物が混ざってしまうことがあるんです。

今回は、そんなちりめんじゃこに混じった小さな生きものたち、通称「チリメンモンスター」(※)を探すイベントの様子をお届けします!

※「チリメンモンスター(略称:チリモン)」はきしわだ自然友の会の登録商標です(区分41類・第5289688号)。

ちりめんじゃこに、沢山のチリメンモンスター。わくわくしてきたっ(撮影:SAKANA BOOKS)

まずは座学。ちりめんじゃこについて学ぼう!

今回イベントはSAKANA BOOKSの2階で開催しました。全面協力をしてくださったのは「~travelling museum~ 博物倶楽部」さん。
首都圏近郊の市民でつくるサイエンスボランティアサークルです。

~travelling museum~ 博物倶楽部についてはこちら
https://hakubutsuclub.com/

博物倶楽部の魚類担当、久保徹郎さんが今回の講師を務めます。

皆さん興味深々です(撮影:SAKANA BOOKS)

今回は大人向けのワークショップということで、座学パートも充実!

私たちが食べているちりめんじゃこ。なんという種類の魚を原料にしてつくられるのかご存知でしょうか? イワシの仲間かな、ということまではわかる方も多いかもしれません。その主な正体はカタクチイワシ

マイワシなどに比べ、下顎が小さいため上顎がにょきっと目立ち、口が片方しかないようにみえることが名前の由来ともいわれるそう(気になる方は検索してみてくださいね)。
ニシン目カタクチイワシ科に分類されるカタクチイワシが、ちりめんじゃこの主な原料になっています。

【チリモン講師おすすめ選書より】(左)長嶋祐成『THE FISH 魚と出会う図鑑』(河出書房新社):SAKANA BOOKSで人気の本。表紙に描かれているのはカタクチイワシの仲間!/ (右)矢田勝美『いのちをつなぐ海のものがたり -未来に続く、いのちの循環』(ラトルズ):漁師の娘という目線で綴られたエッセイとイラストから山と海のつながりを考える一冊。(撮影:SAKANA BOOKS)

座学ではまず、そもそもちりめんじゃこって?その原料はなに?というところからイワシ類の仔稚魚(シラス)をはじめ、カタクチイワシの一生を紹介したり、その漁獲方法や製法を説明したりと、チリメンモンスターと切っては切れない関係の「ちりめんじゃこ」への理解を深めます。

【チリモン講師おすすめ選書より】坂本一男 監修『漁業国日本を知ろう 近畿の漁業』『漁業国日本を知ろう 四国の漁業』(ほるぷ出版):近畿では岸和田のシラス漁、四国では伊吹島のカタクチイワシ漁が、写真とわかりやすい解説で紹介されています。漢字はふりがな付きのため、大人のみならずお子さんでも楽しく漁業について学べますよ。(撮影:SAKANA BOOKS)

その後は多様なチリメンモンスターたちの紹介も。参加者の皆さん、楽しみつつ熱心に解説を聞いている姿が印象的でした。


そしてついに、チリメンモンスター探し(以下チリモン探し)の実践です。

ちりめんじゃこ、虫眼鏡、ピンセット、ワークシート、図鑑が配布されます(撮影:SAKANA BOOKS)

通常のちりめんじゃこは異物をできるだけ取り除き、食べるうえで安心安全な状態で売られています。
ですが今回は特別に、ちりめんじゃこの製造工程ではじかれたチリモンをあえて寄せ集め、チリモンさがし専用(食用不可)の試料を用意していただきました。

ざざっと広げていきます(撮影:SAKANA BOOKS)

手元に広げたちりめんじゃこからチリモンを選り分けます。これがまた楽しい!皆さん自然と集中し、もくもく無心で作業していました。

皆さん集中して作業しています(撮影:SAKANA BOOKS)

筆者もすこし体験させていただきましたが、チリモン探しはずっとわくわくと驚きの連続です。楽しすぎて時間が足りない!という声もちらほら聞こえていました。

魚類、イカ・タコ・貝類...…と見た目からわかる範囲で、大まかに分けていきます。

ちりめんじゃこから、チリモンを探せ!まずは魚類・イカ・タコ・貝類……と大まかに分けていきます(撮影:SAKANA BOOKS)

大まかにチリモンの種類を分けたあとは、『海のミクロ生物図鑑 チリメンモンスターの中に広がる世界』(仮説社)(クリック→SAKANA BOOKSオンラインストアへ)を使用して、種類を調べてきます。

こちらの一冊が、今回使用した図鑑。SAKANA BOOKSでも販売中。(撮影:SAKANA BOOKS)

「この図鑑を使ってどうやったらうまく調べられるの?」「このチリモンはこの種類で合っているの?」などチリモン探しに関する専門的な内容を、参加者の皆さんは講師の久保さんや博物倶楽部のスタッフさんたちへどんどん質問していきます。

自宅でチリモン探しをしても、この「種類を絞る、同定する(種類を特定する)」という工程が難しく、挫折する人も多いと思います。
しかし今回はチリメンモンスターに詳しい講師たちに気軽に質問ができる環境のため、まさにチリモン探し入門にうってつけのイベントなのです!

参加者の方が見つけたクチキレウキガイの仲間。生まれたときから死ぬまで海中に浮かんで生活する浮遊性の巻貝で、この個体の大きさは約3mmほど。とっても小さいのに美しい構造!内臓や頭、眼などが透けて見えます。(撮影:SAKANA BOOKS)

チリメンモンスターを一部紹介

以下筆者が見つけたチリモン達を少し紹介します。

こんなに沢山のチリモンが!大きさは1~3cmくらい。可愛らしいサイズ感でテンションが上がります。(撮影:SAKANA BOOKS)
魚に混じって、甲殻類の仲間も沢山入っています。中心の魚はハタの仲間みたい。背中の長い棘で沈みにくくなることで浮遊生活に適していたり捕食者から身を守ったりすると考えられるそう。(撮影:SAKANA BOOKS)
細長い系の魚たち。手前の大きいのはタチウオの仲間、真ん中とその上はヨウジウオの仲間かな?(撮影:SAKANA BOOKS)
ヨウジウオの仲間のアップ。かわいいです。(撮影:SAKANA BOOKS)
ひょろひょろした謎の生き物!正体はヤムシの仲間でした。海洋の動物プランクトンのなかでも量的に多いグループで、食物連鎖を支える重要なメンバーとのこと。左側が頭で、顎毛(がくもう)という牙のようなものも確認できます。肉食性。格好いい。4~5mmほど。(撮影:SAKANA BOOKS)
このまるでエイリアンのような見た目のチリモンは、甲殻類、セミエビの仲間のフィロゾーマ幼生。葉っぱみたいに薄い体でふよふよと海中を漂いつつ捕食と脱皮をくりかえして成長し、海底に着底してから最終的に見慣れた姿の稚エビになるそう。彼らの知られざる子ども時代を目の当たりにしちゃいました。1cmほど。(撮影:SAKANA BOOKS)
中央の赤味がかった生きものはイカの仲間。タコの仲間は8mmくらいをこえる大きさになると海底で暮らし始めるため、大きい個体はチリモンには混ざりにくいそう。一方イカは孵化して大人になっても遊泳生活をおくるため、さまざまなサイズがチリモンに混ざるみたいです。2cm弱ほど。(撮影:SAKANA BOOKS)

奥深きチリメンモンスターの世界からみえてくるもの

眺めているだけでもわくわくしますし、こんな生きものがいるんだ!という驚きと感動がじんわり心の中に残ります。

一方でイベント中、直径1~2mmほどの透明な球体もちらほら見つかりました。その正体は、マイクロプラスチック。自然の物ではなく、人工物です。

また記事の中盤に紹介した貝類、クチキレウキガイの仲間は殻が非常に薄いため、二酸化炭素の排出にともなう海洋酸性化がすすんだ場合は、石灰質の貝殻を育てられなかったり保てなくなったりする可能性があるそう。

チリモン探しの体験が、他人事のようにも思えていた海のゴミなどに関する環境問題を身近にとらえられるきっかけづくりにもなることがわかります。

イベント中実際に見つかったチリモンを拡大投影し、講師の解説が聞けちゃいます。贅沢な時間です!スクリーンに映っているのはウミノミの仲間みたい。(撮影:SAKANA BOOKS)

関連書籍も充実

そんなこんなで、あっという間にイベントは終了。チリモン探しを楽しんでいただけてよかったです。
今回参加者の皆さんにはお土産としてチリメンモンスターをお持ち帰りいただきました。

博物倶楽部の講師 久保さんが選書してくださった「チリメンモンスターへの理解を深める本」特設コーナー(撮影:SAKANA BOOKS)

SAKANA BOOKSの店舗では、博物倶楽部の講師 久保さんが選書してくださった「チリメンモンスターへの理解を深める本」が並びました。

【チリモン講師おすすめ選書より】(左上から時計回りで)井田齊 監修、西田百代 著『海のミクロ生物図鑑 チリメンモンスターの中に広がる世界』(仮説社)/きしわだ自然友の会 編著『チリモン博物誌』(幻戯書房)/ きしわだ自然資料館 他監修『チリメンモンスターをさがせ!』『チリメンモンスターのひみつ』(偕成社)(撮影:SAKANA BOOKS)

気になる本がありましたら、SAKANA BOOKSにてお求めいただけます!(タイミングにより売り切れの場合もございます。お気軽にお問い合わせください)

博物倶楽部さんが作成した、チリメンモンスターへの理解を深めるための参考文献や施設がまとめられたリーフレット。SAKANA BOOKSでも配布中です(在庫に限りあり)!(撮影:SAKANA BOOKS)

なかなか自分ひとりでは種類までわからないことが多い、チリメンモンスターたち。今回博物倶楽部の皆さんの協力により、参加者の皆さんにディープかつわかりやすく、チリメンモンスターの世界を楽しんでいただくことができました。

今回は大人向けでしたが、お子さん向けのイベントもぜひ!という声もいただいています。博物倶楽部の皆さんと、今後の企画についても検討させていただければと思います。

今後もSAKANA BOOKSでは、水生生物にまつわる多様なイベントを開催していく予定です。皆さまのご参加をお待ちしています!
またチリメンモンスターに限らず、博物倶楽部さんは楽しい科学ワークショップイベントを多数開催しています。気になる方はぜひチェックしてくださいね。
最後にご参加者の皆様、博物倶楽部の皆さん、ありがとうございました!

~travelling museum~ 博物倶楽部さん執筆、当日の活動報告記事です。
こちらもぜひご覧ください🐟
https://hakubutsuclub.com/?p=1907  


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