バニシングポイント(消失点)
皆さんもご存知の通り、線路の2本のレールは実際にはどこまでも平行なのですが、人間の目には遠くで交わっているように見えます。
実際には存在しないのに交わって見える点、これが「消失点」です。
そんな消失点をテーマに描かれたアメリカンニューシネマ3作品のご紹介
🔴その1、ピーターフォンダの代表作としても知られている作品
『イージーライダー』1970年公開
1960年代、自由を求めてオートバイに乗り旅に出た彼らを待ち受けていたのは、保守的な南部の偏見だった。マリファナ、人種問題、ベトナム、反体制運動の激化など病めるアメリカの悲劇を徹底的に暴き、世界に衝撃を与えたアメリカン・ニューシネマの代表作です。
既成の社会体制や価値観を否定し、脱社会的行動をとった若者たちを象徴する映画です。
ラストシーンを見終わった後のやり場の無い虚無感はそれまで映画では味わったことのない感覚でした。
🔴その2、ベトナム戦争に疲弊したアメリカで作られた映画
『バニシングポイント』1971年公開
この映画は車を走らせることに明確な理由もなく、あるはずのない消失点(バニシングポイント)に向かってひたすら高速で走り続けるロードムービー、カーアクション映画です。
当時、精神的に病んでいた多くのアメリカの若者を象徴的に描いた映画と言っても過言ではありません。
映画では、「この先にきっと自分の求めているものがあるはずだ」と思う虚しい錯覚を描いています。
現実の決まり事を無視して走ることにより、警察や様々な現実が襲いかかってきますが、それらを振り解きひたすら走り続ける爽快感と悲壮感は見るものの胸を締め付けます。
🔴その3、女性二人のロードムービー
『テルマー&ルイーズ』1991年公開
平凡な主婦と友人のウエイトレスの二人の女性の前に現れる男達がとにかくダメ男過ぎて、彼女達の苛立ちは次第に怒りへと変わっていき、ついには男を殺し、銀行強盗をし罪を重ね、犯罪者として追われることになる。
そして二人は車でメキシコに逃げようとするのだが・・・・・
この映画が作られた1991年は湾岸戦争で始まり、年末にはソビエト連邦がが崩壊した年だ。
時代が大きく変わろうとする中で、女性達もまた、大胆に変革していけると錯覚するが・・・・・・・
そんな時代を象徴する作品の一つだと言えます。
以上の3作品に共通するのは、
現実と虚構の間に生きる人間の錯覚と悪夢を映像化したようなロードムービー。
これらの作品の内容は、反社会的でしかも全てバッドエンド。
このリアリティーが当時世界中の若者に支持されました。
あるはずもない消失点に向かって直走る人々、彼らが向かうゴールとは「自らの消失」というゴールです。
いずれもベトナム戦争の終末のバッドエンドの虚しさとオーバーラップする映画でした。
成願義夫