人間は年齢を重ねると、なぜ感動が薄れるのか?
さて、私の苗字は成願(ジョウガン)です。
しかし、成瀬(ナルセ)と読み間違える人がとても多いのです。
これは、どうしてでしょうか?
実はそれには理由があります。
ある人がどこかで私と名刺交換して、私の苗字を成瀬だと読み間違え、私を成瀬さんだと思い込み、後に「この前、成瀬(ナルセ)さんに会ったよ」と、誰かに言ったとします。
その人にとってナルセさんと会ったことは事実なのです。
私の名前は成願(ジョウガン)だという真実よりも、その人にとっての事実がその人には優先されるのです。
このことを心理学の言葉で『羅生門効果(Rashomon effect)』と言います。
脳科学者も言っておられますが、人の脳は基本的に楽をしようとする性質があるのです。
脳は怠け者なのです。
だから、人の脳は未知のものに出会うと、まず、過去の似た記憶に置き換えようとします。
その結果、大人になった人間が毎日見聞きする情報のほとんどが過去の記憶の中にあることになります。
だから初めて見る「成願」を過去の記憶の「成瀬」に置き換えてしまうのです。喩えるならばこれは脳のキャッシュ機能ですね。
日常の中では、瞬時に判断しなければならない事はたくさんあるので、このキャッシュ機能はなくてはならない機能なのです。
しかし、この脳のキャッシュ機能が私たちの能力を高め、同時に下げていることを知っておく必要があります。
特に、年配の方に御忠告です。
なぜ、人は歳をとると感動することが減るのでしょうか?
答えは、もうお解りですね。
だから、できるだけキャッシュに頼らず毎日を生きることです。
脳は気づきによっても活性化されます。
実は私たちが今見ているものは全て初めて見るものなのです。
過去に見たものとは必ず異なっているのです。
ものごとは必ずうつろいます。人間や植物や動物、風景などの自然界にあるものは言うに及ばず、機械などの無機質なものも、色褪せや経年劣化しています。
さらに、社会状況やビジネスの状況も然り。
ありとあらゆるものが毎日、一刻一刻変化しているのです。
ほとんどの人はその変化に気づくことなく、生きています。
話を最初に戻すと、私の苗字の成願を成瀬と読み間違えるのは、脳のキャッシュ機能を使っているからです。
人間関係においては、できる限りキャッシュ機能は使いたくないものです。
かつて「笑っていいとも」でタモリさんがゲストによく言ってた、「髪切った?」は、他人とのコミュニケーション能力を高めるためには、とても大切ですね。
人は自分の変化に気づいてもらえたことに喜びを感じる生き物なのです。
だから私も、昨日と違う今日のあなたに気づいてあげられる人でありたいです。
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成願 義夫