絶対音感とは?
以前、興味深い事を音楽家の葉加瀬太郎さんがあるところで言っておられました。
インタビュアーが「葉加瀬さんは、絶対音感をお持ちらしいですね」と尋ねたところ、「ハイ」と答えて、直ぐにこう付け加えたのです。
「正確に言うと、高精度な相対音感だと思っています。 4歳からやっているバイオリンの常にチューニングの時の基準音「ラ」の音が身体に染み付いていて、他の音はそれを基準に相対的に瞬時に判断していると思います」
私はこれを聞いて、やはりそうかと思いました。
多くの人はこれを絶対音感だと言っているのですが、厳密には基準ありきの相対的音感だったのですね。
話は少し飛躍しますが、優れたクリエイターやデザイナーに欠かせないものは『美の基準となる独自の物差し』です。
それは本人にとっては絶対的ですが、他人との比較においては個々に違うもので、それを元に相対的に判断するから、時代の価値観からブレずに、しかもオリジナリティを維持しながら常に一定のレベル以上の新しいものを生み出せるのだと思います。
私見ですが、厳密な宇宙の基準の様な絶対感を持っている人間は存在していないと思っています。
アインシュタインの相対性理論においても、観測者の立場によって互いの時空間が「相対」して変わるものといわれており、人間そのものも変化する物体なので絶対感は持てるはずもないのです。
そういう意味においては、「絶対色感」も、言わずもがな。
私は美は相対性の中にあるものだと思っています。
自然はうつろい、そしてこの世は無常です。
だからこそ無限に美は生み出されるのです。
ただし、一流のプロを目指すなら、ぶれない自分の物差しは必要です。
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和文化デザイン思考講師 成願義夫
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