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おきばりやす
私が大好きな京ことば
「おきばりやす」
今から30年以上前。
私が毎日通った京都の古い町家の喫茶店。
格子戸がとても素敵なお店だった。
一つだけ残念だったことと言えば、コーヒーが不味かったことだ(笑)
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当時店主は70歳を超えた素敵なおばあちゃん。
いつも着物に白い割烹着を着ていた。
さりげなく着ている着物は木綿、麻、ウールなど、決して上等ではないが、最高の仕事着だ。
とにかく孫を見るようにいつも笑顔で迎えてくれた。
朝、仕事前のひと時は、いつもそこにいた。
時にはモーニングサービスの分厚いトーストを頬張ることもあった。
しわくちゃの手でパンにバターを塗る手元がリズミカルで美しかった。
そして、コーヒーを飲み終わってレジで支払いを済まし、ドアに向かって振り返って一歩足を踏み出した時、いつも絶妙のタイミングで背中にかけてくれる一言。
それが・・・「おきばりやすぅ!」だった。
店内に響き渡るその声は、まるで役者が舞台に背を向けて花道を歩き始めた時に大向こうからかかる一声の様な「おきばりやすぅ」だ。
私は一瞬立ち止り、その言葉を背中で受ける。
今思えば、この「おきばりやす」を聞きたくて毎日通っていたと言っても過言ではない。(笑)
今でも時々、おばあちゃんの「おきばりやすぅ」が聴きたくなる時がある。
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