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着物販売の悪徳業者が、和服業界に対する不信感を増大させている。

さっき、友人から突然画像つきのLINEが届いた。

「先生、この着物どう思いますか?」

それがこの写真だ。

小紋に絵羽風ぼかし、これは訪問着ではありません。

呉服の展示会場からのようだ。

写真を見たら友人はご覧のように仮仕立てした着物に帯を合わせて着装されている。

写真の着物は地ぼかしがかろうじて絵羽風だが、明らかに小紋だ。

仮絵羽に仕立ててる?
ピンと来た私はLINEを返した。

「販売員は、その着物を訪問着と言ってない?」

少しして友人の返信

「はい、牛首紬の訪問着だと言ってます」

私、「ところで価格は?」

彼女、「帯と合わせて258万円。」

彼女、「でも、合わせて88万円にしてくれるらしいよ」

アハハ。「それは安いねぇ〜。アホかぁ〜」と久しぶりに一人で

ノリツッコミしてしまった。

私、「第一、その着物は小紋だよ。作り手、売り手が訪問着だと言っても着て小紋に見えたら小紋なんだよ。」
良く言えば「街着」「趣味の着物」だね。
何より、価格設定が異常すぎる。

彼女、「そうなんだ」

後のやり取りは省略。

生地は牛首紬と称する小紋を客に訪問着と言って、売る業者。
地色だけは絵羽風にぼかしてそれらしく見せているがこれはまさしく小紋。展示会には作家は付きものだが、作家と称する詐欺師は本当に多い。

業者は訪問着と言えるように理論武装しているつもりだろうが馬鹿すぎる。(笑)

こんな悪徳業者の片棒を担ぐことになった生産者が哀れだ。


ところで
実際にこの手の業者の言うことを鵜呑みにして、恥をかき、二度と着物は着たくないと言っているお気の毒な女性を私は知っている

その女性のご主人はある大手企業の部長で、会社の社長の御子息の結婚披露宴に夫婦で招かれることになり、総額250万円の汕頭刺繍の総柄着物(訪問着と販売員に言われて)と帯や長襦袢などのフルセットを新調して、意気揚々とホテルの会場に行って社長の奥様に挨拶したところ、「あら、奥様、素敵な小紋、着ていらっしゃいますわね」と、言われたそうだ。

流石に普段洋服しか着ない彼女でも社長夫人が言った言葉の意味は解る。
その後、披露宴会場で、その女性がどんな思いで席に座っていたかは想像に難くない。

翌朝、開店と同時にその女性は着物一式を持って呉服店に行き、店主に風呂敷に包んだまま着物を投げつけて「よくも私と主人に恥をかかせてくれたな!!」と怒鳴り込んだそうだ。

ちなみに、以下の写真は問題の着物と同じタイプの総汕頭刺繍の着物。
業者はこれを訪問着と言って売っているが、正装としての訪問着ではない。
これはあくまでも趣味の着物(街着)だ。
結婚式の正装としてはあり得ない。
社長の奥様も「息子の結婚式に普段着で来た非常識な女」というふうに思い、皮肉を言った気持ちはよく解る。

問題の着物と同じタイプの着物
問題の着物と同じタイプの着物、隅から隅まで柄が入っており、地色が一色だと小紋に見える。

目的を告げて買っているので、彼女の激怒は当然のこと。
店長は、客の予算と着用日を聞いて、直近の展示会では間に合わないので、店内在庫で最も高額な商品を売りつけたのだろう。

ユーザーが無知なのを良いことに高額な高付加価値商品を売りつける。
挙句の果てに恥をかかせた。

最低の呉服屋だ。

皆様もこんな呉服屋に、騙されない様に、くれぐれもご用心ください。


呉服繁盛店の作り方アドバイザー
成願 義夫

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成願 義夫(ジョウガン ヨシオ)
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