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目は口ほどにものを言い

私は時々、食事中などに「どこ見てるの?」「何考えてるの?」と言われることがある。

その時の目は、どこにも焦点を合わしていず、網膜にはボヤッと目の前が写っているが何も見ていない状態だ。

いわゆる「ボーッとしている」状態だ。

レオナール藤田の代表作「カフェ」で、描かれている女性がまさにこれだ。

「目を開けているのに何も見ていない」空虚な状態だ。
パリジェンヌのアンニュイさがみごとに描かれている。


さて
絵画で目と言えば、優れた絵師が描いた「八方睨みの龍」と呼ばれる天井画がある。

私が好きな八方睨みの龍は京都の妙心寺にある狩野探幽の雲龍だ。


また「八方睨み」と言えば、團十郎の「睨み」を思い出す人も多いだろう。
團十郎の「睨み」は右目だけを鼻に寄せている。

これはどこにも焦点を合わせていないのだが、結果的に「全てを見ている」に通じ、客席のあらゆる方向に視線を向けているという意味になり、江戸時代には「市川團十郎に睨まれると1年間無病息災で過ごせる」と信じられていた。

龍の八方睨みは平面作品だけに可能な方法で、写真の被写体となる人がレンズを見て撮られた状態と同じだ。出来上がった写真の人物はこちらを見ている。

話を元に戻すと、藤田が描くこの女性は右の黒目だけが外側にずれている、つまり目の焦点が合っていない。
目を開けていながらも、何も見ていないリアリティーのある空虚な顔が見事に描けている。
机の上の書き損じの手紙は彼女のドラマを想像させる。


感動価値の創り方 講師
呉服繁盛店の作り方 講師
伝統産業商品開発アドバイザー

成願義夫

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成願 義夫(ジョウガン ヨシオ)
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