アーミーナイフ商法・成願義夫 記
「いざって言う時、これが有れば困りませんよ。」
「もしもの時の為に今のうちに用意しておかれたほうが良いですよ。」
これは一昔前の呉服店でよく耳にしたセールストークです。
ところで「いざ」と言えば、昔スイス土産に友人に貰ったアーミーナイフを思い出します。
多機能は一見便利そうですが、とても使いにくいです。
だから普段は、わざわざこんな物は使わず、それぞれ独立した道具を使います。
このナイフは狩猟民族独特の足し算思考が生み出したものですね。
一見便利そうで、実は不便な物。
それらは、私たちの身の回りに溢れています。
商品開発者や販売する者はそれを「付加価値」と言うなの「価値」として、消費者にアピールします。
しかし、現実は消費者から見れば「無駄な物」「余計な物」になる場合も少なくありません。
つまり、多機能は「便利な物」であるか、「無用の長物」であるかが、紙一重なのです。
スティーブ・ジョブズが18歳から学んだのが「禅の思想」でした。そのおかげで「いかに無駄をそぎ落とし、シンプルにするか」を重要視して商品開発に活かすことができ、彼は成功を収めました。
さて、昨今、「フェーズフリー」なる言葉を聞く機会が増えました。
フェーズフリーとはなんでしょうか?
世界でも有数の災害大国である日本。
防災意識は高まっています。
そこで改めて考え出されたことがフェーズフリーです。
つまり、「いざと言う時の為だけに備えたものはいざという時に実は取り出せなかったり、使えなかったりして、結局役に立たないことが多い。」という、この現実を踏まえて・・・考え出されたのがフェーズフリーです。
水や食料、応急手当ての薬品など、非常時に最低何日間か生命を存える為に必要なものは準備する価値はあります。
しかし、道具類に関しては、日常使う身のまわりにあるモノやサービスを、非常時にも役立てることができるようした方が、いざという時に命を守ることにつながると言われています。
それが『フェーズフリー』と言う考え方なのです。
結局、呉服屋さんの言う、「いざ」はほとんど来ないのです。
もし来たとしても、洋服で済ませたり、現地に行ってレンタルする方が実利的です。
「いざ」や「もしも」の為に買って持っておくことをお客様に薦める「アーミーナイフ商法」は無駄をお客様に強いることになると知るべし。
成願義夫
和文化ビジネス思考オンライン講座
https://www.jogan-kimono-design-school.com/
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フェーズフリー協会