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フットボールのダイヤモンド・オフェンスにおける攻撃サポートの構造化8 戦略・戦術の最適化②:社会的感情構造

社会的感情構造

社会的感情構造(Socio-Afectiva)は、認知構造(Cognitiva)と並び、「戦略・戦術の最適化」のトレーニングをする際に、フランシスコ・セイルーロが提案する「6つの構造」の中でも最優先構造になっている。ここでは更に、社会的感情構造について掘り下げて詳細に説明する。

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図3:フランシスコ・セイルーロのコンセプトを解釈したもの(コーチングコースCARの講義ノート)


社会的感情構造

フランシスコ・セイルーロ(2004)が提案した社会的感情構造は、3つの異なる側面(共感、アサーティブネス〈自他を尊重した自己表現〉、自己管理から構成されており、チームの自己管理を最適化するための助言・方法として相互扶助と協力がある。これらはチームが社会的感情を共有するための手段である。

用語:

Socio-Afectiva:社会的感情構造

Empatía: 共感

Asertividad: アサーティブネス〈自他を尊重した自己表現〉

Auto-gestión: 自己管理

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図4:フランシスコ・セイルーロのコンセプトを解釈したもの(ダニエル・ボカネグラ・カマーチョからの引用)


スポーツ・パフォーマンスがもたらす社会的感情構造の最適化

フランシスコ・セイルーロ(2004)は自己管理グループを最適化するための異なる側面の細部について説明している。

自己管理グループを最適化する(フランシスコ・セイルーロ:2004):(自分自身の能力で対峙した事柄を解決する)  

相互扶助(Ayuda mutua):
チームメート(例:ボール保持者)に最も近いプレーヤーの行動。ボールを受けるか、もしくは取り戻すかことができる、ボール保持者の近くにいるプレーヤーが現在のプレー状況を十分に解決することが可能な状態。
介入スペース(Espacio de intervención):
ボールがあるスペース(空間)で、チームメートが自身と一緒にプレーに介入でき、相互扶助の関係にあること。
協力(Cooperación):
ボール保持者の近くにいない残りのチームメートの行動。ボールを保持するか、取り戻すことができる、可能であれば、効果的かつ効率的な方法でプレーに参加することが可能な状態。
位相空間(Espacio de fase):
ボールの近くにいない残りのプレーヤーがいるスペースである。そのプレーヤーがプレーに参加する時は、効果的かつ生産的な方法でチームのためにプレーできるようにポジションを取る。


フットボールは複雑な状況の連続である

下の図はフランシスコ・セイルーロ(2004)が提案したフットボールの複雑な状況の連続を表したものである。

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図5

用語:                             Continuum de la complejidad:複雑さの連続             Reajustes tácticos:戦術的な再調整
Variabilidad técnica:可変性のある技術
Identificación de los resultados:結果の識別            

図5を見ると、フットボールにおいて、チーム内の社会的感情構造を最適化するには、自己管理グループを最適化することが必要だと言うことが理解できる。この図では、相互扶助(Ayuda mutua)と協力(Cooperación)が、複雑さの連続する自己管理グループ(チーム)のプレー状況を効果的かつ効率的に解決するサイクルを示している。

この図が示すように、相互扶助と協力が相互作用して自己管理グループに影響を与える。その後、複雑な状況が連続する中で、戦術の再調整、可変性のある技術(状況に適応した技術の発揮)、プレー結果の識別をして再調整されたものが、相互扶助と協力で相互作用を通じて自己管理グループに影響を与える。このサイクルを繰り返すのがフットボールの試合なのであろう。

ここまで見てくると、戦略・戦術を最適化するには、認知構造と社会的感情構造が非常に重要であることが理解できる。そして、社会的感情構造が密接にチームのパフォーマンスに影響を与え、戦術や技術(戦略や戦術を実行するための道具)に直接的に影響を与えていることが理解できると思う。


内部情報経路を最適化する:(他のいくつかのプレーを学び、類似したプレー哲学を獲得するために)

内部情報経路を最適化するには、アサーティブネス〈自他を尊重した自己表現〉・コミュニケーション(Comnicación asertiva)と共感(Empatía)が非常に重要である。私たちがフットボールの試合中に、その状況に適した様々な方法でコミュニケーションを取ることができない場合、社会的感情で優位性を獲得することはできないと考える。それはフットボールの「戦略・戦術の最適化」においても優位性を獲得することが難しくなることを意味すると考える。

E. カバージョ(1983)は、アサーティブネス〈自他を尊重した自己表現〉・コミュニケーション(Comnicación asertiva)を提案し、それを次のように定義付けしている:

個人の感情や思考を誠実な方法で表現し、他者の心を傷つけず、その目標に達する行動である。


個性と異文化性を考慮したパフォーマンスの強化:

共感コミュニケーション(Comnicación empática):
G. マラドン(2003)は共感コミュニケーションを提案し、次のように定義している:


他者を一意に受け入れる努力は、自己と他者は隔たりがあるという意識とコミュケーションの期待が得られた時に受動的な識別が可能となり、容認され、展開される。

フランシスコ・セイルーロ(2004)は、言語と非言語による相互コミュニケーションの具体的な形として、アサーティブネス〈自他を尊重した自己表現〉と共感を提案し、チームスポーツにおける社会的感情構造の重要性について述べている。

アサーティブネス〈自他を尊重した自己表現〉と共感は、対人コミュニケーションの社会的スキルであり、トレーニングや試合において、言語と非言語による相互コミュニケーションの具体的な形として解釈可能である。
コーチは非言語的なプレーヤーをもっと頻繁にトレーニングに参加させるために、より多くの言語の形を確立する。
アサーティブネス〈自他を尊重した自己表現〉と共感は互いを補完し、プレーヤー間の衝突や争いを取り除く。
社会的感情構造は、チームスポーツのパフォーマンスの最適化にとって非常に重要である。


フットボールのダイヤモンド・オフェンスの鍵となる要素は、社会的感情構造の優位性を獲得することであると考える。フットボールのダイヤモンド・オフェンスはポジショナルプレーを実行するための方法論の一つであるのとともに、社会的感情オフェンスであると言うことができるかも知れない。


全てのプレイヤーが長い時間をかけてトレーニングや試合を通じて関係を構築し、アサーティブネス〈自他を尊重した自己表現〉・コミュニケーション(Comnicación asertiva)と共感(Empatía)・コミュニケーションの能力がフットボールのダイヤモンド・オフェンスを実行する上でのベースになると考える。


プレーヤーが長い時間をかけて、チームのトレーニングと試合においての経験が互いのプレーを直感的に理解することに繋がるであろう。プレーヤーが無意識レベルでプレーをすることによって、プレーヤー間で相互作用し、自己組織化される。その結果として創発が発生する、それが即興プレーであり、フットボールのダイヤモンド・オフェンスであると考える。


引用・参考文献

Camacho, Daniel, Bocanegra. “Variables Socio-Afectivas en el rendimiento de Futbolistas” Revista de entrenamiento deportivo (2013).

Camacho, Daniel, Bocanegra. Variables socio-afectivas del rendimiento del futbolista del U.D. Lourdes. (2013)

Seirul-lo Vargas, F. (2004). Estructura Socio-Afectiva. Documento INEFC Barcelona. UB.


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