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ゲームモデルの作り方:13の行動(基礎編)〜行動9:ダイレクトプレーへの守備〜Vol.11

今回は、組織的守備で行う行動「ダイレクトプレーへの守備」について。

相手チームがゾーン1から、もしくはゾーン2から実行するダイレクトプレーに対して行う組織的守備の行動である「ダイレクトプレーへの守備」のゲームモデルの作り方を説明する。


※ダイレクトプレー:GK、もしくはDFラインの選手が浮き球で、MFを経由しないで、FWの選手や相手DFラインの背後のスペースを狙ったロングパスプレーのことである。


下記の「ゲームモデル:13の行動」図を確認して欲しい。

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「ダイレクトプレーへの守備」のゲームモデルの作り方を知ることで、組織的攻撃の「ダイレクトプレー」をさらに深くに理解できると思う。


「ダイレクトプレーへの守備」は大きく2つに分かれる。

1. GK(手でボールを保持しない状態)、もしくはDFラインの選手から実行するダイレクトプレー。
2. ゴールキック、もしくはGKがボールを手で保持した場合に実行するダイレクトプレー(DFラインを上げてからボールを手から離す場合も含む)。




1. ゲームモデル作り:ダイレクトプレーへの守備


ダイレクトプレーは、集団プレーの行動の1つであり、スペインサッカーコーチングコース(カタルーニャサッカー協会)の独特の言葉である。

今回は、相手のダイレクトプレーに対してどのように組織的守備を行い、ゲームモデルを作成するのかを説明する。

「ダイレクトプレーへの守備」は、「ボール出しへの守備」「前進への守備」と同じように、マークのタイプ(マンツーマン、ゾーン、ミックス、コンビネーション)がある。

マークのタイプは主に相手のダイレクトプレーへ対応するDFラインとMFラインの選手にとって非常に重要である。

相手のゴールキックやGKが手でボールを保持してパントキックをする場合(DFラインを上げてボールから手を離した場合も含む)、一般的にGKを除く全員がミドルゾーンに入ることになる。

相手のゾーン1からの「ダイレクトプレーへの守備」は、「ボール出しへの守備配置」から、相手のダイレクトプレーへ対応する。

相手のゾーン2からの「ダイレクトプレーへの守備」は、「前進への守備の配置」から、相手のダイレクトプレーへ対応する。

相手の行動によって、組織的守備の行動をスムーズに変更しなければならない。

相手のプレースタイルが事前に分かっている場合は、対処しやすいと思う。事前に相手を分析することが大事だ。相手のプレースタイルに合わせて「ダイレクトプレーへの守備」を構築する。マークのタイプも変える。

もし、相手がポゼッションスタイルで、絶対に「ダイレクトプレー」をしてこないことが分かっている場合は、DFラインを高く設定し、コンパクトな守備が可能だ。このような場合は、できるだけ高い位置からプレッシングを仕掛けたい(私個人のアイディア)。

相手がダイレクトプレーをするチームであれば、DFラインはできるだけ高く保つが、相手がロングパスをする瞬間にDFラインを下げる準備をする。もしくは最初から、チーム全体の守備ブロックを下げて、DFラインの背後のスペースを消す方法もある。

最初からチーム全体の守備ブロックを下げる方法は「ダイレクトプレー」をゲームモデルにしているチームは、相手DFラインの背後にはスペースがなく、相手FWからのプレッシャーもほとんどないので、とりあえずロングボールをゴール前に蹴るか、もしくはプレーの選択に迷い混乱しながらボールを保持することになり、ミスを起こしやすく、守備側はボールを取り戻しやすいことだろう。

次に、相手のプレッシャー次第で、ポゼッション、ダイレクトプレーのどちらかを柔軟に選択してくるチームの場合は、DFラインはどちらにでも対応できるようにDFラインの高さを設定し、準備しなければならい。



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バルセロナでのビタースウィートな思い出の試合

実は、私は、2016−2017シーズンに、スペインサッカーコーチングコースレベル3の実習として、スペインリーグ2部Bに所属するバルセロナ近郊のCFバダロナで試合分析を1シーズン担当したことがある。

ホームでバルサBと対戦するということで、バルサBの試合を分析しに様々なスタジアムを訪れた。

私が分析したPWPと動画をもとに作戦を監督が練っていた。バルサBが首位、CFバダロナが3位と好位置での対戦。新しくなった5000人収容のスタジアムは超満員(バダロナとしては)。

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バルサBの弱点は攻撃時にCBとSBの距離が空くので、ボールを取り戻した瞬間、トップがそのCBとSBの間のスペースでボールを素早く受けると「カウンターアタック」からチャンスになることを私は監督にPWPで伝えていた。

試合開始15分までは、その弱点を突き、CFバダロナにチャンスが何度か訪れ、これは行けると思った。

しかし、15分を過ぎた辺りから、バルサBは、ボールを失ったらすぐにDFラインを後退させ、DFラインの背後のスペースを消し、FWがハーフラインから守備を開始する戦法に変えてきた。

私は、バルサBの試合をそのシーズン10試合以上観戦したが、そのような「後退」を選択するという方法を見たことがなかった。


あのバルサが、ボール保持者にプレッシャーをかけずに後退するなんて!


ゲームモデルにないんじゃないかと憤慨した覚えがあるのと同時に、これで勝つことが難しくなったと悟った。

CFバダロナは、縦に速いプレースタイルのチームで、「カウンターアタック」を得意としていたが、この最大の強みを消されてしまったのだ。

その後は、慣れないポゼッションを強いられ、GKに返すボールをバルサBのFWに取り戻され、失点し、良いところなく0対2の敗戦。

このような苦い思い出が、「ダイレクトプレーへの守備」について考えるときに思い出す。

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2.「守備の組織構造」
3. 基準/キーファクター(守備の組織構造)
4. 相手チームの組織的攻撃の集団アクション、プレーの状況を分析するための前提基準
ゾーンプレッシング
マークのタイプ
ディフェンスシステムの強みと弱み

については、ゲームモデルの作り方:13の行動(基礎編)〜行動7:ボール出しへの守備〜Vol.9を読んで欲しい。



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