フットボールのダイヤモンド・オフェンスにおける攻撃サポートの構造化 5(イントロダクション1.2〜5)
1.2 研究課題
研究課題は「フットボールのダイヤモンド・オフェンスにおける攻撃サポートの構造化」を分析することである。ダイヤモンド・オフェンスの構造に関して、次の質問に答えようと試みた。
1.どのようにして相手のプレーを読むのか?
2.どのようにして即興プレーを創造するのか?
3.どのようにしてファイナルゾーンで最適なプレーをするのか?
4.どのようにしてフットボールのダイヤモンド・オフェンスのトレーニング方法を作成するのか?
1.3 研究の必要性
フットボールのファイナルゾーンにおいての攻撃戦術はほとんど研究されていない。おそらく、その国のサッカー協会やビッグクラブのレベルでは研究され、様々な攻撃戦術が蓄積されているものと考えるが、一般には公開されていない。新たな攻撃戦術のほとんどが一般大衆には公開されていない現実がある。多くの素晴らしい監督たちは、自分の攻撃戦術や守備戦術を本に書いたり、世界に発信などしない。例えば、ペップ・グアルディオラ、ヨハン・クライフ、マルセロ・ビエルサ、マウリツィオ・サッリなどetc...
なぜなら、これらの素晴らしい監督たちは自身の過去の経験や研究と実践によって、自分なりのアイディアを確立としたので秘密にしておきたいからだと考える。
他の集団スポーツに関しては、攻撃戦術に関する優れた本が一般に公開されている。例えば、テックス・ウインター著作の「バスケットボール:トライアングル・オフェンス(2007)」。NBAで11回チャンピオンに輝いたフィル・ジャクソン監督がテックス・ウインターと組んでトライアングル・オフェンスを導入して大成功したことで有名になった。
この本にはバスケットボールの攻撃の「プレー・メソッド」が書かれている。このような「プレー・メソッド」がフットボールの攻撃戦術にも必要なのではないかと思う。
トライアングル・オフェンスの「プレー・メソッド」についてフィル・ジャクソンがテックス・ウインターの著書(2007)でこのように述べている:
「それは、私心をなくすことを意識するという禅とキリスト教の姿勢を具現化したものであった。本質的には、そのシステムは、頭と体、そしてスポーツと精神を誰もが学べる実用的で地に足がついた形に統一したものであった。トライアングル・オフェンスとはつまり、5人でやる太極拳のようなものである。その基本的な考えは、ディフェンスのバランスを失わせて、フロアに無数のオープンな場所をつくるために、動きの流れを巧みに調整することである」
フィル・ジャクソンが言うように、「プレー・メソッド」を成功させるためには、チーム全員が参加するオフェンスが必要不可欠であり、各選手が持つプレーオプションをチーム内で共有することが大切である。選手が持つ創造性のあるプレーとは、各選手がその瞬間に最適なプレーを選択することであると考える。
フットボールの世界では、攻撃戦術に関する書籍はほとんど出版されていない。攻撃戦術についての書籍を出版し、フットボールを愛する人々と共有する必要性を強く感じている。フットボールで最も魅力的なファイナルゾーンの攻撃方法を大衆化することが重要である。フットボールのダイヤモンド・オフェンスの練習方法を知ることによって、多くのコーチがこの新しい攻撃方法を理解し、チームで練習し、選手の攻撃のパフォーマンスを最適化し、そこから新たな攻撃戦術が生まれることを期待している。
1.4 リミット
本研究は何かの分析結果ではなく、全てが仮説であり提案である。ダイヤモンド・オフェンスは、バスケットボール、ハンドボール、フットサルの攻撃戦術を応用したが、実際のチームにおいてダイヤモンド・オフェンスを練習や試合で実践したことはない。
1.5 仮説
本研究は以下の前提に基づいている。
1. バスケットボールの攻撃戦術であるトライアングル・オフェンスは、ダイヤモンド・オフェンスに応用することができる。
2. バスケットボール、ハンドボール、フットサルの攻撃戦術は、ダイヤモンド・オフェンスに応用することができる。
3. ダイヤモンド・オフェンスは、他の集団スポーツ(バスケットボール、ハンドボール、フットサル)の攻撃戦術に存在する。
4. プレーを読むことは、次に起こる動きを予測することである。
5. 即興プレーは記憶と関連しており、プレー記憶がたくさんあると多くのプレーオプションがある。
6. ダイヤモンド・オフェンスは、常にボール保持者にプレーオプションを提供するプレーメソッドである。
7. ダイヤモンド・オフェンスは、攻撃中に守備の準備をしながら実行する攻撃戦術である。
参考文献
テックス・ウインター(2007)「バスケットボール:トライアングル・オフェンス」大修館書店 P 1(監修者まえがき)