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宮台用語の基礎知識

■はじめに
 社会学者の宮台真司先生の発言がわかりづらいと感じる方が少なくないようです。僕はこれまで何冊か(4,50冊くらい?)読んできたので「宮台用語」をわかりやすくお伝えできるのではないか、と思いこの企画を始めることにしました。
 宮台先生の著書をお読みになっていない方にもご理解いただけるような内容となっております。目次に気になる単語がございましたらそこからご確認ください。

 思い付いたらその都度この中に追加していこうと思います。
 追加をご希望の宮台用語や言説などございましたらコメントなどお願いいたします。また間違いのご指摘などもいつでもお待ちしております。



■社会と世界

 ・社会_コミュニケーション可能なものすべて
 ・世界_ありとあらゆるものすべて

 社会は政治や人間関係、教育など、人が関わることができるものを指します。
 世界は宇宙全体や社会から脱した感覚、あり得なさや奇跡的な出来事などありとあらゆるものを指します。

 宮台先生は社会に閉じこもったままではなく、世界に開かれることが大事だと説きます。

■脱社会的存在

 社会的。反社会的。この二つは広義の社会的存在です。
 なぜなら反社会的行為は社会に対する反発だからです。社会をベースに考え、それに反抗しているわけです。

 脱社会的存在は、社会を生きていません。
 そのため道徳が機能しません。
 自身の中にある倫理に従って行動します。

 その倫理がこの社会に近ければ大きな問題は起きません。ですがその倫理がこの社会から大きく外れている場合、動機が不明な殺人が起きるかも知れません。

 その上で、宮台先生はゆるい脱社会化を推奨しています。
 クソ社会に従順になるのではなく、クソ社会を脱社会化し、ですが社会を壊さずに生きる。それが幸せになる一つの方法であると説いています。

■なりすまし

 脱社会化に関連します。
 この社会はクソ。でもこのクソ社会で生活しなければならない。
 その時に、クソ社会に順応して過剰適応するのではなく、社会を生きているかのようになりすます。言わば仮の姿、ということです。
 社会から世界に開かれて生きる。でもそれだけでは生きていけないので、クソ社会を仮の姿でやりすごす。
 社会を壊さず、自分も殺さず、もちろん他人も殺さずに生き延びるための知恵が「なりすまし」です。

■感情の劣化

 知性を欠いたかのような言動に対して「これは知性の劣化ではなく感情の劣化だ」と指摘しました。
 良き社会を目指すことよりも、自身の感情を爆発させることの方が優先される存在を指します。
 例えばSNSでバズりたいという感情が優位になり、他人の迷惑を顧みない行動は感情の劣化と言えるでしょう。
 いくら知性で「他の人の迷惑になる」と教えても、それを把握した上で「バズりたい」という感情を優先させているため、知性の劣化ではなく感情の劣化(だだ漏れ)が起きているということです。

■クズ

 「クズ」は頻出ワードなのでポイントを押さえておきましょう。
 「クズ」は「損得マシーン」「言葉の自動機械」「法の奴隷」のことを指します。

 ・損得マシーン_自分が損をしない、得をする、ということが行動基準になっている人のこと。
 ・言葉の自動機械_自分の言葉を持っておらず、借りてきた言葉でしか話せない人のこと。bot人間。
 ・法の奴隷_ルールに従うことが絶対だと思っている人のこと。ルールを守らない人の事を糾弾する。

 以上がクズです。
 これと逆なのが「まとも」です。すなわち、損か得かではなく自身の倫理観によって行動する人。
 自身の内側から湧き上がってくる言葉を発する人。
 倫理の為、大切なものの為にルールを破ることもいとわない人。
 まともな人になりましょう。

■道徳と倫理

 ・道徳_社会を営む上で決められたルール
 ・倫理_揺るがない絶対的な指針

 例えば「人を殺してはいけません」というルールに従うのが道徳で、「誰がなんと言おうと人を殺したくないんだ」というのが倫理です。
 つまり倫理は道徳を軽々と飛び越えます。まともだったら。

 倫理は宗教観とも関係しており、「絶対的な指針」のよりどころが信仰対象の教義となります。
 すなわち「神(教え)がダメと言ったものは絶対にダメ」というような。

■終わりなき日常

 社会が過渡期を経て成熟期になった状態のこと。
 高度経済成長期を終え、「頑張っても報われない空気感」「何も変わらない平板で灰色な毎日」という社会になった様子を指した単語。

■加速主義

 社会が沈んでいき建て直すことが容易ではない現代に対し、沈む速度をゆるめるのではなくむしろ早めることで建て直しの時期をも早めようという考え方。
 「沈みゆく船の座席争い」に甘んじている権力者が建て直しの邪魔をするので、もろとも沈めてとっとと新しい船を作ろう、ということ。

■沈みゆく船の座席争い

 社会が沈没するのが分かり切っているのにいまだに座席に座ることにこだわっている人たちを揶揄する比喩。
 船を建て直すことよりも座席に座ることを優先しているため、船はもう持ち直すことがない。

◼️楽しく、かつ、正しい

 例えば、政治に関する行動などの際に必要な指針。「正しくて楽しい」ではなく、あくまで「楽しい」が先になければならない、ということ。
 楽しくなければそもそも人を動かすことができないため。

■誰かなんとか言ってやれよ問題

 友達がいれば社会に踏みとどまることができたはず、という提言。
 社会を大きく逸脱しそうな思想や行動を考えてしまう時に、話せる友達がいたら止めてくれたはず、というもの。
 「知り合い」ではなく「友達」というのが重要。



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