★おまけ2★ 虎山の中朝国境
さて、前回の「おまけ」がまだ続きます(苦笑)
いよいよ虎山に向かいますよ。
●虎山(こざん)長城
中国語読みでは「フーシェン」、
あの万里の長城の東端になります。
中国観光の定番として皆さんよくご存じの、
北京から行きやすく大勢の観光客が押し寄せる
「八達嶺(はったつれい/パーダーリン)長城」は
総延長が6千kmとも2万kmいわれる
「万里の長城」のごく一部分。
この「虎山」はそのずっと東の端にあります。
まだまだマイナーな場所なので観光客も少なめ。
ピーク時には人間の大渋滞が発生するという八達嶺よりも
ゆっくりと遺跡の雰囲気や景色を満喫できますよ。
そして、北朝鮮国境もあわせて味わえるスポット。
このブログに関心を持つ方なら楽しめると思います(笑)
場所は丹東市街から鴨緑江の上流へ20キロほど。
タクシーやツアーを利用するのが便利ですが
丹東駅前から路線バスでも簡単に行けます。
乗車時間は40分ほどで運賃は5元と格安。
なんと日本円で100円未満!
ニッポンの交通費が高すぎるんですけどね。
バスはこんな感じ。
イスも硬いフツーの路線バス車両ですが
比較的新しくきれいなので快適です。
なぜか「機場巴士(エアポートバス)」と書いてありますw
おそらく中古車両の転用でしょうが、紛らわしいな。
でも前面ガラスの下の方に
「丹東―虎山長城」の表示があるので大丈夫。
以前は丹東駅から離れたバスターミナル発着でしたが
いまは駅前から出発しているみたいです。
でもバス停表示はないし、よく場所移動があるので
ホテルなどできちんと確認したほうがいいでしょうね。
お手軽運賃で利用価値の大きいバスですが
難点は本数が少ないこと。
わずかに1日に8往復のみ。
1~2時間に1本しかありません。それも間隔バラバラ。
駅前と虎山、それぞれの発車時刻が表示されてます。
が、「時刻改定」の貼り紙へさらに書き込み続出なので
常に最新の時刻を調べておく必要はありそうです。
なんでそんな頻繁に時刻変えなきゃならないのか…
ちなみにこのバスは観光客用というわけではなく
虎山のもっと先の街へ行く一般の中距離路線なので
地元の人も多数乗車しますよ。
市街地を抜け、川沿いの道路を快調に飛ばしていると
やがて車窓に有刺鉄線が連続するようになります。
国境近くを走っていることを実感しますね。
●長城に到着
日本のように親切な車内放送はありませんが
窓の外にそれらしい建物や土産物店が見え、
観光客も降りるので到着はだいたいわかります。
チョゴリを着た女の子が記念撮影。
前の広場にはチョゴリの貸衣装も出店してます。
中国国内でも、ふつうに観光地として定着してますね。
おっきい駐車場も完備されてます。
さて、キップを買って中へと入りましょう。
入場料はおとな60元なので千円ほど。
窓口で、電動カートを利用するかどうか聞かれます。
実はこの入口から長城の登り口まではけっこう離れてて
歩くと10分くらいかかるため、
こんなのに乗せてくれるんです。
もちろんタダではありません。
これを利用するなら往復でプラス10元。
まぁ200円程度をケチるかどうかは微妙ですが
平坦な道で公園みたいな感じなので
気候が厳しくなければ歩くのもいいですよ。
やがて立派な楼門のある登り口に到着。
右奥に見える門から入って上へ上がります。
堤上の遊歩道はきれいに整備され、
なだらかで道幅も広くて気持ちいいです。
とにかくゴミゴミしてないのが最高ですね。
ゆったりと景色を楽しむもよし、
いにしえへのイメージを膨らませるもよし。
ところどころには望楼もあっていい雰囲気。
ただずっと前方、山の上まで続く道は
この先の山登りを予感させもします。
●想像を超える難所
でもまぁ八達嶺だってアップダウン激しいし
とにかく頑張ってレッツゴー、と前進するも…
スタートからわずか10分。
いきなり壁が立ちふさがります。
急な階段の下には
「高血圧や心臓疾患のある方は安全に注意」と
リアルにビビらせる表示板が。
実はこの急階段までがすでにキツイ階段で
若干息が上がっちゃったりしてるわけで。
そしてこの看板もワザとなのかどうなのか
その傾斜に合わせて斜めに取り付けられてます。
でも行くしかない。がんばるぞ。
意を決して登り始めます。
しかしおそろしくキツイ。
もうほとんど「壁を登る」気分です。
上から見下ろすとその険しさが歴然。
マジ怖いって。
しかし、これで終わりではありませんでした。
文字通りの「壁」がまだ次々に襲い掛かります。
階段というより屋根を上るような感じ。
余談ですが、女性は絶対にスカートで行っちゃダメw
乗り越えても乗り越えても
また目の前には新たな壁が。
手前のおばさんとうとう手をついてしまう…
よくここまで登ってきましたよ。
でもさすがにこれだけ登ると眺めはステキです。
さて何気なく見下ろすこの光景、
もう北朝鮮が見えてるんですよね。
眼下の川を挟んで左が中国、右が北朝鮮。
食糧増産の大号令で農地開墾に励んだ北朝鮮側は
ひたすら広大な畑が広がっています。
そうやってときどき景色を眺めては気分転換。
でもこれだけの急こう配を這い上がるというのは
山をまっすぐ一直線に登っているのと同じで
短い距離でも標高はどんどん稼げます。
20分あまりでほぼ頂上に到達。
ふふん、オレもまだまだ若いぜww
途中にはまだ未整備で立ち入り禁止の場所も。
マニア的には行ってみたくてウズウズしますが
他の場所では年に数人が事故で死傷してるので
絶対にやめておきましょうね。
●頂上から北朝鮮を見る
いよいよ頂上の望楼へ。
開口部からの眺めもオツなものです。
この頂上の望楼(三号空心鼓楼)は
他の望楼の倍くらいの高さで規模もデカい。
内部にはしっかり売店もあって商売上手です。
ここまで商品持って上がってきてるんだよなぁ…
いやでもほんと、ちょうど欲しくなるんよ。
望楼上には展望台があります。
が、またそこへの階段がキツイ…
ここまでくれば
今ではもうこんなのどうってことないですけどねww
眺めは最高です。
いままでの苦労を思うと達成感もひとしお。
ここから登って来たんだなぁと。
よくがんばりました。
反対側から覗いてみると
おお、もう目の前は北朝鮮です。
集落もよく見えますよ。
全部で120戸くらいでしょうか。
典型的な農家集落です。
集落のはずれには共同作業所らしいものが。
トラクターとか荷車とか見えますね。
何かを干してるような場所もあります。
草っ原に点々と見えるのはウシでした。荷車用かな。
この集落にもちゃんと人は暮らしてるようです。
自転車で走ってる人もいるし
洗濯物も干してあるし。
農作業から帰るらしい人の姿もあります。
ヤギさんもいますね。
自由に飼ってるなぁ(笑)
のどかな農村という感じです。
ただ一方では監視小屋も。
軍人らしい人がいますね。
また、こちらには塹壕?
北朝鮮側の有刺鉄線のすぐ前にありました。
この時には誰もいませんでしたが
長く放置されているような感じではなく、
やはり国境独特の緊張感はあるようです。
さて景色を堪能したところで帰路へ。
そのまま向こう側へ抜けてしまう方法もあるのですが
途中から川の方へぜひ下りたいところ。
ここよりもさらに間近で北朝鮮を見られる
「一歩跨(いっぽまたぎ)」という場所があるんです。
そちらへ向かいましょう。
少し先へ抜けてから別のルートへ入ります。
●道はさらに険しく…
もうてっぺんまで登ったんだし
あとはどちらへ向かっても下るだけ、
もう楽勝じゃん!とお気楽に再スタート。
ところがどっこい。
急な階段は下りの方がコワイ。
一度足を滑らせるとあの世まで落ちてしまいそう。
手すりを頼りに恐る恐る下りていきます。
しばらく行くと、一歩跨への分岐点。
文字が消えかかって読みにくいですが
ここを左側へ進みます。
いままでの石畳とは違って
山間のトレッキングコースみたいな感じ。
お、なんかハイキングみたいでイイ感じ。
…と思ったら甘かった。
どんどん道が怪しくなってきます。
おいおい、大丈夫かよ…
しかし、いまさら引き返すわけにもいかず
がんばって突き進むのみ。
しばらく悪戦苦闘するとちょっと開けた場所に出ました。
横には何かがお祀りされてるような洞穴が。
でも何なのかわかりませんでした。
仏さまでも描いてあるのかなぁ。
よくわからんのでスルー。
川の向こうの北朝鮮がさらに迫ってきましたよ。
ようやく難関を突破したかな。
…いや、まだでした。
この先も難易度高いポイントが続々登場。
ってか、こんなんもう「道」じゃないやろw
あ~あ~、もう…
まさにRPGを地で行くようなダンジョン具合です。
手すりがなければ絶対わからないような
道なき道をひたすら進み、
目的地をめざします。もはや冒険w
でも、だんだん楽しくなってくるから不思議。
もうルートを無理やり作ったとしか…
ふと気が付くと、
遠くに見えていた見張り小屋がかなり近くに。
うんうん、着実に近づいてます。
国境らしい雰囲気も増してきました。
こちら有刺鉄線に張られた幕。
法律を遵守し国境の平穏を保ってください、
みたいな意味ですかね。
そして天空へと延びる階段を上れば
次のステージは心細い吊り橋。
「10人以上は渡らないで」の表示が
さらに不安をあおります(笑)
うああ、確かにちょっと怖い。
こんなとこで落ちて怪我でもしたらややこしそう。
中国と北朝鮮、どっちに救助されるんだろうww
無事にステージクリアしたあとは
やや頼りない落石防止フェンスの下を
岩にへばりつくように進みます。
奈落の底へと落ちていくような階段を下りると
ここにもあの表示が。
心臓病、高血圧の方は通らないでください。
はい、ほんとにそうですね。
いよいよ国境が間近に迫ってきましたよ。
この向こう岸はもう北朝鮮です。
ついにゴール目前。
展望台みたいな場所がありました。
ここには警備兵が常駐してますが
写り込まないようにすれば記念写真もOK。
ほんとにもう目の前が北朝鮮です。
これも監視関係の施設でしょうか。
なんか微妙に迷彩塗装です。
やれやれ、やっと広い場所に出ました。
ついにゴール、一歩跨に到着です。
あの分岐点から約30分。
時間以上に中身の濃いコースでしたw
川の中には壊れた小舟。
どっちの船なんかなぁ。
●一歩跨から北朝鮮を見る
ここがその一歩跨です。
この小さい川が国境線となり
中国と北朝鮮を隔てているんですね。
さすがに「一歩で跨げる」はオーバーですが
それでもほんとすぐそこに北朝鮮。
なんだか不思議な気持ちです。
監視カメラもしっかり稼働中。
監視所ももうすぐそこです。
どんな思いでこっち見てるんでしょうね…
数日前には自分がいた国のはずなんですが
こうしてみるとなんだかすごく遠く感じます。
川沿いの道にはバイクがやってきました。
その向こうには農作業をする人の姿も見えます。
この一歩跨は観光スポットに整備されていて
敷地内にはけっこう大きなお土産物屋もあります。
北朝鮮の商品や貨幣セットなども販売中。
外には石碑も建っていて
入れ代わり立ち代わりやってくる観光客が
記念写真を撮るなどして賑わってます。
フェンスの向こうには黙々と働く北朝鮮の農民。
それをバックに楽しそうに写真を撮る観光客。
なんだかちょっと複雑です…
当局としてはフェンスにはいちおう
「北朝鮮を背景に写真を撮ってはいけません」と
禁止表示を取り付けてはいますが
実際にはなんの抑止にもなってません。
そもそも北朝鮮を背景に石碑建ててるし(苦笑)
このほかにもいろんな注意表示が立ってますよ。
フェンスに登るな、川に入るな、釣りするな。
軍事設備を撮影するな、のほか
モノを投げ込むな、や「外の人」と交流するな、なんてのも。
実際、以前はよく北朝鮮にいる人に向かって
お菓子や食品を投げ込んだりする観光客がいたとか。
中には遊び半分で投げて反応を楽しむ輩もいて
一時問題になったことがあるそうです。
そりゃそうでしょね。人としてそれはいかんだろ。
ただもうここまで観光地化してると緊張感ゼロ。
1回2元の貸し望遠鏡もあったりしますが
みんなスマホやカメラのズームで見られるので
いまはわざわざ借りる「もの好き」もいないようですww
さてここからどう帰ろうか。
またあのとんでもない道を帰るのはヤだなぁ、と思っていると
別方向からぞろぞろとやってくる人がいる。
さっきまでわいわいと記念写真撮ってた団体さんも
みんな揃ってそちらの方へ。
いったいどこへ?とばかりについて行きます。
道の両側には農産物や土産物の売店。
その先の城壁みたいなのをくぐってみると…
なんと!!
出発地点の近くに戻ってました。
向こうに見えるのは長城の登り口。
つまり、こういうふうに歩いてきたわけです。
ぐるっと輪を描くように回って来たと。
なので、実はこの一歩跨。
あんなに苦労しなくても逆から入れば
わずか5分の平坦な道で行けたんですね。
なんだかなぁ。
でも、60元も払って入ったんですから
やはりメインの「長城」はしっかり見ておきたいもの。
確かにハードではありますが
ざっと2時間程度で踏破できる距離なので
(個人差は大きいと思いますが)
ただまっすぐ片道で通り抜けるよりは
ずっと面白いと思います。
皆さんもぜひこちらにチャレンジを。
さぁあとは丹東駅へ戻るだけ、なんですが
帰りのバス停がまたよくわからん。
ちゃんとした「バス停」が見当たらないんですよ。
うろうろ探し回った結果
どうやら道路沿いの食堂前が「停留所」らしい。
ちょうど小腹も空いたので何か食べつつ待ちましょう。
たまごチャーハン10元なり。
これがなかなか美味しかった。
見た目はいまいちなんですが、とっても優しい味。
食堂のおばちゃんもイイ人でいろいろ構ってくれました。
小一時間待った後、戻りのバスが到着。
でもやっぱりというか、みんな全っ然並ばねぇ。
周囲からどんどんわらわら割り込まれてしまい
結局ほとんど最後になってしまう悲しい日本人w
まぁ最終的には座れたのでよかったけど。
もし丹東へ行く機会があって一日余裕があれば
ぜひ一度行ってみていただきたい面白スポット。
虎山、けっこうオススメです。