ビーフストロガノフって何色の料理なんだろう…、の答えのひとつ
伊勢丹の食堂街にある洋食の店、西櫻亭。
飲食店が代替わりすると先代の方が良かったよネ…、と言われがちだけど、香味屋の跡地で同じ洋食を売ってるここもそういう損な役回り。
ボクにとっても香味屋と比べて好んでくるような店じゃなかった。
来ても1人で来てたから、タナカくんとの思い出がほぼこの店にはなくて、それが今の時期にはありがたかった。
ちょうど香味屋の呪縛から解き放たれたように感じる時期とも重なりたまにすすんで訪れるようになったのですね。
そんなときに、あぁ、こんなにおいしいものがあるんだとココロの中に花が開いたように感じた料理が「ガーデンサラダ」。何種類くらいの野菜が使われているんだろう。世の中にはこんなにたくさんの種類の生で食べることができる野菜があるんだ…、って生きてることのシアワセを感じるようで、季節季節で野菜の種類が変わることにも感心しました。
今日はレタスにカーリーリーフ、ケールに紫色したアンディーブ。カリフラワーにロマネスコ。生食用のかぼちゃにスクワッシュ、紅芯大根、小さなニンジン、小さな大根。トマトひとつとっても大きく硬く酸っぱいのがあったかと思うと、甘くて小さいトマトがあったり一口ごとに味が違って感じるステキ。なにより野菜それぞれの香りが鮮やかで、野菜ってこんなにおいしいんだって感心しちゃう。
ソースポットにたっぷり入ったサウザンアイランドドレッシングはサラサラしていてやさしい味わい。
ビシソワーズでお腹を潤す。コンソメのゼリー寄せがスプーンに添えられているのが特徴的で、口の温度でコンソメが溶けてビシソワーズに混ざって行くのがオモシロイ。
メインにビーフストロガノフを選んで試す。
お供にカニクリームコロッケを選んでひと揃え。一個のカニクリームコロッケにも千切りキャベツとトマトにたっぷりのタルタルソースが添えられているのが丁寧。
そして贅沢。上等料理。
ビーフストロガノフのお皿にはキレイに型抜きされたバターライスにマッシュドポテト、ブロッコリーにキャロットグラッセ。
これまた上等…、うつくしい。
それにしてもビーフストロガノフって不思議な料理。
ハヤシライスでもない。
細切りビーフのシチューでもなく、そもそも何色の食べ物なのかもはっきりしない。赤いのもあれば茶色いのもあり、その茶色も明るいのもあれば黒に近いものもあり。でももともとのビーフストロガノフは白いんだって話もあって不思議に拍車がかかってく。
ここのビーフストロガノフのソースは赤みがかった明るい茶色。デミグラスソースのようなどっしりとした重たさはなく、ソースにフレッシュな軽さを感じる。
削ぎ切られた牛肉がソースをまとってお皿の上に横たわる。
噛むとクチャっと潰れてたっぷりの肉汁と一緒にソースの酸味やコクが口に広がっていく。ビーフシチューより明るい味わい。肉もとろける感じではなく歯ごたえ、歯ざわりがしっかりしていてシチューとステーキのいいとこ取りって感じのおいしさ。ピンクペパーが奥歯で壊れて、そのたび香りが小さな爆発みたいに鼻を突き刺す感じもオゴチソウ。
パン粉に包まれた小さなグラタンのごときクリームコロッケをバターライスの上にのっけてドリアのように味わってこの組み合わせの妙を感じる。オキニイリ。
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