西洋料理のシチューの日本料理的解釈
シチューを食べたい。朝、目が覚めてまっさきに頭に思い浮かんだのが「銀之塔」の土鍋のシチュー。
銀座に行きます。丸ノ内線の銀座の駅から築地に向かってテクテク歩き、三越を超え東銀座の駅も過ぎ、歌舞伎座の裏というロケーション。
蔵造りの建物に「グラタン・シチューの店」の看板が見えてくる。
歌舞伎役者やご贔屓筋。出版社も近所にはあって、おいしいものが好きな人や発信力のある人たちが集まるエリア。
だからおいしい店がたくさんあって、ここもそういうお店のひとつ。
お店に入ったときにはテーブル席が埋まってて、座敷にどうぞを案内される。座敷からみるお店の景色はテーブル席からみる景色以上に老舗ムードが際立つ感じ。足を伸ばしてくつろぎます。
メニューはシチューとグラタンだけ。「超専門店」と言ってもいいに違いない。
シチューはビーフ、牛たん、野菜にミックスと4種類あり、ミックスシチューにミニグラタンがついたセットがオキニイリ。今日もそれをたのんで待った。
急ぐ人の来ぬ店です。だからゆっくり。お店の人が納得のいく料理を完成させるまでのんびりと待つ。お供に漬物と小鉢が2種類。中にはれんこんのきんぴらと大根なます。これがおいしい。
きんぴらはビリリと辛い大人味。大根なますは独特の匂いが好きではないのだけれど、ここのは作りたてだからなでしょうか…、香りさわやかでシャキシャキとした食感もいい。そしてグラタンがまず登場。
ガラスのココットで焼かれたこれがとてもユニーク。
ぽってりとしたクリームの食感といい出汁の風味を感じる味わいといい和風グラタンと呼びたくなるような味わい。
具材はエビがゴロゴロ、玉ねぎ、それから炊いたしいたけ!
洋食店ならマッシュルームが入るであろう代わりにしいたけを入れるというのがいかにうちは「和食のお店でございます」という感じで愉快。
オリジナル。
表面にたっぷりほどこした粉チーズがカリカリに焼けててスプーンの背中で叩くとパリッと壊れる感じがブリュレのようでもあってたのしい。
もったり重たいクリームを舐めるように平らげたとこでミックスシチューがご飯と一緒にやってくる。ご飯は茶碗に軽めの量で、おかわり気兼ねなくお申し付けっくださいと添えるひと言が銀座的。
牛タンと牛肉が半分半分でミックスシチュー。どちらもとろけるように煮込まれている。
タンは繊維をなくしてバッサリ崩れ中にたっぷり蓄えたおいしいジュースとソースが口を潤し儚く消えていく。牛肉の方はというと脂がクチャっと潰れてほぐれた繊維と混じってネットリ、口のすみずみ撫でまわす。
思わずご飯の上にのせたくなります。濃厚な味に舌が疲れてきたらぬか漬けが口をリセットしてくれる。日本の料理ってステキだなぁ…、ってしみじみ思う。オゴチソウ。
ジャガイモ、ニンジン、玉ねぎと野菜がゴロゴロ。さすがにシチューには椎茸は入っていないんだね…、ってホッとした表情でタナカくんが言ったひとこと思い出す(笑)。なにをおいてもシチューのソースのおいしいことに何度も何度もれんげで鍋底こそげて食べる。この上もなきオゴチソウ。