立喰そばはどこまで自由になれるのか?
小山の駅で一息。
湘南新宿ラインの上り電車が発着する、ホームの真ん中に立ち食いそばの店がある。
「きそば」という名で、おいしい匂いがホームいっぱいに漂っている。
この駅の乗り換えダイヤはデブには厳しく、必死に走ればなんとか乗れる電車がある。昔はそれに乗ったときの達成感が好きで走っていたけれど、一度足がもつれてあえなく、もう二三歩のところでドアがしまって行った。
ドアの内側で言うに言えぬ哀れみを帯びた表情で、ボクを見ていた女子高生の顔が未だにお頭を離れず、それで今ではのんびり歩く。
30分ほど待って次の電車に乗るのが常となる。
しかもそれだけ時間があれば、ホームの蕎麦屋でおいしい蕎麦が食べられるなんて、シアワセすぎて走る気失せる。そしてますますふくよかになる…、の繰り返し(笑)。
今日ものんびり歩いてお店の前にきて、写真を撮ったその真中にイタリアンカラーの商品写真を発見します。こりゃ、なんじゃ?と思って見ると、なんとパスタじゃござんせんか。
券売機にも「蕎麦パスタ」と書いたボタンが堂々とある。
ココは季節、季節に創作蕎麦を用意していて、たとえば新生姜の季節なんかには新生姜がドサッと乗った鯛にゅうめん…、なんてのがある。それが今の季節はパスタというコト。
徐々に暖かになってく時期に汁そばじゃない季節の麺。
と言って冷たい麺でもないパスタというのは食べる側にはいい提案かも。
なにしろそば粉を使ったパスタなんてイタリア的には当たり前のコト。だから驚くようなコトはないに違いないのだけど、立喰蕎麦屋でパスタというのは意表をついてオモシロイ。
たのむとテキパキ、カウンターの上が整う。お冷と一緒にタバスコがきて、フォークとスプーンを一揃えにし紙ナプキンで巻いたモノがやってくる。
3分ほども待ちましたか。
蕎麦を使ったパスタじゃなくて、そば粉と小麦粉をまぜて作った正真正銘の生パスタ。
普通の蕎麦は湯に通すだけ。
パスタはしっかり茹であげる。
茹でたパスタは水をしっかり切ってお皿に移されて、出汁を注いでパスタ全体に味をのっけて行き渡らせる。
そして最後にトマトソース。
商品説明に「蕎麦パスタ、無添加ベーコンのトマトソースと共に」とあった。
それだけ見るとちょっとおしゃれなイタリアンレストランのメニューのようで、やってきたのも思った以上に見事にパスタ。
ベーコン以外にしんなりソテした甘い玉ねぎ。スライスをした缶詰マッシュルームがたっぷり。トマトの酸味と甘みがかなり濃厚で、しっかりパスタにからんでくれる。
とぼけたレストランで食べるパスタなんかより、ずっとおいしく立って食べるのが勿体無いほど。感心します。
なにより麺がおいしいのです。ムッチリとした噛みごたえ。麺の表面に細かなささくれが沢山あるのでしょうネ…、唇をこする食感が独特。原始的とでもいいますか…、自然を食べてるって気持ちがしてくる。
せっかくだからコロッケもらって乗っけてみました。ソースで食べるコロッケとまるで違ったトマトソースにまみれたコロッケ。芋は甘くて衣サクサク。アランチーニと思って食べる(笑)。
それにしても周りの人は丼もって箸でズルズル蕎麦たぐり、そのかたわらでフォーク片手にパスタを食べるというこのシュール。ハマってしまうその楽しさに、思わず「ブラーボ」。キニイリマシタ、また来ましょ。
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