夏至の日の雅味近どう。鮎を焼く
岐阜の夜の「雅味近どう」。
夏至の今日。お店に入ったときにはまだ明るくて、雨がちらつく涼しいお日和。
竹で編んだ虫かごみたいな覆いをかけた前菜がくる。
一品目から夏の装い。
メインはねっとりとしたごま豆腐。「水無月」という和菓子を倣って仕立てられてる。ういろうに硬く炊いた小豆の餡をちらしたお菓子が水無月で、だからごま豆腐の中に小豆が潜んでる。コツコツ奥歯を叩いて甘みを吐き出す豆のおいしさ。ニッコリします。
トマトのおひたし、青菜の煮浸し、すっぽんのスープで炊いたおからに甘い卵焼き。鯛の押し寿司、枝豆とひと口ごとにお腹が喜ぶゴチソウ揃い。
エビしんじょうとじゅんさい、しいたけ、野菜の汁でお腹をあっため話もはずむ。
今日はこちらをお焼きいたします…、と小さな水槽に入った鮎がやってくる。
あぁ、そんな季節なんだなぁ…。
日本の料理は季節を味わう料理なんだとしみじみ思う。
今日の刺し身は天然マグロのトロに鯛。どちらも脂がのってねっちり、歯ごたえもよい。
糸造りにしたイカはねっとりとろけて旨い。
ここの名物の蒸し饅頭が続きます。
季節、季節で饅頭の素材が変わる。今の季節は枝豆饅頭。
緑の色があざやかで、ぽってりとろけてほのかに甘い。中にはほぐした蟹肉がたっぷり詰められ、刻んだきくらげのコリコリ感がふっくらとした蟹肉を引き立て味も整える。
なにより銀あんのおいしいこと。とてもなめらか。口の中で上等な出汁にもどってく。
そしてメインの鮎の塩焼き。
炭を仕込んだ器の中からおいしい香りの煙が湧いて、串に刺した鮎を燻してやってくる。
ほどよきサイズの鮎です
しかも生きたまま串刺しにして焼き上げている。
だから串がススっと抜けていくんですネ。
四角い皿に乗せると小川のせせらぎを泳ぐ魚の姿になる。
じっくりこんがり焼かれているから、頭もバリバリ食べられる。
皮はバリッと身はふっくら。ワタの苦味がまさに鮎。新鮮だったからでしょう…、匂い華やか、塩の加減も絶妙です。
もずくの酢物にパプリカひと切れ。甘く炊いたさつまいも。すだちの種が丁寧に取り除かれているのにニッコリ。
仕事が好きな人が作る料理はおいしくうつくしい。
そろそろ料理も最後に向かう。
今日の油ものは鱧の天ぷら。骨を見事に切った鱧にぽってり衣をつけて揚出し仕立てで出てくる。
鱧の下には揚げた丸なす。とろけるほどにやわらかで、出汁を吸い込み口が潤うオゴチソウ。ししとうの素揚げが彩り添えて食べると青い香りで口やお腹がすっきりとなる。
今日の食事は湯葉のあんかけか海苔茶漬け。いつもはあんかけを食べるのだけど、不思議と今日はサラサラ茶漬けで〆たくなった。
こわめに炊いたご飯の上にたっぷりと海苔、あられにわさび。出汁をかけてサラサラ食べる。お手製の漬物食べてお腹は満ちる。
羽二重餅にダークチェリーでお腹に蓋して、また参りますと店を出る。