岡目八目、おかめ顔
昼はお蕎麦を食べたくて高島屋の食堂街にある「小松庵」にくる。
新宿駅の界隈には好きな蕎麦屋が3軒あって、ひとつは街場のそば屋の典型のような永坂更科布屋太兵衛。メニューが豊富で値段も手軽で使いやすい。
もう一軒は大庵。蕎麦前もたのしめるそばが美味しい日本料理の店という感じのお店。
そして3軒目がこの小松庵。
ほんの少々の気取りと創作製。ひねりのきいた商品づくりと優雅なサービスが心地よい店。オキニイリ。
背筋が伸びる雰囲気の店。大きな窓の外には西新宿のビルの景色がうつくしく、遠くに都庁が見えたりするのが都会的。
そば粉100%の生粉打ちそばが売り物で、シャキッと冷やしたせいろに胡麻だれ、キュウリを薬味にススっと味わう涼しいそばが絶品で、けれど今日はあたたかい蕎麦を食べたい気分になった。
「おかめそば」を選んでたのむ。
海苔やかまぼこ、三つ葉にしいたけで、おかめの顔に見立てて具材を飾った汁そば。
あるいは「岡目八目」って言葉にちなんで、五目よりも3目多い8種類のネタをのっけた贅沢なそば…、っていう所以もあるらしい江戸の洒落っ気を感じさせるもの。お店、お店で顔の表情が違ってくるのもオモシロイ。
さて、ここのおかめはどんな顔?と思ってやってきたのを見るとあらあら、顔になってござんせん。海苔に椎茸、かまぼこ2枚。ローストした鴨、茹でて搾ったほうれん草に湯葉に生麩と種は8目。
それらがキレイに並べられているのだけれど、顔には見えない不思議なおかめ。
顔を一旦破壊して再構築をしたのだとすればピカソ的…、と言えないこともないのかもしれないけれどやっぱりおかめはおかめの顔でいてほしい。そう思ってスルンスルンと食べながら、種で顔を作ってみます。
海苔を髪にしてかまぼこを目に。柚子の皮を左目の目玉、七味を右目の目に置いた。椎茸の鼻、鴨の唇と顔らしい顔になってくる。
味は見事なものでした。熱々の汁の中に浸かってもなお麺の食感は壊れず口でばっさり散らかる。蕎麦の香りも力強くて、具材のひとつひとつの味も上等。卵焼きはしっとりしていてかまぼこはムチュンと歯切れる。甘辛味に煮込まれた椎茸は分厚くなにより汁のおいしいこと。おゴチソウ。