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7割を目指す講義NO.10 認知症ケア
1.認知症という状態
認知症ってどのような状態か分かりますか。
認知症とは、脳細胞の死滅や機能低下により生じる認知機能の障害で、生活に支障が出ている状態がおよそ6か月以上継続している状態を指します。
人間は、誰しも年をとると反応が鈍くなったり、人の名前を思い出せなかったりすることがあります。これは逆らえようがありません。
私も50歳を過ぎましたが、昔と比べると、反射神経等、反応が鈍くなったことを実感していますし、人の名前はなかなか出てこないことが多くなりました。
しかし、だからといって、お年寄りや私が生活に困るということはほとんどありません。というのは、特別な必要がなければ、急いで人の名前を思い出す必要もありませんし、記憶力の低下を自覚して、メモをとる習慣をつけることもできるからです。ですから、この状態は、認知症ではないわけです。
認知症であることの最大の特徴は、「普通の社会生活ができなくなっている」ということになります。
普通の社会生活ができなくなるというのは、例えば、スーパーで買ってきた卵のパックを下駄箱に入れてしまうとか、逆に冷蔵庫を空けたら靴が入っているとか。あるいは、ガスの付け方が分からなくなったとか、になります。
「認知症は病気である」 とよく言われたりします。
しかし、認知症という病気があるわけではありません。認知症は、風邪と同じようなものです。風邪もずばりという病気はありません。風邪というのは、熱が出ることであり、鼻水が出ることであり、咳が出ることであり、喉が痛いことであり、体がだるいことです。
例えば、問診において、患者がこのような症状を言えば、医者は、「風邪でしょうね」と診断します。
認知症は 「記憶力や判断力が低下して普通の社会生活を営むことができない状態」 を意味しており、その状態を引き起こす原因となる疾患が背後にあるわけです。
認知症の原因となる疾患には、主に大脳脂質に著しい萎縮がみられる「アルツハイマー型認知症」、脳の血管が詰まったり、破れたりしてなる「脳血管性認知症」、「レビ-小体型認知症」の3つがあります。それ以外にも、前頭葉や側頭葉が委縮して起こる前頭側頭型認知症等があります。
この中で、もっとも多いのがアルツハイマー型認知症です。全体の約6割を占めております。脳が萎縮、つまり痩せることで、認知機能に障害が出るわけです。
平たく言うと、脳の中には、情報を伝達したり分析して判断したりするためのたくさんの道路があって、その道路のあちこちで通行止めが起こっていて、それによって認知機能に障害が出るわけです。
アルツハイマー型認知症の初期の段階では、物取られ妄想が起こることが多いです。
なお、「レビ-小体型認知症」のイメージがつかない人がいるかもしれませんので、若干説明しておきます。
レビ-小体型認知症は、脳の大脳皮質にレビー小体と呼ばれる円形状の特殊な物質が出現して発症するとみられている認知症になります。
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