【第一話】演目は突然に|しがない勤め人、国立文楽劇場で藤娘を舞う
演目は突然告げられる
「来年の舞台の曲、決まりましたよー。”藤娘”です!」
2019年初冬のお稽古日、おっしょはんはうれしそうにおっしゃった。
わが社中で”舞台に出る”というのは、
”大師匠(おっしょはんの師匠)が毎年夏に開催する会に、孫弟子枠で出演する”
ことである。
大師匠の夏の会は毎年、大阪・日本橋の国立文楽劇場で開かれる。
由緒正しい劇場への出演。とても名誉なことである。
文楽劇場には大小二つのホールがある。
大師匠の会は、
小ホール、小ホール、大ホールの3年サイクルで開催され、
大ホールでの開催を”本舞台”と呼ぶ。
本舞台。ホールの大きさも違うが、衣装のこしらえも違う。
小ホールでは、揃いの浴衣生地のお引きずり。
大ホールの本舞台では、絹のお引きずり。本格的である。
↑ 2019年の夏は小ホールにて茶音頭をお勉強させていただきました。水色のきものが揃いの浴のゆかた生地2反で誂えたお引きずり(姉弟子さんに借りた)
もめんの浴衣生地でお引きずりというとヘンテコな気もするが、
伝統芸能の世界では、夏に開くおさらい会のことを
「ゆかた会」
というので、おかしくはないのである。
さて藤娘。
こないだの舞台で妹弟子さんが舞ってたな・・・
「今回は本舞台ですからね、クドキの場面も入りますよ」
あれより長くなるのか、大丈夫かな・・・
※クドキ、というのは、さみしい、せつない思いを切々と表現する見せ場のこと。
「次のお稽古から藤娘をしましょう。まずは振りうつしから!」
おっしょはんはおっしゃった。
(続く)
いいなと思ったら応援しよう!
最後まで読んでいただきありがとうございました!
「スキ」や「シェア」していただけるとうれしいです。