しろたえ|週末きもの愛好家

平日はしがない勤め人、週末はきもので出かける人。 人生すべからく無駄と寄り道、迷い道。 お稽古事:かな文字、上方舞・山村流

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  • しがない勤め人、国立文楽劇場で藤娘を舞う

    四十の手習いで日本舞踊を始めたしがない勤め人が、国立文楽劇場で藤娘を舞うまでをノンフィクションでお届けします。

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【第四十一話】当日おしたく・かづら編 |しがない勤め人、国立文楽劇場で藤娘を舞う

かづらのおっちゃん、うちの大阪支店の営業さんに似てるんだよな。 (かつら、ではなく、かづら。方言?古語?業界用語?) (ほんまはえらい人やねんけど、愛と尊敬をこめて「おっちゃん」と呼ばせていただきます) しゃべっていないと呼吸が止まって死んでしまうタイプ。 ・ ・ ・ あれ? こないだのかづら合わせのときはあんなにペラペラ喋ってたのに。 今日は無口や! なんでや?本番やから真剣なんかな。 かづらは出番直前にかぶせてもらいます。 化粧も衣装もそうだったけれど、かづら

    • 【第四十話】当日、おしたく・小道具編 |しがない勤め人、国立文楽劇場で藤娘を舞う

      開演時刻を過ぎているからか、小道具さんがなかなかつかまりません。 しばらくしておっしょはん、 小道具さん来てくれはったで!はよ確認させてもらお。 と、息を弾ませて戻ってこられた。 廊下の端っこでまずはメイン小道具、藤の枝を持たせてもらう。 あれぇ?藤の枝、こんなに細かったっけ? こんなに短かかったっけ? 藤の花、こんなに長かったっけ? あんなに情熱と時間をかけて自作した藤の枝はなんやったんや・・・<再現度の低さに愕然 まあ、今さら言ってもな。 決めの格好だけや

      • 【第三十九話】当日おしたく、衣装編|しがない勤め人、国立文楽劇場で藤娘を舞う

        場当たりを終え楽屋に戻るとほどなく、 「藤娘さーん、そろそろお着替えでーす。お手洗い済ませてからいらしてくださーい」 と、衣装さんが呼びに来ました。 うーむ、3分前に済ませたばっかりだけど念のため行っておくか。 ※衣装を着たが最後、もう行けません。 形ばかりの用足しを済ませたら、 着付けに使う腰紐と伊達締めを持って衣装さんの待つ部屋へ。 ここも姉弟子Nさんが付き添ってくれます。 (脱いだゆかたをたたんでくれたり、あれやこれやしてくれるのです。ありがたいありがたい)

        • 【第三十八話】当日、舞台装置編|しがない勤め人、国立文楽劇場で藤娘を舞う

          いつぞやのお稽古で、私は伺った。 「先生、藤娘って聞くと『すごい!』って条件反射で思うんですけど、実際なにがすごいんですかね?」 「まず舞台装置がすごい!」 「真っ暗からチョンパで明るくなったら、大きな松の木に藤の花がわーって見えて華やか!でしょ、それから・・・」 ※チョンパとは、舞台も客席も真っ暗にしておいて、拍子木がチョンと鳴ると照明がパッと明るく舞台を照らす演出のこと。 すごい舞台装置。 出入りの確認(=場当たり)でいっぱいいっぱいだった私に代わって、姉弟子

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          【第三十七話】当日、場当たり編|しがない勤め人、国立文楽劇場で藤娘を舞う

          場当たり、とは。 開場前に舞台で立ち位置などを確認すること。 頃合いを見計らい、楽屋から舞台へ移動。いざいざ〜。 トップバッターのかたが中央で場当たり中でしたが、時間がないので並行で。 後ろのほうを使わせていただいて、と。 わー、広ーい! 3年前と2年前に出させてもらった小ホールの4倍くらいかな? 浜松市民会館くらいかな? お客さん、どれくらい来てくれるのかな? もう30年も前になるけど、 吹奏楽や合唱のときはホールの大きさとか座席数とか、気にしたことなかったなぁ。ワ

          【第三十七話】当日、場当たり編|しがない勤め人、国立文楽劇場で藤娘を舞う

          【第三十六話】当日、楽屋人間模様|しがない勤め人、国立文楽劇場で藤娘を舞う

          (前話はこちら↓) 化粧さんから楽屋への戻り道。 付き添いの姉弟子Nさんが、 「先生がな、みんなと同じ楽屋にしてくれたで!」 とおっしゃった。 ああ、それはひと安心。 あ、ここだな。 「せんせー、顔してもらいましたー!」 ・・・ あれ? いつもだったら 「あらー!かわいい、かわいいにしてもろてー♡」 という展開なんだけど、なんだこのやらかした感満載の空気は? (ここまで0.5秒) 「ちゃんと座ってごあいさつして。ごあいさつはちゃんとせなあかんよ。」 「はっ

          【第三十六話】当日、楽屋人間模様|しがない勤め人、国立文楽劇場で藤娘を舞う

          【第三十五話】よっ、待ってました!いよいよ本番当日。楽屋入り〜化粧編|しがない勤め人、国立文楽劇場で藤娘を舞う

          さて本番当日。 前日ビックカメラで手に入れた、 めぐりズムほっとアイマスクのおかげでよく眠れ、 さわやかに目覚めた・・・ と言いたいところであるが、 寝られたのかどうかよくわからない。 眠気、空腹感、のどの乾き、など 基本的な体調のフィードバックが全くきかない。 ぼんやりとした目と頭でしたくをする。 楽屋用ゆかた(おしろいがついてもかまわないもの、つまり外に出るには憚られるコンディションのもの)に着替え、帯は省略。 あら隠しの長コートを羽織って定宿を出る。 ゴロ

          【第三十五話】よっ、待ってました!いよいよ本番当日。楽屋入り〜化粧編|しがない勤め人、国立文楽劇場で藤娘を舞う

          【第三十四話】ついに本番前日、大阪へ移動もひと苦労|しがない勤め人、国立文楽劇場で藤娘を舞う

          本番まであと数日、2021年8月のある日。 「ねえ、こんな状況下で本当に大阪行くの? 県をまたぐ移動だよ?世の中どういうことになってるかわかってる? デルタ株なめてるでしょ?」 と家人エス氏に詰め寄られる私。 (私は在東京、国立文楽劇場は大阪の日本橋にある) 出演辞退してもビタ一文返ってこないと告げると、 「それなら行ったら?でも俺は見に行かないよ。そもそも喪中だし。」 エス氏、さすが商売人の息子である。費用対効果の話は早い。 ちなみにお稽古事の費用はすべて私の

          【第三十四話】ついに本番前日、大阪へ移動もひと苦労|しがない勤め人、国立文楽劇場で藤娘を舞う

          【第三十三話】本番一週間前、えらいことに気がつく|しがない勤め人、国立文楽劇場で藤娘を舞う

          うーむ、客席ガラガラなんやろな・・・ しがない勤め人、一世一代の大舞台だというのになんという引きの悪さ。 時は2021年夏。 新型ナニガシのため緊急事態宣言下、不要不急の外出はご法度であった。 ましてや歌舞音曲のために県境をまたぐとは何事ぞ。 ここまでやってきたのにもったいないなぁ。 そや!見にきてもらえないんだったら、こっちから見せにいったらええんや〜 というわけで、本番一ヶ月ほど前から 【2021/08/22 藤娘@国立文楽劇場への道】 と銘打ち、フェイスブ

          【第三十三話】本番一週間前、えらいことに気がつく|しがない勤め人、国立文楽劇場で藤娘を舞う

          【第三十二話】本番半月前。やったほうがいいこと、やってはいけないこと|しがない勤め人、国立文楽劇場で藤娘を舞う

          私には苦手なことがある。それは身づくろい。 究極にめんどくさがりなので、可能であれば生まれたままの姿で生きたい。 服を着れば洗濯しなくちゃいけないから、なるべく着替えたくない。 なので来世は服を着ないいきものに生まれかわりたい。 そうだねぇ、ネコがいいんじゃないかな? でも彼らは始終ペロペロと毛繕いをしているなぁ。服を着なければ着ないでお手入れはしなきゃならないのか(絶望) そんなわけで(どんなわけだ?)本番半月前、普段は野放しボディであるがそろそろ“グルーミング“

          【第三十二話】本番半月前。やったほうがいいこと、やってはいけないこと|しがない勤め人、国立文楽劇場で藤娘を舞う

          【第三十一話】本番一ヶ月前、お稽古以外にもやることたくさん|しがない勤め人、国立文楽劇場で藤娘を舞う

          二年越しの藤娘。 舞台本番まであと一ヶ月、となってきてようやく現実味が帯びてくる。 公演の会主である大師匠にお稽古をつけていただいたり。 舞台当日に必要なものも用意しなくては! じゃーん! (いろいろあるねぇ・・・) 説明しよう。 まずは下着。衣装はお借りするけれど、直接肌につけるものは自前である。 (当たり前か・・・) 肌じゅばん(上に着るやつ)は踊り用の特別仕様。 衿ぐりの始末と袖が赤い。 ステテコ(長めの短パンみたいなやつ)も踊り用は赤い。 おっしょは

          【第三十一話】本番一ヶ月前、お稽古以外にもやることたくさん|しがない勤め人、国立文楽劇場で藤娘を舞う

          【第三十話】目線、視線も振りのうち|しがない勤め人、国立文楽劇場で藤娘を舞う

          そんなに上、向かんでもいいですよ。 ほんのちょーっと、でいいんです。 (おっしょはん、お手本をしてくださる) ほら、これだけでちゃんと上、向いてるように見えてるでしょ? 今のままだと、えらい上のほう見てるなー、って思われますよ。 見たまんま、わたしとおんなじようにしてくださいね〜 お稽古の二回にいっぺんは言われている気がする。 つまり、直る気配がない。 舞台に上がったら客席後方、緑色の非常口マークのところを見るといい、 と小耳に挟んだのだが、あれだとちょっと上すぎるの

          【第三十話】目線、視線も振りのうち|しがない勤め人、国立文楽劇場で藤娘を舞う

          【第二十九話】大師匠の稽古場へいざ!|しがない勤め人、国立文楽劇場で藤娘を舞う

          本番前に、大師匠にお稽古をつけていただくというラッキーチャンスデーがある。 大師匠とは、おっしょはんのおっしょはんである。 大師匠から見ると、私は弟子の弟子なので孫弟子である。 今ふと思い出したのだが私が小学生の頃、 ♪ 弟子弟子でーし。君は僕のでーし、僕は君のでーし ♪ と言ってじゃんけんをしていたなぁ。 あれは地域固有のものなのか、当時のブームたっだのか・・・?<典型的な脱線 よっしゃぁ、ぼろっぼろやった下稽古を挽回するでぇ〜 大師匠のお稽古は本番一ヶ月前、202

          【第二十九話】大師匠の稽古場へいざ!|しがない勤め人、国立文楽劇場で藤娘を舞う

          【第二十八話】他人の動画は参考にならない?!|しがない勤め人、国立文楽劇場で藤娘を舞う

          いまや巷にあふれかえる動画。 私の旧友はYouTubeを見てきものの着かたを覚えた。 いつも美しく完璧なセルフ和髪アップヘアの姉弟子さんは、暇さえあればYouTubeを見て髪技(ほんとに神技!)をupdateしているそうだ。 職場の若い衆(20代中盤)は、会社のポータルサイトに全員視聴必須の資料動画がUPされた際、 「私、動画は二倍速で見るので字幕つけてほしいです」 と言っていた。 二倍速?!字幕?! オバチャン、ツイテイケナイ・・・ さて私。 実は動画視聴が苦手

          【第二十八話】他人の動画は参考にならない?!|しがない勤め人、国立文楽劇場で藤娘を舞う

          【第二十七話】ヒントは意外なところから|しがない勤め人、国立文楽劇場で藤娘を舞う

          本番まであとひと月ちょっと、2021年7月のある日。 平日の日中しか開いていないお店に行かなければならない所用が発生。 なんちゃら事態宣言下、フルリモート在宅勤務中の私は呪文を唱えた。 フヨウフキュウ?ヒツヨウシキュウ? 必要・不急を寝かせておいたら必要・至急になってしまっていた。 うーん、これはしかたがありませんなぁ。 しがない勤め人のわたくし、ありがたく労働者の権利を行使。 有給休暇(午後休)をとり、いそいそと恵比寿へ。 いやー、しかしまあなんですね、 お城

          【第二十七話】ヒントは意外なところから|しがない勤め人、国立文楽劇場で藤娘を舞う

          【第二十六話】ウチがダメならソトや、ソト!|しがない勤め人、国立文楽劇場で藤娘を舞う

          小道具の悩みを上回る悩みとは? それは「場所」。 話が違う。 「山村流は座敷舞とも呼ばれていまして、 “畳半畳で静かに舞う” んです」 かつて、おっしょはんはおっしゃった。 「おお、それなら自室の六畳間(見えている畳は2枚)でもできる」 ということでお稽古を始めたのだが・・・ 舞台用のハデな演目、というのもあったのね。 藤娘、三段笠をジャキーンと展開すると、まあなんと長いこと。 最大値、ざっくり見積もってみよう。 77センチ(両手の間の距離)+ { 92セ

          【第二十六話】ウチがダメならソトや、ソト!|しがない勤め人、国立文楽劇場で藤娘を舞う