【第二十六話】ウチがダメならソトや、ソト!|しがない勤め人、国立文楽劇場で藤娘を舞う
小道具の悩みを上回る悩みとは?
それは「場所」。
話が違う。
「山村流は座敷舞とも呼ばれていまして、 “畳半畳で静かに舞う” んです」
かつて、おっしょはんはおっしゃった。
「おお、それなら自室の六畳間(見えている畳は2枚)でもできる」
ということでお稽古を始めたのだが・・・
舞台用のハデな演目、というのもあったのね。
藤娘、三段笠をジャキーンと展開すると、まあなんと長いこと。
最大値、ざっくり見積もってみよう。
77センチ(両手の間の距離)+ { 92センチ(ジャキーンとした三段笠の長さ )x 2 個} = 261センチメートル!
ザ・舞台映え!
はええけど、長いなぁ(困)
まあ、畳2枚の自室では扇でお稽古するとして、
やっぱりなー、三段笠のシュッシュッシャーからの大立ち回り<誤用
慣れておきたいなぁ。
( ´ー`)。оO(せっかくだからいいとこ見せたいじゃん)
うーん、どうしたもんかなぁ・・・
(しばし黙考)
チコーン!<頭の上に豆電球が光るアレ
あれやアレ、ちょっと前からちょいちょい聞くあれ、
ほにゃららエコノミー、ってやつや!
ということでスマホポチポチーの後、
私はあるところへ向かったのである。
そう、時代は
「シェアリングエコノミー」。
カーシェアリングとか民泊とか。
新型なんちゃら以降は下火気味ですが。
というわけで休日の朝7時。
お稽古道具一式を抱えた私は、とある駅前に降り立った。
「マジかー、エレベーターないのかー。4階まで階段かー」
三段笠2個、かぶる笠、藤の枝、ゆかたと帯と裾引きと・・・
大荷物を背負った私は絶望に顔をゆがめながら、
ヒイヒイふうふう階段を上がってゆく。
と、何やら怪しげな看板が。
ほんとにここかなぁ…(不安)
さてようやく4階までたどり着き、
ポチポチと指定の数字を押すと電子ロックが解除され、そこは・・・
「うわ!広っろ!すげーすげー(感涙)」
ありがとうスペースマーケット!
ありがとう駅近レンタルスタジオ早朝割引!
私はドッグランに放たれた室内犬のように喜び勇んで、
三段笠と藤の枝を存分に振り回したのであった。
「ああっ、そない乱暴に振り回したらあかん〜!!」 <おっしょはんの声で再生
(続く)