【第四十一話】当日おしたく・かづら編 |しがない勤め人、国立文楽劇場で藤娘を舞う
かづらのおっちゃん、うちの大阪支店の営業さんに似てるんだよな。
(かつら、ではなく、かづら。方言?古語?業界用語?)
(ほんまはえらい人やねんけど、愛と尊敬をこめて「おっちゃん」と呼ばせていただきます)
しゃべっていないと呼吸が止まって死んでしまうタイプ。
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あれ?
こないだのかづら合わせのときはあんなにペラペラ喋ってたのに。
今日は無口や!
なんでや?本番やから真剣なんかな。
かづらは出番直前にかぶせてもらいます。
化粧も衣装もそうだったけれど、かづらさんも3人がかり。
実にたくさんの人の手を経て、藤娘になっていくのだなぁ。
おっちゃんは何度も微調整をしてくれて、かづらはよーし。
つぎは黒い塗笠をかぶせてもらいます。
こちらも慎重に、ええ角度に。
あごにかかる赤い紐も丁寧に、きれいに結んでくれます。
この赤い紐が入るとなぜかかわいさ倍増!
(これやったら緊急あご下引き締め対策いらんかったんちゃうかな・・・)
かんざしの藤もきれいに整えて、
おっちゃん、ぐるっと一周最終チェック。
はい、これにておしたく完了!
おっしょはんは
うん、思った通り最高にかわいい。
とおっしゃり、
姉弟子さんは
はー、まー、かわいいーっ♡♡♡
と激写してくださる。
いや、まあ、あの、すみません、心に響かない・・・
いつもなら、
わーい!ヽ(´▽`)/うれしーアリガトー
ってなるんだけどな、どうしたんだろ?
わたしは石にでもなってしまったんだろうか。
(続く)
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